「これはお母さんが好きな本に出てくるケーキなの。
週末に大切な人と食べるケーキなんだって」
夏休みの昼下がり、
3時のおやつに母がケーキを焼いてくれた。
そのケーキはパウンド状の生地に溶かした粉糖がかけられ、表面に細かく刻まれた黄色いものが散らされていた。
顔を近づけると、ふわっとレモンの香りが漂ってくる。
一口食べてみると、しっとりとした食感が口の中に広がるとともに、
先ほどよりも強い香りが鼻の奥の鼻腔をくすぐった。
ーーー
遠い記憶。
今ではもうそのケーキの名前も味も思い出せない。
だけど、ふとした瞬間に、
あの爽やかな香りがふわりと鼻を掠める気がする。
ーウィークエンドシトロンー