(BL/ON/大宮妄想)
*Dom/subユニバース・パロ風(オリジナル設定)
和也の父親が、ついに病の果てに亡くなった。
会社の方は、和也の働きがあったから何も関係ないかのようだった。
だが実情は深刻だ。
初めての恋愛で、Subの特性が爆発した和也は、経営者としての才能が発揮出来なくなってしまった。
同じSubの人間は多勢いる。
けれども、和也は純粋過ぎた。
初恋で運命のような智と出会ったことは、幸福であったが、不運でもある。
自分を見失うほどの恋は、Subには致命的だ。
そんな彼らの前に、女王のような帝王然とした呉坂 亮が現れた。
智と和也と初めて会った数日後。
どんな人間なのか、確かめたくて連絡した智に、彼女は会いに来た。
極秘の話があると言う彼女を、応接間に通して三人だけでの会談になった。
運ばれてきたお茶に、彼女は視線だけを落とす。
「申し訳ないが……他のものが良い」
そう言ってお茶を遠慮するのかと思っていると。
「私は、和也が欲しい。和也と結婚したいと考えている」
「えっ……」
彼女の狙いは、もちろん和也の会社だと予想はしていた。
ジワジワと攻めて来るかと思われた彼女から、とんでもない言葉だった。
もちろん、智と和也も驚いた。
特に不安定だった和也は、その場で動揺のあまり泣き出してしまった。
少女のように泣き出した和也を抱きながら、智は彼女を睨みつける。
彼女は、もう芝居など、お見通しなのだろう。
「そこまでして、この会社が欲しいのですか?」
「会社も欲しいが、欲しいのは和也だ。この子に付くお前ごと」
「は?」
「お前たちは、二人で一対なのだろう? なら私が面倒を見てやる。この会社も助かるだろう。見たところ、この子が落ち着いた経営者になるには、まだ時間がかかる」
「……私たちをどうする気ですか?」
彼女は、楽しそうに笑う。
「私は、人間観察が好きだ。情の深い者ほど愚かで破滅ばかり選ぶ。特にSubという人間たちに興味がある。だからそばに欲しい。それだけだ」
「それなら、他にもいるでしょう?」
「普通のSubは、私に利益を持って来ないからな。和也なら、利益を持って来る。こんなお互い良い提案はないと思わないか?」
「ですが、結婚となると……」
震える和也は、智の言葉をジッと耳をすまして聞いている。
「和也は、可愛いな。お前の言いなりなのだろう?」
「……」
「安心しろ。私は恋愛や性愛には、残念ながら興味がないんだ」
「なぜ、結婚?」
「結婚で、今までの歴史は、力と平和を繋いできた。古いやり方だが、この場合正解だろう?」
「……和也には、手を出さないということですか?」
「そうだ。Subも隠し通せるだろう。カリスマ同士の結婚は、誰もが疑わない。会社の宣伝くらいに思うだろ?」
「子供は?」
彼女は、声を立てて笑い出す。
「子供なら、この世には、たくさん生まれてくる。私が産まなきゃならない理由はない。遺伝子なら親族が繋ぐだろう」
清々しい笑顔の彼女は、王のようだった。
(続く)
知人の娘さん「不妊」だったから離婚したと、私に話された事があります。