ナクソス島のアリアドネ シュトラウスの多血質音楽を鑑賞 | ミュンヘン・ カフカ通り徒然日記

ナクソス島のアリアドネ シュトラウスの多血質音楽を鑑賞

旗日(ドイツ統一の日)が週末にかかって損した気分の土曜日
今季初めてバイエルン州立歌劇場へ行ってきた。
演目はリヒャルト・シュトラウスのAriadne auf Naxos(ナクソス島のアリアドネ)

ちょうどブンデスリガのFCバイエルン対ケルンの試合が終わり
地下鉄6号線の中はこれから飲み直しにオクトバーフェストへ乗り込むサッカーファンでいっぱい。
劇場周辺も秋晴れの後のさわやかな夕べに町行く人も足取りも軽く、こちらまでウキウキわくわくしちゃう。

さて、アリアドネはオペラフェスティヴァル期間中、川向こうのプリンツレゲンテン劇場で上演され大好評を得た作品。
キャパの大きい歌劇場に引っ越した今季、最終日のこの夜も満員御礼でした。
夏のキャストと少しだけ変更があり
何と言ってもツェルビネッタ役が華やかなディアナ・ダムラウ嬢でないのが残念・・かな。

いつものキスマーク天井桟敷の座席にたどり着くと
先のローエングリン同様、開演前から舞台の上ではすでに「演技」が始まってる。
ダンサーたちがウォーミングアップしてる横では進行係が打ち合わせに余念ない。
舞台の両サイドには花道が施され、パルケット最前列は空席になってる。
ふむふむ、劇中劇のあるオペラだけに、劇場全体を駆使した面白いアイディアがあるかもしれないわ。

さて・・・開幕。

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プロローグ:

ウィーンのとある大富豪の邸宅。
真面目なオペラ~舞踏喜劇~最後に花火で締めくくるパーティが企画されていた。
ところが、それぞれがリハーサルに余念がないところに
時間節約のためオペラと舞踏劇を組み合わせて同時進行させるよう予定変更のお達しがある。

蜂の巣をつついたように大騒ぎになるオペラ組をよそに
遊び好きな踊り子・ツェルビネッタとその取り巻きたちが花道をドヤドヤと乗り込んでくる。
「僕のオペラをドタバタ連中と一緒に上演するなんて嫌だっ」という真摯な若きオペラ作曲家を
「あら、面白いじゃないのぉ。あんまり深刻すぎても疲れちゃうわよ」と言いくるめるツェルビネッタ。
世慣れしない彼は魅力的な彼女に心魅かれ翻弄され、ついには内容変更を承諾する。

作曲家は書き直した楽譜をオーケストラピットの指揮者に手渡してから
そのまま花道と最前列の間に腰を下ろし
いざ開幕となる自分の「オペラ」を私たち(本物の)観客と共に見守るのであった。。。

劇中オペラ「ナクソス島のアリアドネ」:

古代ギリシャ、ナクソス島。
クレタ王女アリアドネは愛するテーゼウスのためにミノタウルス退治の手助けをするも
結局彼に見捨てられてしまう。
その悲しみは深く、ひたすら死が迎えに来ることを待ち望んでいる。
そこにツェルビネッタたちが登場して、歌い踊ってアリアドネを元気付けようとする。
「そんなぁ落ち込んでちゃあダメダメ!恋愛のことならワタシ結構経験豊富。人生色んなことあるわ。
貴方だって本当は死じゃなくって新しい恋人の出現を待ってるんでしょう」
しかし、何から何まで正反対の二人ゆえお互いを理解することは不可能。
慰めの言葉はまったく効果なしだった。
いつの日かバッカスとその一行がやって来ると、アリアドネはついに死の到来だと思い込むが・・・。
バッカスと彼女は恋に落ちてしまい、新しい人生の門出を歌いナクソス島をあとにする。
抱きあう恋人たちを見ながら、「ほらね、やっぱり死ぬよか新しい恋人の方が良いに決まってる」と
ちゃちを入れるツェルビネッタ。

初めての自作「オペラ」に幕が下り、感慨極まった作曲家は憑かれたように彼らの行方を追う。
そしてふと我に返ると、出演者の大拍手に包まれ肩車されて祝福を受けるのであった。



シュトラウスの音楽はオケ部分もアリアも、ワーグナー風に美しく重厚ドラマチックさ、表現派的なフレーズ
かと思うとモーツァルトさらにはバロックに近いメロディーが耳に飛び込んできたりして
実にカラフル・奇想天外で風のように気まま。
多血質音楽と名づけちゃおう。
演奏する身としては難しいんじゃないかなと心配になりましたが、どうなんでしょうか?

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こうして本物の劇も終わると、今度はやっと私たちが大拍手する番であります。

ミュンヘン・ カフカ通り徒然日記 作曲家役のダニエラ・シンドラムは当劇場のおかかえズボン役(?)。
暗めのシルキーな歌声は安心して聴いていられました。
頬骨の高い風貌とスリムな立ち姿はちょっとマリヤーナ様を彷彿とさせますね。
レパートリー的にモーツァルトやシュトラウスなどが多く、バロックは歌わないのかしらん。
(もっとも、ミュンヘンではしばらくはバロックオペラ無さそうだけどっ)

ミュンヘン・ カフカ通り徒然日記初夏のオランダ人で圧倒的な声量が印象に残ったアニア・カンペがアリアドネ。
その後もグラインドボーンではイゾルデとしてサラ・ブランゲーネ乳母を刺激してくれましたが
ここでもツェルビネッタの甲高く軽いソプラノと好対照な、線の太いソプラノで貫禄十分だった。

$ミュンヘン・ カフカ通り徒然日記
そのツェルビネッタは今季は(多分)若いカナダ人ソプラノ、ジェーン・アーチバルト嬢
ディアナ・ダムラウはどんなだったか想像するのみ、彼女のオーラは真似しようがないでしょうけど
少なくともブロンドで可愛く、男たちを惑わす楽天美女という役どころにピッタリでした。

ミュンヘン・ カフカ通り徒然日記 若く長身で恰幅の良いクラウス・フロリアン・フォクト
最後にキラキラ神々しく出てくるバッカスに相応しい。
よく分かりませんが、金属的な(明るい?)響きのテノールでこの外見からこの声?って思ってしまう。
この人はワーグナーも歌いそうな感じ・・とチェックすると、なるほどバイロイトにもしっかり出演してる。
彼のローエングリン、ヨナス・カウフマンのとずいぶん違うな~。

Der Komponist Daniela Sindram
Der Tenor (Bacchus) Klaus Florian Vogt
Zerbinetta Jane Archibald
Primadonna (Ariadne) Anja Kampe

Inszenierung Robert Carsen

以下、州立劇場サイトより拝借しました。

ミュンヘン・ カフカ通り徒然日記 
すがりつく男たちを従えてマテリアルガールのマドンナ風なツェルビネッタ(これは夏のディアナ・ダムラウ)

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ラストシーン・恋の喜びにひたる二人とツェルビネッタの赤いパンプスが印象的

ミュンヘン・ カフカ通り徒然日記
皆に祝福受ける若き作曲家はシュトラウス自身の姿を投影してるのか・・・?