ドキュメンタリー、見ました。
私は彼らのドキュメンタリーがとても好きなんですが
ナムジュンさんやユンギさんが行き詰まったり悩んだりする姿を見ると
少し苦しくなってしまいます。
そこに他のメンバーが一緒にいることで
ごちゃ混ぜのご飯をおいしそうだと言ったりビーチではしゃいで笑いで雰囲気を作ってくれるジミンさんや
できるよ、とメンバーを鼓舞するジョングクさん、
でも景色が最高だよ、と素敵なことを見つける天才のテヒョンさん、
みんなが幸せならいいと大きく包み込んでくれるジンさん、
疑問点や意見をちゃんと伝えるホソクさん、
それぞれが思い遣りあい、支えあう姿が見えて
これがバンタンなんだろうなぁと思いました。
ただ、そこに思っていたような自由がなかったことに少なからずショックも受けています。
大きなお金の動く失敗できないビジネスだからとか
彼らは会社員だからとかいう人がいますが、私はそれは違うと思います。
彼らが作っているのは芸術です。
プロダクトではないのです。
BigHitの副社長がグローバルに展開するには英語を使った方がいいと意見する場面、
私には違和感しかありませんでした。
どんな経歴にせよ、副社長はアーティストではありません。
経営側の戦略的な要望は少なくともアルバム制作前に出すべきものです。
歌詞は、どの言語でも翻訳して意味が伝わればいいという類のものではありません。
使った言葉だけでなくその言葉を選んだ理由、使わなかった言葉も含めて
作詞した人の思いが込められています。
特にラップは翻訳で安易に置き換えられるものではありません。
先日のYouTubeの番組でテヒョンさんがナムジュンさんの言葉の選び方がセクシーだと話していました。
単なる言語としてではなく、アーティストの「言葉の選び方」をもっと尊重してほしいのです。
また、歌詞であるならばその単語の響きも含めての「音」、それは音楽の一部です。
経営的な価値観が芸術の足枷になるのは納得できません。
パンさんがアリランを入れようと提案したことについては
彼は総合PDなのですから十分理解できます。
ただ提案にとどまらず、絶対に入れようという圧があった感は否めません。
会社員なら分かると言われていますが
会社員ならアルバムの責任者があんな手書きの付箋をいっぱい貼ったプレゼンをしたら
この提案は避けられないと察するでしょう。
総合PDが不機嫌な顔で「あくまで君たちの選択だ」と言ったら
呑むしかないと察するでしょう。
彼らは自分たちが背負っているものを理解しているのです。
私は彼ら韓国人の心の拠り所として「アリラン」がBTSの再出発に必要で最も相応しいと考えたのだろうと思っていました。
嬉しい時も悲しい時も寂しい時も歌うのだという大切な曲です。
その大切な曲を心を込めて世界に届けたいのだと思ったのです。
けれどパンさんがそれを選択しないことで「6万人の観客がアリランを歌う機会が失われてもいいのか」と言ったとき
そこにはアリランという曲に対する愛情が全く感じられませんでした。
6万人の観客というなら欧米の大きなスタジアムで、
韓国人以外の観客を中心とした6万人がその意味も知らずにアリランを合唱すること、
それを成し遂げたら満足するのは総合PDとしての虚栄心でしょうか。
それでもBody To Bodyが完成して私達に届けられたこと、
あの日首を振っていたユンギさんが好きな曲だと言ったことを考えれば
その後に大きな紆余曲折があった筈です。
どんな思惑があったにせよ、彼らが彼らのものとしてリリースするために悩み、慈しんであの曲を育てたことがうかがえます。
ナムジュンさんは何度かアリランを歌う時の喜びや悲しみや寂しさや抵抗の感情、
その根底に流れるのは「恨」だと説明しています。
その韓国語の感情を正確に理解はできませんが
全てを呑み込んでなお泳ぎ続ける彼らの挑戦が「恨」に込められ
楽曲やアルバム全体に昇華しているように感じられます。
彼らには音楽だけでなく、ダンスやビジュアル、パフォーマンスの全てを融合させて
Body To Bodyを完成させ、光化門という象徴的な場所で素晴らしいステージを見せてくれました。
だから私はやっぱりあの曲が好きなのです。
ドキュメンタリーではその最も核心に近い紆余曲折の部分を見せてもらうことはできなくて残念でした。
残念と言えば、ドキュメンタリーで語られなかった他の曲たちのことももっと知りたかったです。
SWIMやBody To Body以外の曲の方が寧ろ今までのBTSのスタイルから離れているものが多くて
それがどんな風に生まれたのかにも興味津々です。
そして曲作りの中心となるメンバーを支えていると書いたメンバー達も
もちろん音楽制作に関する意見をたくさん持っていてしっかり関わっていた筈で、
そういう姿ももっと見たかったと思っています。
特にLAのスタジオでアルバムを締めくくるInto The Sunのあの多幸感が生まれた時のことは
是非見せて欲しかったです。
1つの曲の作詞作曲に大勢の人が携わるKpopのスタイルは私にはまだ馴染みません。
良い物を持ち寄って最高のものを作るという側面はあるのでしょうが
どうしても自分の意見を曲げたり、吞み込んだりすることがあると思うからです。
メンバーそれぞれ方向性の違う、そしてそれぞれに素晴らしいソロ活動を経た今、そして今後は
同じやり方で制作を続けていくことは難しいのではないかと思います。
彼らは優しくて、BTSが大好きだから、ARMYが大好きだから続けてくれるのかもしれませんが
それが音楽家として正しく、幸せなことかどうかは分かりません。
それぞれがもっと自由にやりたいことをやって欲しいのです。
ビルボードの1位や初動400万枚超など今回も大成功をおさめたBTS。
本当におめでとうございます。
ですが私は、もうそういうものに囚われず、初動ではなく長く愛され続けるような、そんな音楽活動をして欲しいと思っています。
ARIRANGはとても好きなアルバムですが、やはり痛みもあります。
7人の田舎者だという彼らが自由にセッションして、自由に意見を戦わせて、
冠も重い荷物も放り出して好きな人たちと好きな音楽を作って私たちに届けてくれる、
そんな日がくるといいなと思っています。
そんないつかを待ちながら、私は今日の彼らと彼らの音楽がやっぱりとても好きなのです。