Color日和・竹原朋美です

 

 

本から受け取ったインスピレーションで

800字で書き綴る「リブリオエッセイ」。

 

ふみサロの3月の課題図書は

「猫鳴り」 沼田まほかる著

 

 

 

 

一匹の不遇な子猫が成猫へ。

その猫と関わる様々な人の場面と心情が描かれる。

 

共感できる心情もなきにしもあらず、とはいえ

人によってはあまりよく感じられないかもしれない…。

 

 

さて、本題のエッセイはこちら↓

 

「みごとな生き様」

 

 2022年末、お正月を東京で迎えるため一人暮らしの

91歳の義父が北九州の小倉から新幹線に乗ってやってきた。

 

 数年前まで社交ダンスを習い、海外旅行も積極的に楽しんでいた義父も

歩く時の息切れが目立つようになり、東京ではすべてタクシー移動。

 

 コロナ渦では行動制限がされていたのでなかなか会うのも難しく、

やっと移動できるようになりよく出かけたニューイヤーコンサートを

楽しみに東京にやってきたのだ。

 

 義父は食も細くなったと言っていたが、お節料理も数の子や

好みのものを用意した甲斐があったのか、いつもよりたくさん食べたようで、

食べさせ過ぎたかと私は後で心配になったほど。

無事にお正月を一緒に過ごせてよかったわと胸を撫でおろしたのであった。

 

 それが2月に入り、いきなり入院することに。

担当医が変わりCT検査をした後、夫に告げられたのは「ステージ4の癌」。

しかも4月までもたないだろう…とのことだった。

 夫はリモートワークをしつつ小倉に滞在。東京にいる私ができるのは神頼みぐらい。

病院にホスピスを勧められ、運良くすぐに入所できる目途が立ちひと安心。

それは「一緒にお墓参りに行こうね」と予約していた新幹線に私が乗り込む前日のことだった。

 

 万一のためと、夫と私の二人分の喪服一式を抱え、初めて一人で

青空の富士山を眺めながら九州へ向かったのだ。

 

 ようやく私は面会ができ、義父もとても元気で会話もはずんでいたのに、

面会後の看護師との打ち合わせでは葬儀社の検討を勧められ、

翌朝、葬儀社と相談することに。

でも、まさかその相談日に義父が亡くなるとは思いもしなかった。

 

 私が義父から受け取った最後の言葉は「元気で暮らしなさいよ」。

用意周到で思い立ったが吉日だった義父。

 まるで私が九州に到着するのを待っていたかのようだった。

葬儀を終え、東京に一人戻る雨の新幹線の中「まぁまぁな人生だった」

とつぶやいて逝った義父を見習いたい、と私は強く思ったのでした。

 

 

エッセイはここまで。

 

作成意図は、「死」との向き合い方

死に様は同様に、生き様だと感じたところから

「お彼岸」で先日、昨年亡くなった父の一周忌も

無事に済んだことで、改めて振り返って書いてみました。

 

 

 

 

エッセイ中に書いてある新幹線の窓から眺めた富士山

 

 

 

 

 

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次回は3月23日の予定