The story of your hands.~働く人の手を大調査!~ Vol.3 | COLORweb学生編集部

The story of your hands.~働く人の手を大調査!~ Vol.3


あなたはどんな手をしていますか?
傷だらけの手、ごつごつした手、すらっとした手、やわらかい手、力強い手。

人の手は、そこに、その人の生き方が現れてくる。


手から、その人の暮らしやこだわり、内面までも探る連載企画「The story of your hands」
第3回目の「手」は、イラストレーターの木村良さんです。

COLORweb学生編集部のたんちゃんのレポートでお楽しみください。



■人生を感じさせる深みのある手

 

仙台でイラストレーターとして活動する木村良さん。
イラストレーターとして活動しながらも、グラフィックデザインや美術カフェ ピクニカの企画・運営も行っています。

木村さんは、くっきりとした手相と、しわがあり深みのある手が特徴的。
指先は、仕事柄どうしてもこの時期荒れてしまうんだそうです。
「筆を洗うと、どうしても荒れてしまうんです。洗うのが大変なので手をあまり汚したくはないのですが、汚れるのは仕方がないなと思いながら仕事をしています。」

 

木村さんのイラストはPCや手書きなどイメージやオーダーによって様々ですが、個人的は手書きが好きなんだそう。

「絵は手で書いた方が、発想が広がるらしいです。普段は自宅だけではなくて、ピクニカやよその事務所等で書くことも多いですね。画材も書く絵に合わせて、何度も失敗をしながら考えて書いています」
木村さんが手がけた作品は、キャンペーンのキャラクターからアーティストDVDの表紙まで様々。どの作品も思わずにやっと笑ってしまうような、ゆるさと温かみのある絵が特徴的です。

「私の絵は『へなちょこぽっぷ』がテーマなんです。上手い絵はもういいんじゃないかなと思って。面白いことやユーモアは大切にしています」

 

木村さんのイラストレーター名は『コミックおやじ』。あえて木村良という名前を使わない理由を尋ねると、「名前変えると別人格になれるのではないか」という軽いノリで始めたんだそうです。
新鮮さや面白さを求める姿勢は、絵を描く人にとって大事ですよね。





■49歳で大学受験を決意

木村さんが絵を始めたのは、約10年前。それ以前はグラフィックデザイナーとしてお仕事をされていました。
その後49歳で仕事を辞め、東北芸術工科大学に入学を決意。
「50歳を目前に、ちゃんと絵を勉強したいと思ったんです。」

3回も受験に失敗したが、4回目の後期入試で合格。当時は仲間たちに仕事を辞めると宣言したからには何が何でも受かって見せる、という気持ちだったそう。
「学生のほとんどは私より年が若く、中には年下の教員に授業を教わることも多々ありました。デザイナー時代から会社に若い人が多かったこともあり、学生とすんなり打ち解けることはできましたが、通学途中に工事現場で働いている人の姿を見ると、仕事をしないで勉強先に向かう自分に引け目を感じることもありましたね」

 

そんな木村さんが4年間を通して学んだことは、“自分の鎧を捨て去ること”。

「どうしても自分が周りより年上だから、皆より上手く描かなきゃいけない、きちんと描かなきゃいけない、という変な意識を持っていました。鎧を捨て去ることを4年間通して学ぶことができたのは良い経験でしたね」

絵に限らず、自分より若い人が周囲にいると“年上だから上手く出来なきゃいけない”と感じる事ってありますよね。

「表現は常に新しいものじゃなくちゃいけないのに、年を重ねるとどうしてもそれを忘れてしまいがちになる。若い人には、新しいものにチャレンジする気持ちを常に忘れることなく活動して欲しい」
そう語る木村さんの言葉からは、鎧を捨て去り自分自身を自由に表現することの大切さを感じました。





■ピクニカをはじめたきっかけ


「絵を始めたことで、新しい友達が増えてきた」
そう感じる1つの要因がピクニカの企画・運営なんだそう。

以前、絵を学ぶために一番町でギャラリーを開いていた頃から、ギャラリーカフェという空間に漠然と興味があったんだそう。
「ギャラリーって絵を学んでいない若者や年配の人にとって、まだまだ行きにくいと感じる場所。カフェを併設することで、そんな人達でも行きやすくなるのかなと思ったのがきっかけでした」

実際にピクニカでは木村さんやアーティストの作品展示だけでなく、毎週水曜日19時には学生や社会人など、絵に興味のある人達が思い思いに描いた作品を評価し合う『美術クラブ』というイベントが開催されています。
取材当日も美術クラブが開催されていました。

 

美術クラブに参加する人達は年代や職種も様々で、個性豊かな作品がたくさん描かれていました。

 

「私にとっては若い人もライバル。協力なライバルたちがここから育ってほしいと思いながら、ピクニカの運営をしています」

そんな木村さんからは、ピクニカという場所を通して身近にアートと触れあってほしいという姿勢を強く感じました。


木村さんが取材中何度も口にしていたのは「絵は罵倒と絶賛を受けなければいけない」という言葉。
実際「他の人と同じではいけない」「普通は嫌だ」と感じても、新しいことにチャレンジしていくことは容易ではないと思います。

今回の取材を通して、木村さんは自分の作品や生き方に罵倒と絶賛を受けてきたからこそ、挑戦することの難しさだけではなく“面白さ”を見出すことができたのだと感じました。

学生のときは新しいことに挑戦する時間と機会が沢山あっても、経験が無く不安になったり、周囲の目を気にしてしまい一歩踏み出せないことってありますよね。
しかし挑戦とは恐れるものではなく、今まで知らなかった一面や面白さを発見するために必要な経験だ、ということを改めて知ることのできた取材でした。

私達学生こそ挑戦を恐れず、前に突き進んでいかなくてはいけないですね!


 

今回取材させていただいた場所は、木村良さんが企画・運営する『美術カフェ PICNICA.』。

若手クリエイターさんの作品を自由に見ることができるだけではなく、カフェとしても利用することができます。
また美術クラブも、年代問わず自由参加型のイベントとなっています。
普段アートに触れない学生さんや、もっと絵について学びたい人、ぜひ気軽に足を運んでみてください!

次回のレポートは、今注目の若手美容師さんに取材をしてきます!
お楽しみに!



PICNICA.
〒980-0811
宮城県仙台市青葉区一番町1-5-31
TEL&FAX 022-721-2181
営業時間:12:00~20:00
土日祝:~18:00