4101156212 真田騒動―恩田木工 (新潮文庫)
池波 正太郎
新潮社 1984-09

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 最近「増税」と簡単に仰る某総理がいらっしゃいますが、チト簡単にモノを言い過ぎではないでしょうか。

 日本の歴史を見てみても、財政破綻をした地域は山ほどあるけれど、人の智恵と熱意で以て切り抜けてきたんだと感心いたします。その中で有名なのが「上杉鷹山」と「二宮尊徳(金次郎)」ではないでしょうか。

 今回紹介する人物は「恩田木工(杢、モク)」。タイトルでもあるように「真田」の名前があります。そう、今女性に人気の真田幸村を排出した、あの真田家です。兄、信之(関ヶ原以前は信幸)が関ヶ原の合戦で徳川側であったため、真田家としては残りますが、その後も苦労の連続。ついに財政破綻になりました。

 宝暦8(1758)年2月27日、松代城の大広間前の庭には、松代藩全200余ケ村のうち、73ケ村の領民代表が参集していた。各村の庄屋は、それぞれ百姓の中から「よくもの言う者」を引き連れて参集せよ、と家老・恩田杢(もく)に命ぜられていた。残りの130余ケ村の代表は、翌日呼ばれていた。
大広間には杢より年長・格上の家老職や、諸役人が並んで座っている。江戸時代に藩内の武士階級が一同に会して討議を行うことはよくなされていたが、百姓の代表まで呼ばれるというのは、前代未聞であった。現代流に言えば、タウン・ミーティングである。
杢はこう切り出した。「先ず以て、殿様不如意につき、只今まで御領内の者ども、殊の外難儀致す儀に候故、、、」。杢は「殿様不如意」、すなわち藩の財政が失敗し、領民たちに「難儀」をかけている事を正面切って認め、詫びた。その上で、自分が勘略奉行(財政担当)になったら、難儀はなおも増え、「気の毒に存ぜられ候が」、「先ず手前儀、第一、向後虚言(うそ)を一切言わざるつもり故、申したる儀再び変替(へんがえ)致さず候」。
嘘は一切つかないので、言ったことは決して変更しない。この宣言が「信頼回復」を最優先する杢の財政改革の第一声であった。

________Japan On the Globe(262) 国際派日本人養成講座_______
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_/ 国柄探訪: 恩田杢 ~ 財政改革は信頼回復から
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_/ _/_/_/  性急な増税で農民一揆を招いた前任者の後で、
_/ _/_/ 恩田杢は農民との対話集会から改革を始めた。
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 多分、国民は何らかの増税をしないといけないことぐらい理解しています。ただ、自分達が掲げた公約を実現せず、納めた税金の使途は明確にされず(個人的には企業会計原則で以て表現して欲しい、どうも都合が悪いことは隠されているような気がしてなりません)、説明責任を何ら果していないから、払う私達が反対するのも無理もないことです。恩田木工の「ウソをつかない」「贅沢を慎む」、またそれを自分の家族にまで徹底する姿勢、今の政治家に欠けている要素だと思います。

 残念ながら、これだけの偉人であるにも関わらず、書籍などの資料が少なく、歴史ファン以外に知る人も少ないのが現状。今の政府に対しての抗議の意味を込めて、ドラマや映画を作成して欲しいものです。