「目地」という仕事がある。
一般的にはタイルとタイルの隙間を埋めていく仕事のこと。
下水道
みなさんは普段下水道という言葉を聞いてもあまりぴんとこ
ないと思います。
家庭のトイレは100%といっていいくらいほとんどの家が
水洗になっているから。
自分の家も下水道に通じていると思っている方も少なくない
でしょう。
しかし実際、下水道に直結している家庭は以外に少ないのは
あまり知られていません。
正確な数字は資料が手元にないので書くことは出来ませんが
下水道普及率は日本全体ではまだ驚くほど低いです。
簡易浄化槽が設置されているから水洗トイレとなっていても
下水道直結とは少し違います。
下水管の埋設は縦に10m近く掘った穴(縦溝)に門型クレ
ーンを設置し、推進マシンと言われる下水管(ヒューム管)を
押し込んでいく機械を穴の中に設置します。
この機械が大量の水を使い土を削るように地中に穴をあけ、
穴を横に掘った分だけ、下水管を油圧ジャッキで押し込んでい
きます。
このヒューム管が現在使用している下水道管と最終的につな
がると強烈な悪臭が漂ってきます。
さて目地屋の登場です。
目地とは、本管につなぐ前にヒューム管とヒューム管の継ぎ
目にユニバーサルリングといわれる鉄製ものとヒューム管の隙
間をセメントで埋める作業をいいます。
工事はもう終わっていますから道路にはマンホール(人孔)
と呼ばれる重い鉄製の「ふた」しかありません。
そこに作業中の表示と三角バリケードだけを立掛けマンホー
ルのふたを開けて中に入ります。
中は真っ暗です、気温は季節に関係なく一定です。
ライトを点け、ゴムボールを半分に切ったゴム製のボール
(キッチンで使用するボールのゴム製というイメージ)にセメ
ントを少量練り、管の継ぎ目360度に全部セメントを塗って
いきます。
<今は便利な注入剤に変わったみたいです。>
作業はたったのこれだけです。
しかしここで手を抜くと、管の継ぎ目の隙間から汚水が漏れ
て土中が菌で汚染されたり、道路の陥没の原因にもなるので重
要な仕事なのです。
ヒューム管はどれも2.4mです。
この作業をだいたい1日に200mから300m一人で続け
ます。
孤独です、まさに孤独な作業。
音楽は危険なので中では聴けません
酸素が不足するとブザーとライトで知らせてくれる酸欠メータ
ーを持ってマンホール内に入りますが、目に見える位置に置けば
先へ進むときに持って行くのを忘れていってしまうし、腰に着け
れば、作業中はしゃがんだり座ったりする姿勢だから危険ランプ
の点滅が見えません。
ですから酸欠のブザー音だけが頼りなのです
朝10時前に管に入って遥か彼方のマンホールから出てくるの
が夕方6時くらいです
その間、誰と話す機会もなければ人と会うこともない仕事です。
ときどき、別のマンホールの下を通り過ぎるときに、地上を通
過する自動車の音がかすかにする程度です。
学生の頃、いろんなバイトしましたがこれが一番孤独な仕事で
した。
先輩から「タバコと小さな人形は持って行けよ」と言われてい
ましたが、初日は「人形なんかいらない」と思って持って行かな
かった。
長かった、だから二日目小さな縫いぐるみ持って行きました。
そして気がつくと縫いぐるみに話しかけてる自分がいました。
話すことががなくなると「ちょっと寝るから起こしてくれ」
って縫いぐるみに頼んで寝てしまったり。
作業が終わったあともこれが大変で、必ずしも道路沿いに管が
通ってる訳ではないので、最初にマンホ-ルに入った場所まで戻
ってバリケードと表示板回収しなければならないからです。
この最初の場所がなかなか見つからず大変な思いしたこともあ
ります。
不審者が頭にヘッドライト点けてうろついている。
パトカー呼ばれたりもしました。
マンホールのふたは閉じてきていますから安全面で問題はない
のですが、もしマンホールのふたの上に駐車されたりしたら困る
のでバリケードは必要なの。
事故があった場合でもどこにいるか地上の人がわからないと困
るのでバリケードと表示板は必要なのです。
結局2週間くらいでこのバイトは辞めました。
自分にはこの孤独感は合わないと感じたから。
今でもどこかでほぼ毎日、この孤独な仕事をしている目地屋さ
んがいるはずです。
お疲れ様、目地屋さん。