今回ディープインパクトが天皇賞に勝利したことについて、当日自分が感じたままを今記録しておこうと感じました。
これを読まれた方々には私とは全く異なる感想を持たれている方もあるかと思います。
その点については個人的見解ということでご理解いただけるとありがたいです。
競馬の世界において“強さ”というものを論じるとき、それは相対的な表現を用いていなかったとしても、競馬というレースの展開面をベースにした相手関係的な論議され表現されることが多い。
天皇賞のディープインパクトを見て最も強く感じたことは、“絶対的強さを持った馬”の前では、どのように理想的な位置取り・おりあい・追い出しをしたとしても敵わない馬がディ-プインパクトという競走馬なのだということを嫌というほど実感した。
スタートが悪く、道中の走りっぷりは理想的な走りとは程遠いというのがディープインパクトだ。
少し話がそれるかもしれないが、淡々と流れているレースの中で私が最も好きな状景は武豊の長手綱の下でスペシャルウィークが気持ち良さそうにリラックスしてに走っている姿だ。
いまだにこのコンビで疾走している姿より美しいと感じたものを見たことがないし、今後見たとしても、それは同じように長手綱の下で気持ち良さそうに走っている姿だろうと思っている。
もうこのことに関してはこれ以上美しい姿はないのだと、まるで自身の脳の中で更新されることのないよう確立されてしまっていることなのではないかと思うくらい美しく脳裏に刻まれたシーンなのだ。
ちなみに直線の疾走という点で美しいと感じたのは、ドバイシーマクラシックでのハーツクライの姿。
ハーツクライのそれは逃げた馬の疾走フォームではなかった、そうあれはまるで直線怒涛の如く追い込んできた馬かと見間違うような見事なフォームだった。
逃げた馬のあのような見事で美しい走りもまた、今後二度と見ることはないような気がする。
話をもどそう。
スタートの悪さ、最もこのことに関してはスタートが良いことが単純に理想的なわけではない場合も多々あることだが、ディープインパクトのスタートは間違いなく悪い。
そして道中のおりあい、これもディープインパクトなりにはあれが普通なのかもしれないが、どう見てもあれはリラックスした走りではなく力んでいるフォームだ、理想的とは到底言えない。
そんな欠点を補って余りあるどころか、残り1000mの競馬でそれら総てをひっくり返す力を持っていることが、これまでの競馬の常識では有り得ないことなのだから。
そう考えると競走馬として感性途上で、まだ延びる余地を残していてあの勝ち方ができるディープインパクトは”未完成な史上最強馬”といってよいのではないだろうか
そんな負けることが許されない程の“強い馬”に一番似合う武豊というジョッキーが日本にこの時代に存在していることに大いなる悦びと感謝というものを感じている。
どんな馬に騎乗しても見事な手綱さばきを魅せる武豊だが、とりわけ見事なのは馬と喧嘩せず、行きたがる馬をなだめながら走らせるこ技術だ。
昨年の有馬記念での敗北にも少し触れておこう。
確かに昨年の有馬記念でハーツクライに敗れたのは間違いのない事実だ。
昨秋以降、本格化したハーツクライは強い馬だ、そしてル・メール騎手と出逢ったこともまた双方にとって良い出逢いだったのだと思う。
しかしディープインパクトが普通の状態で出走すれば二度と負けることはないと確信している。
最後に、母馬の名前に英国を感じさせてくれる馬名が好きだ。
だからディープインパクトの母ウインドインハーヘアとハーツクライの母アイリッシュダンスという馬名は私にとってこれらの競走馬の強さとはまた別な意味で馬たちとの幸運な出逢いだったと思っている。
そしてさらには、この両馬の再度の対決が今年ヨーロッパのターフで観ることができるかもしれないとは、なんと魅力的で素敵なことだろう。