喜劇的な世界 -2ページ目

喜劇的な世界

やりたいことを探し中。やりたいことをやれる勇気を探し中。
自分を見つめ直すための雑記です。
良い悪いはあるかも知れませんが、全部含めて自分です。
笑えるくらい面白おかしい人生を生きていきたい。

顔を見ながら電話をするのは初めてだった。正直、顔なんて見なくても声だけで充分だと思ってたし、なんなら文字だけでも良いと思ってたのに、いざやってみると「あ、いいな」と素直に思ってしまった。

 

久々、なのか頭が混同していてわからないが、好きな気持ちが溢れた。

もともとメールも電話もそこまで好きじゃないので、というより人と関わるのが面倒くさくて、束縛されるのも嫌なタイプなので彼女なんて絶対に作らないぞ、と思っていた自分が彼女にあったのはちょうど3年前のとあるライブ会場だった。

 

ライブなんてものに行ったことがなかった自分が本当に偶然に立ち寄った場所で初めて彼女と出会うことになった。

というのも、無料の野外ライブで、通りかかったらやっていたというライブだったのだが、アイドルのライブなんて全然興味がなかった(と言えば嘘になるが)ので縁遠いものだと思っていたし、テレビの中の存在だと思っていたので、こんなに間近で見たときに「アイドルってすごいな」と素直に思って立ち止まったのがきっかけだったのだ。

 

何気なく立ち寄ったそのライブで話しかけて来たのが彼女だった。「初めてなんですけど、どうしたらいいんでしょうか?」と聞かれたのだが、当時の僕はまず何を聞かれているのかもわからなかった。

そこに助け舟を出してくれた人がいて「なんかすごくいいな」と思ったのは今でも覚えている。

 

それからしばらくしてそのアイドルのライブに行きたいと思って再び行ったら彼女がいたんだよな、と思い出した。

 

夏の大きなフェスだった。

 

画面に映る彼女は無言のままこちらを見ている。

 

この間、どれくらいの時間が経ったんだろう。

時間感覚がおかしい僕にとって、もしかしたら相当長い時間を無言で過ごしてしまったかも知れない。

完全におかしいやつだ。

 

ねぇ、今まで何してたの、と聞かれたが答えられない。自分がそれを知りたい。

時の旅人のように、自分が自分でないかのように、彼女を見つめてしまった。

 

「ん、特に何もなかったよ」

 

口から出た言葉は嘘であり、真実であった。

 

文字通り、何もない。

 

だからこそ、きっと何かあったはず。

 

 

彼女との会話はいきなり終わった。

テーブルの上のお皿に髪の毛が付きそうだった。

 

 「髪、伸びたね」

 

 彼女は少しテーブルから離れてこちらを見上げた。そして僕は随分と彼女に会ってないことに気付いた。

 

空白の期間に何があったんだろう。過去なんて関係ない、とは言うものの、少しは気になる。あの日の続きが今始まったのに、この違和感は何だろう。他人のような気がしてならない。何故だかわからないが、ちょっと大人びた感じが彼女からした。

 

 「うん、なかなか会えなかったもんね。そっちはどうだった?ちゃんと自粛してたの?」

 

 お姉さんに怒られてる気分になった。彼女は僕よりも8つも歳下である。僕は昭和、彼女は平成に生まれた。年の差があると話が合わないんじゃない?と人からはよく言われるけど、僕は気になったことなんて1度もなかった。もちろん、給食だったり、観てたドラマも聴いてた音楽も違う。オリンピックの話題だって、21世紀になった瞬間の記憶だって、何より携帯電話やCDやゲームはジェネレーションギャップを感じざるを得ないけれど、それはそれでお互いを深く知っていくことで埋められていく気がした。 

 

 「このあと、どうなると思う?ニュースが言ってるみたいに、失業者が増えて、家族も崩壊して、テレワークがますます増えると思う?」

 

 正直僕は驚いてる。以前の彼女ならこんなのとは言わなかった。時期が時期だからと言うことではなく、彼女からニュースだの、世間だの、そんな話題は今まで出たことがなかったからだ。いつもディズニーの話や美味しいもの食べたいとか、そんな話ばかりで、東北の震災のときでさえ全く変わらずにいたのに。 気のせいか? 少し会わなかったうちに、もしかしたらそんな話をしてたことを自分が忘れてしまっただけなのかも知れない。確かに僕は彼女のことが好き過ぎて話もろくに聞いていなかったことは認めるが実際彼女も大人になったということなのだろうか。 

 

「ねぇ、話きいてる?」 

 

急に大人びた彼女の口調に驚き、顔をあげる。

 

 「ああ…」うだつの上がらない声で「まぁ、そうなるんじゃない?」と適当に答えた。彼女の顔つきが恐い。 それは「ちゃんと将来のこと、考えなさいよ」といったふうではなく、未来に何かが起こることを知っているような顔に見えた。 

 

「ごめん、ちょっと酔ってるみたい」 

 

久々に彼女に会えて嬉しいはずなのに、ドキドキが止まらない。恋心ではなく、焦り。酔えるはずもない。彼女の一挙手一投足が恐い。 「そっちはどうなると思ってんの?」 質問には質問で返すのがベターである。あなたの意見が聞きたい、と言えば相手も勝手に話し出すからだ。 

 

「2049年のシンギュラリティを待たずに世界は…」 

 

なんだ?何を言ってるんだ?ん?彼女の姿がぶれて見えてきた。あれ?酔ってるのか?いやそんなはずはない。 消失

 

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気がつくと部屋にいた。いつもの自分の部屋の天井がそこにはあった。昔天井に貼ったポスターのせいで、ちょっと穴の空いた天井。それを見るたびにあの日を思い出す。 あの頃は毎日電話をしていた。電話の最後には必ず「好きだよ」と言って終わるのが常で、いつまでも「今」を生きてい

ればいいと思ってたし、未来なんて考えてなかった。いや、彼女と過ごす未来しか見えてなかった。 昨夜の記憶は曖昧だが、きっと酔っ払って覚えてないだけだと思う。 あの違和感はきっと勘違いだ。久々に会ったからそんな気がしただけだ。

 

 LINE未読5件 

 

彼女からのLINEが5件も来ていた。 「明日は何時に会う?」 今日も会う約束をしてたっけ??今何時だ??全身に緊張が走る。そして違和感の正体に気付いた。2019年11月17日を表示するスマホの画面。 たしか、5/31までは緊急事態宣言が延長されてて、そんな中でもたまには会おうと言って会ったのが昨日(ここでは5/10を指す)で…。 11/17は新型コロナウイルスが報告された日である。この日から何かが、いや、本当はもう少し前から何かが狂っていったのだろう。 

 

 

はっ、と気付く。 天井が視界にうつる。携帯電話には5月11日とある。どうやら夢だったらしい。しかし携帯電話見るとそこには

 

LINE未読5件 

 

の文字があった。 

 

「明日は何時に会う?」見覚えのある文字のような気がした。 時計は12時を示している。

 

 「ごめん、今起きた。夕方からでもいいかな?うち来る?」 

 

 

既読。 

 

彼女からの返信

 

「え…。」 

 

 

何だろう、この感覚。こんな反応は今までで始めてだ。ただ、頭が働かないので再び

 

「うちならいつ来てもいいけどどうする?」

 

 送信ボタンを押す前に気付く。

 

相手の送信日が11月17日だ。 

 

強い倦怠感。匂いも味もしないような日々。僕はコロナに、かかろうとかかるまいと変わらない日々を過してる。あの日から約半年、僕は彼女に連絡を取っていなかったらしい。スマホがそれを証明しているというのも、なんだか管理されてるみたいで嫌な話だが、実際ほとんどの人間が携帯電話に支配されているようなものだ。ついったらんどの住人と毎日毎日会話して、現実から自然と目を背けてしまっているのも事実。リアル、そう、生の良さを知っているはずなのに気付けば自分の居心地の良い場所にいる。 

 

深呼吸。彼女への返信の正解がわからない。半年ぶりのLINEが「うちならいつ来てもいいけどどうする?」というのはさすがにナンセンスだった。もちろん自分ではそんなつもりはなかったので 「ごめん」とだけ打ってすぐに送信した。 

 

LINEに気付かなかったから返信しなかったから半年会わなかった…なんて、そんなわけがない。やはり、おかしい。あの日から何かがおかしいのだ。世界は渾沌としたニュースで埋めつくされているのは自分たちをもおかしくしてしまったのだと思った。

 

僕は彼女に再度メッセージを送った。

 

「なんだかよくわかったないけど、本当にごめん。とにかく一回会わない?」

 

記憶喪失の友人に「今までのことを知りたいから、どうしても会いたいんだ」と僕は言われたことがある。その友人は事故でそうなってしまったのだが、僕の場合は脳自体を侵されてしまったかのようだった。

意識ははっきりしている。普段から家にいるので、外に出る事自体は億劫だが、それが通常運転だ。彼女に会って何かがわかる確証は全くないけれど、とにかく彼女に会わなくてはいけない気がした。

 

 

 

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「自粛期間だよ」

 

返事が来た。返事が来たこと自体、奇跡だと思った。安心したはいいものの、本題はそこではない。そうだ。テレワークで今はやりのリモート会話をすればいいのか。

 

軽率に「映像」のボタンを押して電話を掛けた。

 

 

 

 

2049年。貨幣問題が鳥沙汰されている昨今、2045年のシンギュラリティー問題などとうの昔のようである。

 

だから言ったんだ。「リアル」こそが全てであると。

 

 

2020年のコロナによる世界恐慌以降、世界中でインドア生活、オンライン生活が主流となった。買い物も学校も仕事も全てがオンライン、ネットを使ったやりとりでことを済ます。

工事なども遠隔操作、手術だって遠隔操作だ。もちろんそれによる怪我などの不都合は減ったし、遠隔地での病人を救うことも出来た。しかし問題は新たに起こった。

 

まずは対面でないことによるコミュニケーションギャップである。そしていくらジム器具や自重トレーニングが流行っても、普段のウォーキングすらなくなったことによる骨の退化。ウイルスに対する免疫力の低下によって、風邪ですら命取りとなる時代になったのだ。

 

昭和時代の面影は完全に消え失せた。

平成に入りご近所づきあいがなくなった。

令和に入り接触することすらなくなった。

 

コンサートやライブ、授業といった「温もり」や「圧」というものが、ストレスかつ負荷だという人もいたが、今はそれが皆無となり、いかに人間があらゆる衝撃に耐えられなくなったか(何も感じなくなったか)はいうまでもない。

 

 

 

今やリアルを知るものは少なくなった。

温もりがあったからなんなのか、熱さやパトスなどというものが必要なのか。

 

答えはYesである。

 

非効率だと言われるかも知れないが、結局のところそれにより失ったもの、その代償の大きさを今ならわかるだろう。

 

私はこの言葉が無意味なことを知っている。

歴史は繰り返すとは紀元前から言われている言葉だが、何故その過ちを繰り返すのかは簡単である。それを語るときには、その経験をしたものがいないからである。

自分ごとにならなければ人は本当の意味では理解出来ない。頭ではわかっていても、納得は出来ないのだ。

 

人のぬくもりを知らないと

 

どうしてこんなにも冷たくなれるのか

 

一つ言えるのは、その冷たさが今では常温であるということ、普通であるということだけである。

気付けば夏日と呼ばれる日が来た。

 

熱い。暑い。厚い。あちゅい。

 

今日は何曜日でしたっけ?

 

GWもあっという間に終わってしまった。

 

正直、自粛期間のせいで2月からずっと私は干からびている。

 

まさに干物女。アニメ見て,Youtube見て、ゲームして、わたしって生きてる価値あるのかなって思ってた。

 

きっとコロナの自粛期間が終わったら、こんな私のことを好きになってくれる人はいないだろうし、自分だってきらいになる。

 

この期間にどれだけのことが出来たのかって、初めからわかってたし、緊急事態宣言が伸びることだって予想できた。

 

でも人間って怠惰。私は怠惰。いつだって、逃げたい。人生から逃げたい。

 

夏だって嫌いだし、冬だって嫌い。

 

みんな私のこと好きになってよ。わがままじゃいけないの?

 

なんでみんな他の人のこと見るの?

 

そんなことわかってる。私なんて、わたしなんて、見る価値すらないの。

 

でもセミのように、きっと自粛期間があけたら、ちょっとくらいの期間は羽ばたける、有名になれる、だなんて儚い夢を見てしまったけど、それって悪いこと?

 

傲慢?

 

いいじゃん、人間なんて欲望のカタマリでしょ?

 

情緒不安定だなんて言わせないから。安定なんてつまらない。

偽善をいうくらいなら、ホンネでだらけたいって言ったっていいじゃん。

 

人生甘く生きてるって?

 

そんなやつはコロナにかかるって?

 

大丈夫。自宅警備員やってますので。

 

今の時代はSNSがあるから。

 

携帯電話が友達なの、携帯電話の中に友達がいるの、世界はネット、私が王様。

 

少し落ち着こう。

 

今日はGW最終日。

 

夏、クールビズが世間で騒がれているけど、うちはすでにクーラーをつけて、私は頭を冷やすことにした。

 

この長い長い想像もしていなかった春休み。

 

私だって何か成長したはず。

 

一秒一秒、細胞が生まれ変わるように、私だって何か進んでいるはず。

 

時間は前にしか進まないから。

 

これから何かが起こるはず、私にも、世界にも。

金の切れ目が縁の切れ目だなんて信じてなかったし、想いが一方通行だったなんて信じたくなかったです。だけど、本当でした。お金がなければ見向きもされないし、何より食べるご飯がなくなる。昼は給食や学食で済ませていたご飯代も家族の分だけ毎日掛かっていく。日用品だってそうです。確実に倍の速さでなくなっていくのです。あんなに山積みにあったうちのトイレットペーパーは今やサハラ砂漠のようです。マスクなんてどこにも売っていないかと思ったら、今度は供給過多で余りまくっていてお店も大変だなぁとは思いました。お店側としても「どうだ」といわんばかりに店頭に並べてるけど、誰も見向きもしていません。需要と供給のバランスが著しく狂っている。だから、相手との気持ちも、スレ違いばっかなんだと思っています。見向きもしてくれないんです。

友達からは、それは関係ないと思うけどって言われたけど、僕は信じません。全部コロナのせいだと思っています。

 

 

健二が好きだったのは亜依という女の子。年の差は10歳近く離れていたけれど、年齢差を感じさせないくらい意気投合していて、それこそ対等の関係のようだった。

 

初めての記念日に彼は指輪を上げた。給料三ヶ月分とはよく言ったもので、それなりに高い買い物だった。もちろん給料がどれくらい知っている人からすれば、その三ヶ月どれほど苦労してお金を貯めていたかはわかるだろう。

 

「これ」

 

言葉少なに渡した指輪に彼女は少し微笑んだだけだった。軽く「ありがと」とはいったかも知れないが僕には聞こえなかった。いや、気づかなかっただけかも知れない。

 

 

少し早かったかな、と僕は思っていました。さすがに重いかなとは思っていたけど気持ちを抑えることができなかったし、形で示すことがそのときは全てだと思っていたんです。

 

でも突然その日は来ました。「緊急事態宣言」とやらをよく知らないけれど、その日からコンビニにはトイレットペーパーもティッシュペーパーも、ひいてはパスタソースやパンケーキの粉まで店頭から消えていて、普段見もしないコーナーまで覗き込んでみましたが、何もなくなっていました。

一体何に使うのかっていう亀の子束子(たわし)まで全てなくなっていました。

 

あくる日、実質の解雇を言い渡されました。仕事がないそうです。買い手がいなければ、仕事もなくなるのは当然で、僕のような仕事は顧客の予約を取り付けることが全てだったので、少しの驚きはあったものの予想の範囲内ではありました。

 

亜依にそのことを告げると「大丈夫?」ではなく「なんで?」と聞いてきました。さも仕事が出来ないから首にされたんでしょといわんばかりの厳しい口調で。いや、単純に理由が知りたかっただけなのかも知れません。でも僕にはそう聴こえたんです。詰問するかのような彼女の声、胸に刺さるような刺のある言葉が。

 

 

僕はコロナにはかかっていないけれど、外出禁止などという前に心の病にかかっていたきがします。

きっといままでだったら些細なことだと感じていたことも、全て悪意のあるように聞こえてしまって、もしこのコロナの期間があけたら、自分を指示してくれる人、自分を好きでいてくれる人、自分の味方なんて誰もいなくなってしまうんじゃないかって、そう思ってしまったんです。みんな同じ状況なのにもかかわらず。僕には亜依しかいない、そう思ってしまったんです。

 

全部コロナのせいだ、中国のせいだ、日本の政府のせいだなんていうけれど、何より怖かったのは自分の疑心暗鬼。そう、彼女を信じられなかったこと、自分の心の弱さだったんです。お金がないことが全ての原因ではないし、彼女との距離(物理的にもソーシャルディスタンス)も本当の原因ではありません。心が折れたら負けです。強く、強く、生きることがまずは大事。

 

こんなとき「病は気から」という言葉を思い出しますね。

 

好きだよ、亜依。