愛すべきダメ男の恋の行方 「愛の妙薬」新プロダクション | ミュンヘン・ カフカ通り徒然日記

愛すべきダメ男の恋の行方 「愛の妙薬」新プロダクション

冷たい雨の降る金曜日の夜、晴れて自作クライネシュヴァルツェとジャケット
それからデコ用(!)オーガンジーを急いで縫い合わせただけのショールを纏って
ドニゼッティの愛の妙薬(l'Elisir d'Amore)を観に行く。

1日のプレミエは
新作にはブーイングが付きもののミュンヘンにしては異例の好意的な反応だったという、大絶賛の各新聞評。
これはクリスマス前にホンワカ幸せ気分になれるかも・・・音譜

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

Besetzung

Musikalische Leitung Juraj Valcuha
Inszenierung David Bösch
Bühne Patrick Bannwart
Kostüme Falko Herold
Licht Michael Bauer
Chöre Andrés Máspero

Adina Nino Machaidze
Nemorino Giuseppe Filianoti
Belcore Fabio Maria Capitanucci
Dulcamara Ambrogio Maestri
Giannetta Tara Erraught

Bayerisches Staatsorchester
Chor der Bayerischen Staatsoper

いつもの天井桟敷(Gallarie 今回は右側の15ユーロの席)にたどり着いたら
まずはブーツを脱いで持参した拷問パンプスに履き替える。
外は寒くても最上階はすでに熱気ムンムンで、ジャケットもショールも邪魔っ!
結局二の腕丸出しで・・・でも期待に違わずポエジー溢れる夢のような3時間でありました。

ノスタルジー&ポップなアイディアがいっぱい
演劇畑の若手演出家ダヴィッド・ベッシュ
ドニゼッティのロマコメ・オペラを50年代の田舎風景に設定。
舞台にはピンク色の風船やハート型のライティングが散りばめられ
ちょっとくすんだパステルカラーの衣装も懐かしい昔の映画の一場面みたい。
かと思うと
胡散臭いが憎めないいかさま薬売りのドゥルカマラは
干し草運搬車(Heuwender)を改造した、突然蒸気を発したり不気味に光るUFOみたいなマシーンと共に登場する。
「愛の妙薬」と称して騙し売りつける安ワインはポンプ式農薬散布器具に入ってる。
貧しいネモリーノが亡き叔父の遺産相続するという噂が広まると
村の娘たちは胸元からサッとルージュを取り出して、玉の輿願望ムラムラに口の周りを真っ赤に塗りたくる。
等々、ディテールも楽しい。

好感度高の若い主役歌手たち
内気で純朴でパッとしない男ネモリーノを見事に体現したジュゼッペ・フィリアノーティ恋の矢
縮小版ルカ・トニ的風貌だが素顔はインテリな雰囲気の35歳。
すでに各国の有名劇場で活躍中だそうですが、ミュンヘンはこれがデビューでしょう。
高音がひっくり返ることが・・・と、今までそこここで批評を読んだ覚えがありますが
「人知れぬ涙」を初めとして、安定したしっかりした歌声でした。
とにかく、すっかりミュンヘンの人気者(Publikumsliebling)って感じ。
微妙な仕草や表情にチャップリンの例えば「街の灯」にも通じる
ユーモアと仄かなメランコリーが感じられるし(これはそう簡単なことではない)
玉の輿願望の村の娘たちにちやほやされる場面では、下着姿でトラボルタ並のディスコダンスを披露。
この演出は来年7月フェストシュピーレ時に歌うローランド・ヴィリャソンを強く意識しているとも聞きました。
ヴィリャソンはコミックがぐっと前面に出そうなところだけど
ハンサムでちょっぴり内向的(に見える)なフィリアノーティの説得力ある演技に
観客全員胸キュンしたはずだっ!とワタシは確信してます。

ミュンヘン・ カフカ通り徒然日記 ミュンヘン・ カフカ通り徒然日記

一方のニーノ・マチャイゼは去年サルツブルクでネトレプコの代理をこなしたという
グルジア出身イタリア在住の26歳の若手有望ソプラノで、すでにカリスマと実力を備えています!
それでもって、写真をみるとアンジェリーナ・ジョリーに激似です!
なんたってアンジェリーナですから~言い寄る男たちも何のその、自由恋愛を唱える奔放な美女役はもってこい。
最後は誠実なネモリーノへの自分の本当の気持ちに気づき
愛を告白するシーンでは可憐な女になって・・・良かったですね~。
指輪を彼女の指にはめた途端、ダメ男君は嬉しさのあまり気絶しちゃうところでは
オケが演奏し終わるのを待ちきれずの大拍手喝采。

脇を占めるドゥルカマラもマッチョで男っ気ムンムンの連隊長ベルコーレ
村の娘っこジャンネッタも、それぞれにキャラがはっきりしてて楽しい。
特に、唯一ネモリーノの気持ちを理解する(もしかして好きなのかも?)風変わりな女の子ジャンネッタが強烈。
丸メガネかけピンクのリュック背負ったダサ子ちゃん。
なぜかウェディングドレスもどきを着ている(結婚願望?)。
物語の語り部的役割も兼ねる反面、アリアが数少ないのですが
タラ・エロート嬢の柔らかく心地よいソプラノにドキッとしました。

以下、トレーラー&インタビュー含むクリップです。
あの笑いと涙の舞台の雰囲気が伝わるでしょうか。
(インタビューでの学者風物腰からは想像もつかないジュゼッペの変身ぶりに脱帽!)




「イゾルデの愛の妙薬」なんてありえないわねっと笑い飛ばすアディーナ。内気なネモリーノの胸のうちは・・・?
ミュンヘン・ カフカ通り徒然日記

遺産相続でお金持ちになったためとは知らず、突然モテモテのネモリーノは妙薬の効き目と喜ぶ。
ミュンヘン・ カフカ通り徒然日記

あのひとが人知れぬ涙したのを見た・・・電柱に張り付いて歌うシーンはハイライト
(電柱が左寄りだったので、右側座席で大正解。左の人たちは声を聴くのみだったでしょう)
ミュンヘン・ カフカ通り徒然日記

ハートウォーミング・ハッピーエンド@干し草マシーンの二人 は天井桟敷からは残念ながら見えなかったー!
ミュンヘン・ カフカ通り徒然日記

(写真はバイエルン州立歌劇場HPより拝借しました)