あの子の隣。 第10回
あの子と些細なことでケンカした。
最近いろんなことがうまくいかない。
なんだかなぁ、ちょっと辛い。
今日はあの子に会う日だけど、なんだか会いたくない…。
でも、きっと会ったら元気になるんだろうなぁ。
♪ピンポーン
「あ、おかえり~」
か、かわいい…。
ドアが開いた瞬間のこの癒しは何なんだ。今日会えてよかった。
一緒に住んだらこうなるのかな…。なんて。うわああ。恥ずかしい。
「顔赤いよ?あ、外寒かったもんね!」
え!?あ、うん。
このちょっとした想像があの子にバレたら恥ずかしい…。
今日寒くてよかった。ありがとう神様。
「まぁ、あがってくださいな。」
は、はい…!
ケンカしてたっけと思うほど、あの子はいつも通りで。そういうところから優しさを感じる。
「お茶どうぞ!」
ありがとう。
……。
無言の状態が続く。気まずい…。何を話したらいいんだろう。
「ごめん、ケンカしてるのもう限界。仲直りしよ?」
うん、俺も限界。ごめんな。
「ううん、いいの、こっちこそごめんね。それでね、それでね!……」
あの子はたくさんしゃべる。元気があろうとなかろうと変わらない。
どこに向けて話てるのか分からない時もあるし、たまに大きい独り言なんじゃないかと思う時もある。
だけど、どこか夢中になって話しているところが好きで、話を聞いているだけでも楽しい。
元気がでる。
でも、そんな時間はあっという間で。
もう帰らないとだな…。
「そんな寂しい顔しないで~!アパートの下まで送っていくから!」
し、してないし。でも、ありがとう。
玄関をでて。
「やっぱ寒いね~。」
そうだね、ポケットにどうぞ。
「うん…!」
冬の季節になると、上着の右ポケットにあの子の左手を招く。
これがいいんですよ、ほんと。毎年冬が楽しみになる。
ちょっとの距離でもデート気分。こういう時間を大切にしないとなぁ。
じゃあね。寒いから早く部屋戻ってあったまってな。
「うん!気をつけて帰ってね。」
1人の帰り道。やっぱりちょっと寂しいな…。というかほんと寒い。
両手を上着のポケットに入れたら…
ガサガサ
なんか入ってる、なんだろう。
え、手紙…?
あの子からの手紙が入っていた。いつの間に入れたのか…。
“〇〇へ
今日もおつかれさま。1日どうだった?
ここ最近疲れているようだけれど、無理しないようにね。
あと、大変な時はお互いに大変だなぁって言って、おいしいご飯でも食べにいこ!
私はそういう日々があれば幸せです。
こんな私ですがこれからもよろしくね。
またあそぼ~。おやすみなさい。
あの子より”
うん、うん、うなずきながら読む。泣きそうだ。
あの子はどこまでもいい子で優しい、なんなんだ。
そう思いながら、空を見る。
せっかく手紙をもらったし、お返しを書こう。
あの子の喜ぶ顔を想像しながら、文房具屋さんへむかう。
今日のあの子
ちさってぃ