投稿UP後cologneの予想に反して多数のコメントをいただきました、ありがとうございます。

 これは早く書き上げなければと急遽書きました。


 cologneの記事は比較的長いので、前後半に分けたほうが読みやすいのかなと思い、初めて分割したのですが、こんなに続きが読みたいとコメントをいただいたので、今後は完結させてから投稿UPするようにいたします。



つづき


 ふもとの民宿と山小屋との往復はほとんど食料品と水の運搬でした。

 二人一組で行動し、ふもとの民宿へ行くのですが、夏草で方向がわからなくなるためナビゲーターとして山小屋まで迎えに来てくれるのがコリーのテツなのです。

 テツには自由に散歩するコースが何通りかあるらしく、朝は山小屋まで来てくれるのです。

 山小屋に着くと大きな声で「ワォンワォン」と吠えて到着したことを知らせてくれます。

 一晩山小屋で過ごした顧問の○石先生を除く、2年生のワンゲル部員はcologneを含めて6人です。

 最初の民宿への食料調達に選ばれたのがcologneと一番おとなしいN澤君でした。

 N澤君は文化系クラブのほうが似合う学者みたいなひ弱な少年でした。

 N澤君も動物に関する知識はほとんどなく、cologneと二人コリーのテツだけが道先案内ということで、不安一杯の気持ちでテツが歩く後をついて歩きました。

 さいわい民宿はふもとですから下り道が多く、20分も歩けば民宿に到着しました。

 民宿ではN澤君のリュックの水タンクに水を、cologneのリュックにはジャガイモを入れました。

 途中が下りで比較的楽だったことと、案内犬テツも先導しながら時折振り返ってcologneたちがちゃんと後をついてきているか確認するため立止まって待っていてくれたため、順調に民宿まで来れました。

 ですからジャガイモを運ぶリュックに溢れるほどのジャガイモを詰め込み、山小屋で待つ仲間たちを

驚かしてやろうと思ったのです。

 計ったわけではありませんが40kgぐらいの重さになっていた気がします。

 ヒモできつく結んだリュックの口からジャガイモが見えていました。

 民宿のオヤジさんにお礼を言って「テツをもう一度道案内にお借りします」といって山小屋に戻ろうと歩き出すのですが、テツが動きません。

 COLOGNEたちがいくら声をかけても動かないのです。

 見かねた民宿のオヤジさんがテツに声をかけると、さすがにオヤジさんの言葉には反応して立ち上がりました。

 そのときテツがcologneとN澤君を一瞬見たときの目は「なんで俺がお前らともう1回山小屋まで往復しなきゃいけないんだよフン」と語っていました。

 犬のテツにばかにされて気分は悪かったですが、こいつは犬だけど人間の言葉を理解してるからcologneたちをなめきっていても一応道案内はしてくれる、安心感のようなものはありました。

 帰り道は登りがきつく荷物も重たいので途中何度もテツに離され置いていかれます。

 心配になるくらいテツの姿が見えなくなると、いつのまにか戻ってきてくれて案内を続けてくれます。

 もうcologneもN澤君もテツ様様ですから「ありがとうなテツ」「お前は人間より偉いよ」とお世辞ではなくテツに嫌われたくない一心でテツに向かって話しかけ続けました。

 もうこの間は夢中でした。夢中がゆえに背中の荷物ががなんとなく軽くなってきていることを体は感じていたのに、テツに話しかけてついていくのに必死で気がつかなかったのです。

 小一時間は歩いた頃、山小屋が見えて来ました。

 山小屋が見えた安心感で初めて背中のリュックが異様に軽くなっていることに気がつきました。

 「N澤、ちょっと待ってくれ、リュックがおかしい」そう言って降ろしたリュックの中のジャガイモは詰め込んだときの1/5に減っていました。

 来た道を振り返ると1m間隔に規則正しく置かれたかのようにジャガイモが転がっていました。

 「やってもたー」自分のアホさ加減にあきれました、まるでマンガの世界の出来事でした。

 cologneもばてていましたがN澤君はもう気力も体力面も限界でした。

 「ジャガイモ落としたのは俺だし下まで戻ってどれだけ拾えるかわからないけど戻ってくる、先に山小屋に帰って」そう言って今登って来た道を戻りました。

 ジャガイモが道案内のように均等に1m間隔で落ちているので道に迷うことはありません。

 もうその頃はせっかく山小屋近くまで戻ってきたのに、再びジャガイミ拾いに道を戻る自分に腹がたっていました。

 今日の晩飯では最高のネタになって盛り上がるけど、このネタを笑いとして成立させるためにはジャガイモの回収が必要条件です。

 それが充分わかっている関西人cologneにとってはネタ成立のため、この苦しい作業を早く終えてしまいたかったのです。

 最初に満杯入っていたため8割ぐらいジャガイモを回収してリュックに入れたら、充分リュックは一杯になりました。

今度はリュックの口を慎重にしっかりと閉めて肩に背負いました。


 さあ帰ろう。

 立ち上がったcologneの前には3方向に分かれての登り道が見えました。

 今度はジャガイモを拾うことに必死で帰る方向も道しるべの印もつけずに来たのでした。

 最悪でした、合理的に考えれば一旦ジャガイモを落とし始めた地点まで先に戻って、そこからジャガイモを拾いながら進めば勝手に山小屋の近くまで戻れたことに今頃になって気がつきました。

 N澤君がcologneに一人で大丈夫かどうか聞かなかったのは、cologneがこの方法で当然回収してくると思ったからなんだ。

 次から次へと頭を使えなかった自分に腹がたつのと、どうやって山小屋の方向を決めればいいのか、全く思いつかなくてじっとしていました。

 こういうときはCOLOGNE動かないんです。追い込まれると冷静になれるのが、なぜか昔から不思議でした。

 cologne自身は困っているCOLOGNEを見てご先祖様の背後霊がcologneにアドバイスしてくれてるのだと解釈しています。

 とにかく3方向のどちらに進めばよいのか判断する材料を持っていないcologneは下手に動けません、この判断は絶対に正しいから動かないぞ、と決めました。

 それまで夏草が風に揺れていても全く耳に入っていなかったのが、ユサユサとcologneの心を揺さぶります。

 それから10分くらい考えて答えを見つけました。

 テツも山小屋近くにまで一緒に行ったのだから帰り道に必ずこの場所を通るはずだ。

 テツの名前を呼んでいれば案外近くにいて、すぐ来てくれるかもしれない。

 「テツーー、テツーー、テツーー」10回近く名前を呼んだでしょうか、でもテツは現れません。

 ひょっとしたらcologneがジャガイモを拾いに戻るよりも先に駆け足で民宿のオヤジさんのところに戻ってしまったのかもしれないなあ、と思ったり、まだ山小屋にいて○石先生やみんなと遊んでるのかもしれないなあ。いろんなことを考えました。

 なんといってもN澤君の頭の中ではCOLOGNEは迷子になるわけがないのですから、あと1時間くらいは騒動にならないはずですし、cologneもそんな騒ぎになったら笑えるネタどころか完全な笑い者にされてしまいます。

 そんなこんなで途方にくれかけた頃、夏草の中でガサガサと大きな音がしました。


 1年生の時、能勢の山中でキャンプしたとき夜中にこんな感じでイノシシが出てきたのを思い出しました。

 しまった、ジャガイモの臭いでイノシシが来たのか、とにかく身構えてイノシシを見たら大声で威嚇して追い払おうとしました。

 夏草の間から飛び出すものがありました。「ワァーーーー」第4警備体制の威嚇音声です。

 驚いたものは走り出して逃げて行きました、コリーのテツでした。

 なんだテツだったのか。

 もう必死です、思いリュックを担いでいても、ここでテツに見捨てられたらcologneには笑いものにされるか遭難する以外に道がありません。

 「止まれ!ストップ!止まれ!ストップ!」テツが日本語教育と英語教育のどちらの言語で教育を受けているかが不明なのでバイリンガルで必死に呼びました。

 するとしばらくしたらテツは止まってくれました。

 もう頭なでなでなんて、とても出来なくてテツの前で土下座しました。

 半泣きの声で「山小屋へ連れて行ってくださいお願いします」もうテツが山の神状態のあがめ方でお願いしました。

 するとテツは登り道を登って行くのです、こちらに顔だけを向けて「ついて来な」て感じで呼んでくれました。

 もう嬉しくて嬉しくてテツの後を遅れないように必死でついて歩きました。

 そんなときテツが遅いcologneを待ってくれようとしたのでしょう、突然立止まったのです。

 COLOGNEはも体力気力の限界を迎えてただひたすら歩いていたため地面しか見ていなかったのです。そして立止まって待っていてくれたテツの右後ろ足をキャラバンシューズで遠慮なしの力で踏んでしまったのです。

 「ウゥウゥウゥ ウゥウゥウゥ 」狼のようなうなり声でした。

 噛み付かれる、そう覚悟しました。でもたとえ噛み付かれても山小屋に戻らなければ笑いもの地獄が待っている。

 さっき通用した土下座作戦をもう一度実行しました。「テツさんお願いcologneを山小屋に連れて帰ってください」うなり声はやみました、しかし動こうとはしません。

 ここでcologneのご先祖様がヒントをくれたとしか考えられないのですが、cologneの口から「ゴー」という言葉が出たのです。テツはくるりとcologneに背を向け歩き始めました。

 そして20分後無事山小屋に到着できました。

 山小屋のみんなには遅いからキャプテン失格と言われましたが、もうそんなことはどうでもよくなっていました。

 次の日の朝、テツが今日の当番の二人を案内するべく登ってきました。

 そのとき顧問の○石先生でもなくN澤君でもなくcologneの前に来て「ワォン」と一回吠えてcologneの前に座ったのでした。

 もう嬉しくて感激して涙出そうになりました。

 真相はわからないけど、昨日周りに人がいなかったけど2回も犬のテツに土下座したcologneにみんながいる前ではcologneが飼主ですよみたいに認めたしぐさをしてくれたテツ。

 犬にいろいろ教えられて犬のことがすごく好きになった瞬間でした。


 その山小屋は顧問の○石先生個人のものではなく何人かの山仲間で共有しているらしく中学2年生の夏合宿のときしか行けないことになっているので、その後テツに会うことは二度となかったのですが、そのときの1年生が2年になって合宿に向かうとき、素晴らしいコリー犬のテツがいるから安心して行って来いと送り出しました。

 新2年生もテツとの往復が楽しみで、楽しい合宿でしたと帰ってきて報告してくれました。


 もう30年以上も前の話ですし場所も詳しく覚えていません、近くに茨木高校の山小屋があった記憶ぐらいです。


 でもテツと過ごしたあの1日と合宿の5日間は修学旅行よりも楽しいcologneの大切な思い出です。