「地方には、東京と全く別のアートの現場があった。」宮城・東京で活躍する瀬尾夏美さんにインタビュー | COLORweb学生編集部

「地方には、東京と全く別のアートの現場があった。」宮城・東京で活躍する瀬尾夏美さんにインタビュー

こんにちは。かんのです。

 

今回は仙台市市民文化事業団が運営する「まちりょく」というwebメディアの取材に同行し、とある方にインタビューをしてきました。

その方は、東京藝術大学を卒業し、岩手県や宮城県などで土地の人びとのことばと風景の記録を考えながら絵や文章で表現している、瀬尾夏美さんです。

 

僕は大学で建築を専攻する傍ら、友人と一緒に映画や文芸誌などを作る活動をしています。同じ表現者というのは恐れ多いですが、僕自身がやりたいことに通じる活動をしている瀬尾夏美さんにぜひお話を聞きたいと思い、今回のインタビュアーに立候補させて頂きました。

 

瀬尾さんが考える理想的なキャリアデザインや、瀬尾さんが学生だった頃に考えていたことなどを深く聞いてきましたので、ぜひご覧ください。

 

 

瀬尾さんの活動については、「まちりょく」の記事に詳しく掲載されています。そちらの記事も併せてご覧ください。

 

 

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僕自身、好きなこと、やりたいことがあってもそれを仕事やお金に変えられないのではないかという将来に対する不安を感じることが多いのですが、そのハードルはどうやって乗り越えたらいいと考えていますか?

 

瀬尾さん

私、大学院を出てからはアルバイトしていないんですよね。最初は岩手県陸前高田市で写真館のスタッフとして2年ちょっと働いて、その後仙台に来たんですけど、仙台ではどこかの会社で働くことはしないで自分たちで一般社団法人NOOKという団体を作りました。NOOKは研究者やアーティストが集まる団体で、そこでせんだいメディアテークなどの公共施設から展示やイベントを記録する仕事をいただいたり、みやぎ民話の会の活動に関わらせてもらったりしていました。今はそれが発展して地域の人々から教えてもらった言葉や風景を記録して、展覧会にしたり本にしたりといったことをする団体に変わってきています。

最近は東京でのリサーチが仕事になっていて、そこから全国各地へとつなぐネットワークを作ったり、作品を作ったりすることが仕事になっています。

やりたいことを仕事にするコツの一つは、「個別に持っている技術をちゃんと仕事化」すること。例えば小説家ならライティングができるとかいろいろあると思うんですけど、自分なりの表現を試行錯誤する中で培った技術を、自分の表現以外に使っていくことを厭わずやりました。私はアーティストとして作品制作することだけで食べている訳じゃなくて、自分の持っている技術を他のことにも転用して仕事にしています。

あとは、志の近い仲間を集めて会社を作るのも良いと思います。大きな会社に入ると割り当てられる仕事に時間を取られてしまうことも多いと思うので、理想の働き方や金銭感覚が似ていたり、興味関心が近かったりする人たちと円陣を組んで起業しちゃうっていうのを私は結構おすすめしています。気持ちが安定しますし。

 

COLORweb:気持ちの安定ですか?

 

瀬尾さん

気分が落ち込まないのでいいですよ。会社に入らずにフリーランスでやるのもいいですが、制度的にも厳しい場面が多かったり、問題に直面した時にしんどくなったりするけど、仲間がいると気楽です。それに、何人か集まっていると「こんな感じの人たちがいて、しかもチームで仕事ができるんだな」というふうに興味を持ってもらいやすかったりするし。おすすめです。

 

COLORweb:チームでフリーランスの仕事をするというイメージですか?

 

瀬尾さん

そうですね。それぞれに特技を持ったフリーランスの集まりという感じですかね。

別の方法としては、まずは気になることがある場所で何かしらの職に就いてしまうという手段もあります。陸前高田に住んでいた時、結果的に地元のお店で働けたのがとてもよかったんです。

書きたいことや、調べたいことがある人なら、そこのフィールドや土地で働いてお金を稼げば、そのまま自分の仕事を始める手立てになるじゃないですか。

つまるところ、時間の使い方を工夫するっていうことだと思います。

 

 

COLORweb:瀬尾さんが東京藝術大学に通われていた頃はどんな学生でしたか?

 

瀬尾さん

普通だと思いますよ。普通にバイトしたりしていました。

ただ、美大だったので、作品を常に作らなければいけないというのがあって、作品を作るために人と会ったり、フィールドワークに行ったりはしていました。普段はあまり出会えないような人に話を聞いたりするのは好きだったかもしれません。

あと、昔から割とオタク気質でしたね。一つのことにハマるとひたすらそれについて調べて、考えて、熱中していました。昔は好きなバンドとか、お笑いとか、そういうものに熱中していたのが、今は「丸森町」に変わったんだと思います。

 

丸森町での活動についてはまちりょくのインタビューをご覧ください。

 

 

 

COLORweb:学生時代、自分のことや将来についてどのように考えていましたか?

 

瀬尾さん

正直、「大した才能はないな、自分」って思っていました。

私は絵を描くことを学んでいたけど、周りには、めっちゃ絵がうまくて絵が好きでずっと描いている人と、反対にロジカルに絵を語れてお金を稼げる商才がある人とかがいる中で、「自分はどっちでもないな」と感じていました。

だけどそういう自分でも、作ることは続けていきたいって考えた時に、才能のある一部の人だけが食べていけるような、競争の激しいアートマーケットの世界で自分を消費するのは違うなって思っていました。

でも、地方に来たら、自分の持っている技術とか、人の話を聞くのが好きなこととか、役に立たないと思っていた自分の得意なことが活きる、全く別のアートの現場があって、それにはすごく救われました。

 

COLORweb:なるほど。では最後に、アートを志す今の大学生や若い人にメッセージをお願いします。

 

瀬尾さん:「アートより友達を大切にしてほしい」と思います。一人の名前で大きな作品を世に出すことよりも、やりたいことや、目指すもの、意志を共有できる人とちゃんと話してお互いの弱いところを補い合える関係性をつくれる方が、安心や心強さ、嬉しさが大きくなるのではないかなと思います。

 

 

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今回のインタビューでは瀬尾さんの「アートより友達」という最後のお話が特に印象に残りました。1人で大きなことをしようとするだけではなく、志の近い人で集まって一緒に前へ進める基盤を作ることが大きなやりがいにつながる。本当にやりたいことがあれば起業にチャレンジする手もある。複数人で悩みを抱えられるようなチームを自分も作りたいなと思いました。

 

まちりょくの記事には現在瀬尾さんが行っていることの詳細が書かれています。そちらも併せて読んでいただけると幸いです。

 

 

 

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