(BL/ON/大宮妄想)
(8)
「ポスト……」
潤に言われて、ポストを作ろうと思った。
でも、どんなポストがいい?
「どんなのだったの? 壊れたポストは」
「木製の素朴な感じ」
「木かあ、俺が木材持って来てあげるよ」
潤は、翌日たくさんの木材を持って来てくれた。
「いい木らしいよ?」
「いい木? どんな?」
「さあ? (くすっ)……知らない」
笑って、潤は帰って行った。
ポストを作るには、多すぎる木材やら、ペンキ、金具。
潤て、いつも優しい。
そこから絵も描かずに、2日もかけて作った。
出来上がったポストは、青と黄色の可愛い感じ。
新しいポストを作りながら、祈る。
「二宮君から、手紙が来ますように」
出来上がったポストを立てて、今度は手を合わせた。
「お願いします、未来の二宮君から手紙が来ますように!」
でも、1度も手紙は来なかった。
――――――――
相葉雅紀って人は、仕事で会うんだけど、いつも友達みたいな雰囲気で。
その雰囲気を頼って、お願いしてみる。
もちろん二宮君のことだ。
一目でいいから、二宮君が見てみたい。
「えっ、なに? 大野さんてストーカーだったの?」
「違うけどさあ……その、どんな子か見てみたいんだってば」
「会えば? 連絡してあげるよ?」
「だから、その……顔が、写真が見たいんで、会いたく無いんだ」
「はあ? 変態なの?」
「なんで?」
「写真だけ見て、変なこと考えるの?」
「えーっ? 違うって」
今の二宮君に会っても、どうしようも無い。
間違うと、嫌われて未来は変わりそう。
……あのポストが、壊れたように。
なんとか、相葉くんに写真をスマホに送ってもらった。
「俺が、あげたって言わないでよ?」
相葉くんは、共犯みたいで嫌だなんて言う。
小さくて写りも悪いけど、相葉くんの写真に映り込んでいた二宮君。
「……嘘みたい」
その彼の顔は、いつか見かけた美人だった。
――――――
相葉くんの会社から帰って。
そのままソワソワしながら、急いで出かけた俺。
そして今は……。
東京ドームの周りを、彷徨うように歩いてる。
たくさんの人が行き交うのを、眺めてる。
この中には……あの彼がいるかも知れない。
必ず会えるわけでも、声を掛けられる訳でもないけど。
不思議な彼の姿を、この目で見られるかも知れないと、思うと来てしまった。
『東京ドームの中の遊園地の中の店で、同僚と仕事の打ち合わせや、食事をしていると思います。できたら、その頃の貴方に、会ってみたかった』
二宮和也という彼の手紙の言葉を、思い出しながら。
「え……っと」
相葉君に、無理言って送って貰った彼の写真を、スマホで確認する。
彼の綺麗な顔。
真っ白い肌に濡れたような瞳、小さめの唇を結んだようにした可愛い顔。
そして何度見返しても、やっぱりそれは、いつか見かけた美人だ。
1度も、会えてはいない。
会えるかどうかも分からない。
声も知らないし、探しようもないけど。
何かが教えるから。
俺たちは、必ず会えるって。
「二宮君くーんっ」
その声は突然聞こえて。
俺は、慌てて振り返った。
呼ばれた彼は、確かに写真の彼だった。
思ったより、若く見えて。
想像より、見かけた日よりも、美人だった。
俺のことを、まだ知らない彼。
「必ず、会わなくちゃ」
俺の目の前を、知らない誰かと通って行く、二宮和也くん。
どんどん、遠くなって見えなくなった。
本当に、彼がこの世に存在したことが、嬉しかった。
奇跡なら、もう始まってる。
奇跡をもっと起こすために、俺も自分の場所に向かって歩き出した。
そう、きっと……うまく行く。
(続く)
こういうジャンルのお話って、結果や結末から見るとまた迷宮に入っちゃう。
色んなパラレルワールドが、同時に生まれるから。(こことここは繋がってとか)
面白くって、答えが難しい。どこまで書くか、当時も迷いました。
ファンタジーもミステリーも100%解明すると、薄い恋のように醒めてしまう気がします。