*嵐妄想小説
*BL小説
*吸血鬼幻想
*物語の全てはフィクションです。
※ 吸血鬼ナルセ=百年前の管理人の大野智である。
※ 由紀夫は、大野が後に出会う櫻井翔少年そっくりの青年。
*スミは、相葉くんによく似た少女。
(7)
スミが、家の前を通った花売りの娘から、花を買っていた。
「薔薇(そうび)は、あるのかしら」
「この白い小さなものなら……」
白くて小さな薔薇の蕾。
可愛くて手に取ると、由紀夫の顔が浮かんだ。
儚く美しい彼に、とても似ている気がする。
「由紀夫様、お好きかしら」
恐ろしい本家の暗殺者が来るかもしれないが、3人で生きていこうと言われたことが嬉しかった。
今まで、誰にも一緒になどと言われたことは無い。
本当の家族に巡り合ったようで嬉しくて、少女は小さな花束を優しく抱きしめた。
パタパタと軽い足音を立てて、由紀夫の元に戻った。
「綺麗だね」
花束を持って戻ったスミに、由紀夫が微笑んだ。
「そうなんです、小さな花なんですけど、これでも薔薇(そうび)なんですよ?」
ニコニコしてるスミを見て、由紀夫が珍しく声を立てて笑う。
「違うよ、綺麗なのはスミだよ?」
「へ? ……やだ、そんな訳ありません///」
「どうして? 髪も肌も瞳も、とっても綺麗だよ?」
お世辞ではなく、スミは地味な服装で分からないが、とても綺麗な娘だ。
スミは、褒められたことも無かったから、真っ赤になって両手で顔を隠してしまう。
「揶揄わないでくださいっ、綺麗っていうのは、由紀夫様のような方ですっ」
由紀夫は、そっと優しくスミの手首を掴んで、顔から外す。
スミに微笑んで、そっと額に口付けた。
「ゆっ由紀夫っさ、さまっ」
もう真っ赤になってスミが慌てまくる。
「スミは、素晴らしい子だから、ふさわしい方と幸せになって」
「由紀夫様? それって……」
まるで……いなくなるようで。
「由紀夫様……ずっと一緒ですよね?」
「うん、そうだね」
「約束ですよ? 3人でいましょうね?」
「うん、どうして泣きそうな顔をするの?」
「だって……」
グスグス泣き出した少女を、影の薄い青年が抱きしめて背を撫でてやる。
「一緒にいるから……泣かないで」
「はい……」
ナルセ(大野智)に攫われた日から、明日や未来を考えたことが無かった。
でも、自分を慕う可愛い少女のために、由紀夫は生きていこうと考え始めていた。
ナルセ(大野智)を忘れて、誰かのために。
だが、それを聞きつけたようなタイミングで運命は動く。
まるで、逃してはくれないかのように二人の前にナルセ(大野智)が現れたのは、それからすぐだった。
――――――
いつ襲われるか分からないが、智久は由紀夫に訊かなければならないことがあった。
由紀夫が描いたスケッチブックの絵。
なぜ、あの吸血鬼の絵なのか。
瑠衣の顔が浮かぶ。
吸血鬼を手に入れ殺してでも、不死身の自分を造りたかった瑠衣。
その永遠への執着と情熱を守るのが、彼女に助けられ生かされてきた自分の役目だと思う。
だが、吸血鬼とどう対峙していけばいい?
味方なのか、敵とするべきか。
そこへスミが飛び込んで来た。
「智久様! 家の外に不審な男がいて……その人を見るなり由紀夫様が、追いかけてしまわれて……」
「男? どんな?」
「あの絵の人に似て見えました」
思わずスケッチブックを取り出す。
「本当に、この男か?」
ナルセ(大野智)の絵を見て、スミは頷く。
「この方です」
「探せる? スミは無理せずに見つけたら、知らせに来て。私は長に会ってくる」
「先に本家のお祖父様と会うのですか?」
「ああ、先に蹴りを付ける。あの男で吸血鬼なら、すぐは殺さないだろう」
「お祖父様は、どうなりますか?」
「襲うやり方が、雑過ぎる。俺の想像だと長は……死んでいる可能性がある」
「……わかりました。お祖父様の仇をとって下さいませ」
「武器は何も無いが、どうしてもの時はこの注射器で」
「はい」
数本の小瓶に入った薬と数本の注射器。
瑠衣とどこか似た少女は、この日から薬を扱うことが人生になった。
続く
久しぶりの薔薇の葉の誓いです。(どれくらいの頻度なら良いのか迷う)
100年前のお話は、そのまま相葉君の一族と吸血鬼の物語になります。
美しくて妖しい魅力いっぱいのナルセ(大野さん)を忘れるなんて難しいですよね。
それが由紀夫の1番の悲劇ですが、人生で1番の愛の花でもあります。
美しいひとは、どうしても悲劇的です。
リアルでも、不幸な美人が(性格が良い人限定ですが)いっぱいいます。
同じ美人でも、性格が良すぎないと(笑)幸せそうなのになあ。