【3分間の読み物】6度目の正直でインドカレーが作れるようになった話。 | COLORweb学生編集部

【3分間の読み物】6度目の正直でインドカレーが作れるようになった話。

【3分間の読み物とは】電車のだいたい一駅ぶん、カップ麺ができるまで、ちょっとしたスキマ時間に…日常を切り取った、さくっとゆるっと読める読み物をもっちーがお届けします。
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私はカレーが大好きで、息をするようにカレーを食べたいと日頃から思っている。もう三度の飯がカレーだってかまわない。
特に私はインドカレーに目がない。初めて食べたとき、日本のカレーとは違う独特な味わいに衝撃を受けすっかり虜になってしまった。一目惚れならぬ一食惚れだった。
 
大学近くのインドカレー店の前を通るたびに店先のメニュー写真を見つめ、漂ってくるスパイスの香りをくんくん嗅いではその味を妄想してうっとりしていた。
はたから見れば立派な変態だが、惚れてしまったんだからどうしようもない。
こんな奇行を繰り返しているうちに、この香りを、あの味を自分で作れたならどんなに素敵だろうという気持ちがむくむくと膨らんでいったのだった。
 
***
 
ついに気持ちが抑えられなくなった私は、インドカレーを自分で作ってみることにした。
インターネットと自分の味覚を頼りにスパイスを買い集め、ああでもないこうでもないと、あれこれ調合してみる。
しかし、“それっぽいもの”はできるけれど、私がずっと思いを寄せている味とはかけ離れたものにしかならなかった。
 

家では再現できないものなのか、私もインド人になりさえすれば作れるのだろうか。
キッチンに並ぶスパイスの瓶を眺めながら、ため息をつくことしかできなかった。
 
こんなことを実に5回繰り返した。我ながら諦めが悪い。
5回失敗してすっかり自信を無くしてしまった私はもう読書にでも打ち込んで忘れてしまおうと、とぼとぼと本屋に立ち寄った。
 
***
 
そこで最強のバイブルと出会った。
表紙を見た瞬間ビビビッと電気が走り、目のピントがそこだけにフォーカスされ、抑えようと思っていたカレー欲が大爆発し、他の本には目もくれずにレジへ向かった。
そして購入したのが『ひとりぶんのスパイスカレー』
 
この本の著者の印度カリー子さんは宮城県出身で、おうちインドカレーを広めるスパイス料理研究家なのだそう。
「かんたん!つくおき!一人前!」という、私にぴったりすぎる三拍子のキャッチコピーに運命を感じて即決した。

どれを作ろうか悩んだ末、サバの水煮缶がちょうど家にあったのでサバ缶カレーを作ることに決めた。
レシピを読んでまあ驚いた。
スパイスはターメリック、クミン、コリンダーのたった3種類でできるというではないか。スパイスはたくさん入れなくても十分おいしいらしい。
これまで眉間にシワを寄せながら難しい顔をしてスパイスを調合していたのは一体何だったんだろう。ただ眉間のシワが増えただけじゃないか。トホホ。
 
まずは玉ねぎを濃い焦げ茶色になるまで炒める。その後トマトを加えて水分を飛ばし、スパイスと塩を投入する。最後にココナッツミルクとサバの身を加えて弱火で優しく煮て完成だ。
 
こんなに簡単で大丈夫なのだろうか。また“それっぽいもの”で終わらないだろうか。
ふわふわ立ちのぼる湯気に向かって、手を合わせる。
過去5回、カレーになり損ねた可哀想な材料たちと私の思いが今回で浮かばれてほしい。どうかおいしくなってくれ、なむなむ。
 
***
 
そしてついに完成した、サバ缶カレー
 
あいにくご飯もナンも無かったので、今回はそうめんと一緒に食べることにした。この記念すべき時にまったく準備が悪い。こんなんだから5回も失敗したんだろう。
 
祈るような気持ちで一口目を口に運ぶ。
あ、これだ…うんうん、これこれ…!ココナッツのまったりとした甘い香りと、すうっと爽やかなスパイスの香りが仲良く肩を組み、サバの風味を仲間外れにすることなく迎え入れている。まさに私が求めていた味だった。
大好きなインド映画(ちなみにタイトルは『スタンリーのお弁当箱』)を見ながらゆっくりゆっくりと味わう。
 
次はどんなカレーを作ろうか、バターチキンカレー、キーマカレー、ダールカレー…。
キッチンに並ぶスパイスの瓶を眺めながら、ひとりにんまりする。
 
 
Write,photo:もっちー