The story of your hands.~働く人の手を大調査!~Vol.10 | COLORweb学生編集部

The story of your hands.~働く人の手を大調査!~Vol.10



あなたはどんな手をしていますか?

傷だらけの手、ごつごつした手、すらっとした手、やわらかい手、力強い手。 



人の手は、そこに、その人の生き方が現れてくる。 




手から、その人の暮らしやこだわり、内面までも探る連載企画「The story of your hands.」 


第10回目の「手」は、お花屋「VALENTINE」の鈴木みどりさん。 



COLORweb学生編集部のミキティのレポートでお届けいたします。 




今回我々は、華やかなイメージがあり憧れの職業でもある、お花屋さんを取材させていただきました。

定禅寺通りにある赤のVALENTINEの文字が目印のお店です。

まずは恒例の手を拝見させていただきましょう。



■親指と薬指の荒れが花屋の証

 



お花を扱うのが主に親指と人差し指のため、他の指よりも荒れてしまいます。

また、水仕事をすることや土をいじることも多いので基本真っ黒になるそう。



■地域の方だけではなく、遠方の方にも愛されるお花屋さん

 
                   仙台本店の外観



―いつオープンされたのですか。

平成元年から2、3年はチンパンGというリサイクル店のところで営業しておりました。

それから今の場所に移ってきたんです。

なので、この辺りにお店を出したっていうのは平成元年です。

分かりやすいですよね。今年で26年目になります。



―何種類くらいのお花を扱っていらっしゃるんですか。

だいたい300種類はあるかな。

だってバラだけでも3、40種類はあるからね。

全部を表に出しているわけではなく、倉庫やストッカーにしまっているものもあるので。



―どんなお客様が来店されますか。

近所の方々ですかね。でも、来店というよりうちは電話注文が一番多いです。

なので、東京の方もいらっしゃいますし、宮城県内各地からご注文いただきますね。

平成元年からスタートして、ずっとギフトのお店だったので。

要するに、ご家庭で飾るお花っていうよりは贈り物としてのお花を扱っているんです。

お客様からご注文いただいてそれを配達するという、いわば仲介役のような。

お客様の気持ちをお届けするための花屋っていう感じですかね。



―そうなりますと、やはりアレンジのお花の注文が多いのですか。

そうですね。10年ぐらい前までは圧倒的に花束が多かったです。

だけれどもここ最近はやっぱりアレンジがすごく多いです。

お客様が花束よりはアレンジの方がメンテナンスしやすい、ってことに気がつき始めたんだと思います。



―お花を長持ちさせるコツはあるのでしょうか。

花束はすぐにラッピングなどをはずし、切り口を一度切ってください。

ステムティッシュやゼリーで乾燥しないようにはしていますけど、それは完全なものではないので。

あくまでもご自宅に届くまでのつなぎのような役割なんです。

切り口が濡れているか濡れていないかも分からずに、ラッピングをとってすぐに水に入れてしまう方いませんか。

そうするとだいたい2日くらいでクターってしてしまうんです。

完全に蘇生されていないわけです。

何でも蘇生しなければフレッシュに保てないんですよ。

そういう知識を書いた紙を、うちではお花に添えてお渡ししています。

それを見てくれている方ってどれくらいいるのかなって思いますが…。(笑)

せっかくの贈り物ですから、2日でダメになりましたっていうよりも、せめて5日、1週間ぐらいはきれいに保てました、というお話を伺いたいですね。

 
                      アレンジのお花



―アレンジのお花の方がもつと伺いましたが、それはなぜですか。

「もつ」という言い方には語弊がありまして、たとえばアレンジというのはオアシスに挿すんですね。

そして、一般的なのはオアシスをそのまま使うケースです。

でもオアシスって時間が経つと乾燥してしまうんですよ。

そのため、うちは全部ラップをして乾燥を防いでいます。

手間もかかるしお花が挿しにくいというデメリットもありますが、やはり客様の手元で長くもって欲しいっていう気持ちが第一です。

あとは長い期間きれいなお花を楽しんでもらって、和んでいただけると私たちにとっても嬉しいですし。

だからそのような工夫をしています。


■導かれたかのように始めたお花屋

  
                   お話を伺ったみどりさん


―お花屋さんになったきっかけを教えてください。

…実は私、お花屋さんを始めたのは自分がやりたかったからではないんですよ。

大学に進学したいと母に話した時、明確な目的も決まってないのに4年間通うのはもったいない。

だから、私と一緒に花屋をやらないかと言われたんです。面白い母ですよね。

営業は私に任せてあなたは技術を磨いてくればいいって言われて、東京に行かされたんです。

学校も寮も全部母が用意して、私は手をひっぱって行かれた感じ。

それで2年間学んで仙台に帰ってきたわけです。

だけど、母が途中で亡くなってしまったので、花屋はもうやらなくてもいいかなって思ったんです。

けど、ずるずる花屋になる道にひっぱられたんですよ、不思議なことに。

花屋を作りたいから店長として働いてくれないかという話がきたんです。

まあたしかに、花屋の知識とか技術とかは勉強してきたわけですから。

そして、マーケットの中で私は10年間働いたんですね。

10年間やってみてマーケットで売れるものと売れないものがはっきり分かったんですよ。

その時自分が求めているものはこのマーケットで売るお花ではなくて、ギフトとか付加価値のついているお花だなってことに気づいたんです。

それでやめて、自分でお店を出したわけです。そんな経緯ですかね。



―ということは、今の場所が本命だったのですか。

正直、場所はどこでもよかったんです。

ただ、定禅寺が好きっていうのがあったんですよ。

自分が会社をスタートさせた時ってほとんど80%はディスプレイの仕事だったの。

ちょうどこのお店を開いた平成元年というのはバブル絶頂期でしたから。

そういう意味ではディスプレイのお仕事はいっぱいあったんです。

1週間のうち5日くらいはディスプレイだけでやっていましたよ。

今はアレンジのお仕事が断然多いですね。

完成したお花を写真に撮って、贈り主のお客様にメールかお手紙でお送りすることを15年ぐらいやってるんですよ。

うちならではのサービスっていうやつですかね。

贈り主は、相手に一体どんなお花が贈られたんだろうって考えると思いませんか。

直に見ていないですから、気になりますよね。

手間はかかるんですが、お客様に喜んでいただけるのでやっています。

そもそも、なぜ自分がやりたかった仕事でもなかったのに、こんなに続けられたのかなってふと考えるんですよ。

多分それが八百屋さんだったり魚屋さんだったりしたら絶対続けられなかったと思うんです。

ひとそれぞれ、何のために生きているのかっていうビジョンってあるでしょ。

それが何かなって考えた時、自分はくさんの人に、感動とか喜びとかを与えられる人間でありたいって思ったんですね。

そういうことが好きなんだって気がついたんです。

お花って不思議ですよね。その場をパッと華やかにする、色んな意味で感動を与えるもの。

だからやっぱりこのお仕事ってなかなかやめられないんですよ。

自分の体が続く限り、このお仕事は続けるんだろうなって思っています。



 
■お花屋さんと仲良くなった方がいい!

 

                  見ごろのアジサイ



―お花屋さんならではの豆知識などはありますか。

豆知識というわけではないですが、お花屋さんとは親しくなった方がいいです。

色々なことを教えていただけるからです。

たとえばよく出回っているダリアだと、すごくもちが悪いんです。

せいぜいきれいな状態が保たれるのは2、3日。

その2、3日のために買うのってもったいなくないですかね。

どうしてもお客様が来るのでダリアを飾りたいとか、それならOKですが。

知識のない人がお花って何でも1週間もつんだって思ったら、それは違うわけです。

種類によって違うので、2週間もつお花もあれば、なかには1カ月もつものもあるんです。

だから決して一概には言えないんですよ。

なので、お花屋さんと親しくなればそのこともちゃんと教えてくれると思うんです。

親しくないとなんとなく聞きにくいじゃないですか。

うちはまず、どこにお使いですかって聞くんですね。

それで玄関だとか言われて、そんなにもたなくてもよろしいなら、とお伝えするんです。

でもやっぱりもたないのは悲しいですねっていうお話もします。

やっぱりどうしてもそのお花がいい、欲しいっていう方もいればそうじゃなくてもいいっていう方もいます。

やっぱりそれはコミュニケーションをとって、相談にのるべきですよね。

あまりいい花じゃないからやめておきましょうとか、まあ本音ですよ。(笑)



―やはり、きれいに咲ききる前の花が買い時なのですか。

お花ってつぼみから咲くまで変化しますよね。

それを楽しんでもらいたいっていうのはあります。

あと、咲いてるのがダメっていう感覚が日本人独特でして…。

私たちはシーンによって咲いているお花も使います。

撮影、講演会等ではその時、その瞬間に最高に綺麗じゃないとだめでしょ。

そういった時は綺麗に見せるために咲いたお花を使います。


―写真を送る、オアシスの乾燥対策をするといったサービス以外にも何かサービスはあるのですか。

当店から贈り先に直接送ってほしいっていう要望があるので、ヤマト宅急便さんと提携しています。

だいたい翌日の午前中に着きますから、午後にお電話してお花が折れていないかなど確認する、というようなサービスは行っております。

うちならではのサービスっていうのは大きくはそういうところですかね。

みなさんが疑問に思っている事、不安に思っている事を解消していくってことがうちのサービスかもしれません。

 
               店内のお花



―お店で一番のオススメを教えてください。

一番はやっぱりギフトですかね。

花束、アレンジ、スタンド…スタンドはすごく喜ばれますね。

お葬式などに出すものですけど、うちは菊使わないんですよ。

菊って指定されない限りは100%洋花だけです。

昔は亡くなってから3、4日おいてからお葬式をしていたわけです。

今はだいたい翌日が通夜で、その次の日にはお葬式ですよね。

2、3日であれば洋花で綺麗に送ってあげた方がいいと思うんです。

お葬式に出すものでも常識にとらわれずお葬式=菊っていう考えではなく。

洋花の方が綺麗だなって思ってくれるのなら菊でなくてもいいのではないでしょうか。

お葬式の際、一番心が痛んでるのは身内の方ですよね。

お花って、慰める力のあるものの1つだと思うんです。

そういう状況の中でお花をもらうとすごく感動するわけなんですね。

その感動が私の生きる糧みたいなものです。



取材させていただき、ありがとうございました。

お花屋さんという職業の本質に少しでも近づけたのではないでしょうか。

ぜひみなさん、足を運んでみてください。



【VALENTINE・仙台本店】
〒980-0821
仙台市青葉春日町2-9
TEL・FAX 022-223-8876
営業時間 11:00-19:00(日・祝 10:00-18:00)
火曜日定休
http://www.valentine-s.co.jp/


Writer:ミキティ
Photo:あすみん