フラッシュバック2013
昔八王子の実家の近くにLOFTHOUSEという飲み屋があった。ビルの地下にあって少し暗めの照明とBARな様な雰囲気でありながら、リーズナブルな価格でカジュアルに飲めるこの店は、背伸びしたいばかりの大学生にはおあつらえ向きの店だった。
たまに行く程度のこの店の常連になったのはひょんな事からだった。
ある日街中で僕にフレンドリーに挨拶して来る男がいたのである。「やあ、やあ!」と僕に手を振ってきたり、常に笑顔で挨拶をしてくるのだ。彼が誰なのか暫くの間わからなかったのだけれど、どちらかの手が義手でいつも黒革の手袋をしている彼を見て、彼こそがLOFTHOUSEの店長であることに気付いた。いつも地下の薄暗い店舗で見ていると、まず義手である事はわからないのだけれど、ある晩にお店に飲みに行った時改めて挨拶されて「なるほど…」と思った。
その時もう一つ発覚した事がある。
どうやら、彼は僕を誰かと間違えていたのだ。僕を呼ぶ名前が明らかに違うのである。
それでもフレンドリーな接客と笑顔に徐々に常連と化していき、彼女を連れて行ったりするようになって、気が付けば僕は誰がではなく、僕として覚えてもらうようになって、たまにサービスメニューを出してくれたりした。
そんなLOFTHOUSEと店長を懐かしんだのは、今日の昼食の時の事。
行きつけのうどん屋さんでは、いつからか忘れたのだけれどいつも食後にコーヒーを出してくれる。
おそらく良く通っていた僕らを覚えてくれての事だろうと思うのだけれど、真相はわからない。
でもそのわからない感が、LOFTHOUSEの店長の思い出と重なって「なんだか懐かしいよな」と奥さんと煮込みうどんをすすっていたのです。
今はもうLOFTHOUSEはなくなってしまったけれど、間違いなく僕らの青春の1ページであり、38歳になっても飛騨にあるうどん屋での触れ合いにフラッシュバックするなんて、なんか人生って面白いものだな…と煮込みうどんをハフハフさせながら思う雪の日でありました。
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