このあいだヴァーチャルリアリティについての話をした。 

 今私がいるここは現実ではなくて実は夢の中で、本当の私はどこかで眠っている。

 荒唐無稽に聞こえるけれど、じゃあ、こっちが現実であるという根拠を示せと言われて答えに窮しない人って、どれだけいるのだろう。 映画「マトリックス」を思い出す。 あれは、現実だと思っていた世界が、実は支配者に都合良く作られた夢の世界だったという恐るべき真実を知らされた主人公の話だった。

 現実と虚構の境って曖昧だ。

 テレビのスイッチを入れたら、十七年間の逃亡生活の末捕まった容疑者についての報道が一日中流れている日に、ふとそんなことを思った。
 風邪を引いたらしい、とダンナが言った。 実は私も二三日前から調子が悪く、やっと本調子に戻りつつあるのだ。 喉の痛みや鼻水は一日でおさまったのでほっとしたのだけど、なんだかだるくてすっきりしないまま現在に至る。 これだけ気温が乱高下すると、調子も悪くなるよな。

 いままでの経験上、私の不調は胃から始まる。 なんだか今日のビールはいつもより美味しくないうえ、すっと入っていかないなというのがサインなのだ。 しかし微かなサインゆえ黙殺することがほとんどなので、本格的な体調不良に至ってしまうのだ。 毎回反省するんだけどね。

 胃チャクラはイエロー、喉チャクラはブルー。 今必要としているポマンダーを使おうと思い、どっちにしようか悩む。

 で、このあいだテレビでイギリスの現役魔女がやっていたダウジングみたいなやつを思い出してちょっとやってみた。

 ボトルのペンダントをそれぞれのポマンダーの上に垂らしてみると、イエローの上では何の反応もなかったのに、ブルーの上では大きく旋回した。 ということでブルーを使用。 共鳴ってやつかしら。 ちょっと面白い。
 昔は、人前で話をするときはどんな場であろうとも必ず原稿を書いていた。 ものすごいあがり症だしアドリブのきかない人間なので、そうでもしないと話が通じないと思っていたのだ。

 今だって緊張するし、アドリブで全てを通せるほど機転の利く人間ではないのだけど、原稿を書かなければ人前で話ができないほどの構えはない。 なんというか、やれるだけの準備をしたなら後は出たとこ勝負じゃと自然に思っている。 やけくそではなく、あんまり自分や他人に過度の期待をしなくなった、と思いたい。 結局できる事しかできないしさ。

 とはいえ、そう簡単に解脱はできない。 このあいだ抽象度の高い話をする授業で、直前までどう話したらいいか迷っていた。 自分ではいつもと同じ緊張度だったと思っていたのだけど、そのことについて話そうとした瞬間、口の中がカラッカラになってしまったのだ。 おお、私ったらものすごく緊張していると思ったら思わず苦笑してしまった。 結局その時間の大半がドライマウスな状態で、話しにくいこと話しにくいこと。 まあ、緊張すると早口になっちゃうから、そういうときはそれぐらいでちょうどよかったのかな、と思いたい。