出会い系で知り合った男性と飲んで、池袋駅まで送ってもらった。

その男性も同じタイミングでスリランカに行っていることに気付き、とても盛り上がった。

スリランカは今外国で生産した車・バイクの輸入をストップしていて

自社のバイクを売るためには向こうに工場を作るか、電気自動車のみを輸入するかだという。その話し合いは平行線だったが、5月には担当も変わるらしい。

男性の手は温かかったが、笑顔は顔に張り付いていた。しかも

「好きになってもいい?」と何度も聞いてくる変な奴だった。

好きになるのに許可がいるのか?ダメと言ったらやめるのか?

許可したら、変態になりそうだったのでお茶を濁してタクシーに乗り込む。

 

その日は、自分でお金を払う気がなかったから、持ち合わせが5000円しかなく、

運ちゃんに「5000円までで帰れるとこまで帰らせてくれや」とお願いし、

石神井公園まで送ってもらう。実家のある東久留米まではまだまだ遠い。

 

「GPSで見られてるから家までは送れんけど、もう少し行ったるわ」

と結局ずるずると大泉学園まで乗っけてもらい、保谷駅まで歩く。

小学生まで保谷に住んでいたから、懐かしくてあたりを見回す。

なんどもいったケーキ屋、好きじゃなかった塾と好きだったコンビニ…。

道の反対側におじさんに絡まれているキャッチがいた。

キャッチと目が合った。こちらに向かってくる

「どうしたの?」

「このおじさんがひばりヶ丘はどこだって聞いてきて」

「ああ、それなら通り道だからわたしが送っていくよ」

「うん」

「にいちゃんはどこ?」

「ひばりと保谷の間」

「じゃあ3人で帰ろう」

先にgooglemapを開いた大学生とにわたし、そのあとをおじさんがついてくる

途中、おじさんが杖を忘れたというのでタクシー会社に電話するが、誰も出ない。

「明日また電話してみい」と伝える。

 

大学生は、池袋の医療学校に通っているそう。自身のおじいちゃんを助けてくれたこの仕事に憧れたんだと放射線技師を目指す。さきほどまでLOOPにのっていたが、返却場所が保谷にしかなかったから、保谷駅で降りたらおじさんにつかまったのだと言う。

おじいちゃんは、会社のパーカーを着ていたが、「社外で着てると怒られるから」といってマスキングテープで社名を隠していた。

 

おじさんを家まで送ったあと、大学生も近くだというので大通りまで送る。

高校生の頃バイトしていたくら寿司のそばだった。なつかしい。

「何歳?」と聞かれたので27と答えると、「嘘、同い年21だと思ってた」と言われる。

肉まんが食べたいというと「こんな遅くにはもうないよ」と笑われる。

大学生は肉まんのかわりに温かいお茶を買ってくれた。

 

「じゃあまたね」というと

「連絡先交換してないんだからまたねじゃないよ」という。

青年よ。これもまたね、なのだ。

いつでも相手を呼び出せる携帯のなかに居場所をつくるのではなく

いつかまた会う日を願って、いつかどこかで、またね。