1940年代フランク・シナトラ、50年代エルヴィス・プレスリー、60年代ビートルズ、まだ時代が一人のあるいは一組の象徴で語ることの出来た古きよき時代。

 当たり前のことだが、リアルタイムではほとんど聴いていない時代ばかり。

 そんな時代に終わりを告げるかのような1970年に映画「エルヴィスオン・ステージ」 は公開された。

 当時映画月刊誌「スクリーン」を毎月楽しみに読んでいたので、話題になったこの映画に何の予備知識も持たず観た。

 エルヴィスの曲なんて「ラヴ・ミー・テンダー」くらいしか知らずに観たのだが、圧倒された、凄かった。

 長いスランプからの脱出後のステージということだったが、ステージ衣装以外は生で見てみたいという衝動を抑えられないくらい凄かった。

 どう凄いかということを当時は上手く表現出来なかったのだが、その後エルヴィスの曲を誰がカバーしても、あるいは逆にエルヴィスがカバーした曲はオリジナル以上で誰にも超えられなかったのではないかと、今ならはっきりそう言える。

 映画の中で特に印象深かった曲として「サスピシャスマインド」「スウィートキャロライン」「好きにならずにいられない」そして「アメリカの祈り」 だ。

 「アメリカの祈り」は詩の内容も判らず聴いていたのに、込められたいろんな意味や想いがガツンガツン魂に訴えてきた。

 未だにあの感覚を他では受けたことがないし、 あのときだけの衝撃だった気がする。

 もう35年も経ってしまった。

 もし今聴いてもあのときの感覚に戻れなかったらどうしようと何度もためらったけど、試しに聴いてみた「アメリカの祈り」は全然色あせていなくて、音楽を聴いただけなのに映像までが蘇った。