前回の続きになります。2カ所目の「リワークを立ち上げたい」というお話を頂いたので、そちらに異動しました。

そこも無床のクリニックで心療内科を標榜していて、デイケア(リワーク)も医療相談室もない所でした。1カ所目と同じく、法人内に経験者がいないので新規の部署としてリワークを立ち上げて欲しいというオーダーでした。

 

詳しいお話を伺いに行ったところ、デイケアがどういうものなのかもよく知らない上に、デイケアに必要なスペース、人員配置基準なども怪しい…なぜ、リワークを立ち上げたいのですか?という質問に、

 

 「デイケアだと利用を断れない上に、いつまでも居座る方が出てきてしまうから。」

 「リワークにすれば、あなたはリワークのレベルに達していないと断れるから。」

 

という回答でした。この辺りから違和感を感じ始めていましたが、最後にお給料の話題になったときに決定打がきました。

 

 「うちはお金がないので、20~22万円(月給)でやってほしいんです。」

 

わたくしは一応でも看護師として20年以上経験があり、そのうち、約15年をデイケア(リワーク)勤務をしてきています。

また、精神保健福祉士と公認心理師資格も所持しており、看護学校の教員経験もあります。お金では買えない経験というものに対するリスペクトがないばかりか、初任給以下で立ち上げスタッフという大変な業務をやってほしいと言われたのは初めてでした。しかも、追い打ちをかけるように、

 

 「ご利用者さまが入るまでデイケアとしての収入がないから、3カ月無報酬でやってね。」

 

と、ただ働き前提のお話でした。

 

“既婚女性は安くても働いてくれる”という変な思いこみがある上に、ただ働きを当然のように要求してくる法人…通常は、先行投資としてお給料を支払いながら、新規部署を立ち上げるのですが、そういう視点もないようでした。

 

これだけの経験と資格と“リワークプログラムを作れる”という特殊技能を持っているにも関わらず、女性であるというだけでただ働きを要求されるとは…わたくしが男性であったなら、こんな要求は絶対にされないと思います。

 

その場では保留にさせて頂き、後日、メールで、“貴法人が地域のリワークの礎となることをお祈り申し上げます”とお断りさせて頂きました。結局、その法人にはいまだにリワークも医療相談室も立ち上がっていないようです。ご利用者さまが入るまではただ働きで、安いお給料で、大変な新規部署を立ち上げてくださるスタッフさんは見つからなかったようです。