![$パイルD-3の『時速8キロの映画感』=★](https://stat.ameba.jp/user_images/20131103/21/columbo22/09/c8/p/o0160031612737648911.png?caw=800)
・フランス映画には昔からSF映画は少ない。
少ないってことは、未成熟とも言えるし、
まだまだこれから躍進の可能性を秘めているとも言える。
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世界の映画史に名を残す
フランスのジョルジュ・メリエスが撮った「月世界旅行」は、
SF映画第1号とされていながらも、
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ジャン・ピエール・ジュネやリュック・べッソンが現れるまで、
フランス製のSF映画は、
トリュフォーやゴダールのマニアックな作品以外、
お目にかかれなかった気がする。
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大友克洋氏が紫綬褒章を授与されたニュースを見ていて、
ふと、この人の作画に多大な影響を与えたという
フランスのコミック作家メビウスやエンキ・ビラルのことを
思い出した。
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フランスのコミックはBD(バンド・デシネ)と呼ばれるが、
その世界的なパイオニアがこのおふたり。
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映画では、
メビウスはアニメーション映画や、
多くのSF映画のコンセプチュアルアートに関わったが、
ビラルは、映画監督として、ここまでに3本のSF映画を生み出した。
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その初監督作品が、異色のSF映画「バンカー・パレス・ホテル」
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★いらっしゃいませ。ようこそバンカー・パレス・ホテルへ
●Bunker Palace Hôtel(1989・フランス)
監督・脚本:エンキ・ビラル
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・空はいつもダークグレイに濁り、ミルク色の酸性雨が降り続けている。
酸性雨27%、日中の気温3℃…
という緩慢なアナウンスが流れている。
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反乱軍が政府を崩落寸前に追い込んで、
戦乱は更に激化している状況下の近かりし未来都市。
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予算枠の都合がチラホラ見受けられる中で、
異種異様なパッケージでくるまれた
重々しい世紀末空間の見せ方は、
さすがアーティストらしい才気を感じさせる。
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そんな地上での様子は点景として描かれるが、
ほとんどの舞台は
「バンカー・パレス・ホテル」なる地下シェルターで、
大統領直々に召集を受けた政府高官たちが
ここへと避難してくるところから物語は始まる。
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無気味なスキンヘッドの男
オルム(ジャン・ルイ・トランティニヤン)が
画面に登場すると、
トーンはこのキャラクターに支配されて、観る者をも圧する。
![$パイルD-3の『時速8キロの映画感』=★](https://stat.ameba.jp/user_images/20131103/21/columbo22/73/28/j/o0307016412737645213.jpg?caw=800)
この容貌魁偉な男を筆頭に、
空疎感漂うバンカー・パレス・ホテルに集う選ばれし人々は、
大統領の到着を待ち侘びるのだが、
一向に呼び出し主は現れない。
![$パイルD-3の『時速8キロの映画感』=★](https://stat.ameba.jp/user_images/20131103/21/columbo22/f1/a1/j/o0307016412737646254.jpg?caw=800)
ロボットのベルボーイやデブのメイドたちは
どれもこれも故障気味だし、
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鉄壁の安心安全を誇るシェルターであるはずの建造物の壁面が
おかしなことになり始めて、徐々に何かが狂い始める…
![$パイルD-3の『時速8キロの映画感』=★](https://stat.ameba.jp/user_images/20131103/21/columbo22/bf/e1/p/o0311016212737647946.png?caw=800)
ストーリーに一貫するアナーキーな匂いは、
その後の作品を見る限り
エンキ・ビラルの真骨頂でもある。
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但し、これは開巻で即座にわかるようにヨーロッパ映画特有の
ローテンポの展開であるがために、キレ味に乏しい恨みが残る。
![$パイルD-3の『時速8キロの映画感』=★](https://stat.ameba.jp/user_images/20131103/21/columbo22/a4/5f/j/o0267018912737644426.jpg?caw=800)
異色作でありながら、
公開当時フランスでは大ヒットしたというお墨付きはあれど、
![$パイルD-3の『時速8キロの映画感』=★](https://stat.ameba.jp/user_images/20131103/21/columbo22/96/58/p/o0311016212737648910.png?caw=800)
トランティニヤン、キャロル・ブーケ、マリア・シュナイダー、
ジャン・ピエール・レオ等の有名俳優が出演している割に、
モタつきが災いして、
SF調のドラマを映画として昇華させきれていない気がする。
![$パイルD-3の『時速8キロの映画感』=★](https://stat.ameba.jp/user_images/20131103/21/columbo22/11/78/j/o0311016212737647044.jpg?caw=800)
異分野の新進作家のせいか、自作へのこだわり過ぎのせいか、
スタイルに気を回し過ぎたようで、いま一つ食い足りないのだ。
![$パイルD-3の『時速8キロの映画感』=★](https://stat.ameba.jp/user_images/20131103/21/columbo22/17/58/j/o0307016412737644425.jpg?caw=800)
しかしながら、
後々思い返してみると、実は見るべきところは豊富で、
物足りなさを感じさせつつも無駄の少ないライト感は心地よく、
いつか再見したくなるのも、カルトタイプ映画の特長でもある。
![$パイルD-3の『時速8キロの映画感』=★](https://stat.ameba.jp/user_images/20131103/21/columbo22/9e/2a/j/o0307016412737647043.jpg?caw=800)
ところで
…このホテルでは、観た者は誰しも
悪魔的な冷笑というサービスのおもてなしを受けることになる…。
![$パイルD-3の『時速8キロの映画感』=★](https://stat.ameba.jp/user_images/20131103/21/columbo22/fe/05/p/o0276018312737648912.png?caw=800)
奇妙なSF映画もあったものだ。
★★★★
採点基準:★…5個が最高位でマーキングしています。★…は★の1/2です。
![$パイルD-3の『時速8キロの映画感』=★](https://stat.ameba.jp/user_images/20131103/21/columbo22/7d/7f/j/o0184027412737646255.jpg?caw=800)
■Jean-Louis Trintignant