*嵐妄想小説(O)
*吸血鬼幻想
*KAT-TUN妄想(仁亀)
*お話の全てはフィクションです。
(4)
ナルセ(後の大野智)は、カズヤを探して歩いた。
吸血鬼でも、血を与えた訳でもない子供を探すのは、難しい。
***
カズヤは、ナルセが教えた事や話した事を必死で、思い出しながら歩いていた。
『俺(ナルセ)以外を信じるな。
人も吸血鬼も、お前の敵だ。
おまえが信じていいのは、俺(ナルセ)だけ』
それは、深い意味もなく、ただのナルセの希望で、欲でしかなかった。
残酷で我儘な吸血鬼の言葉でしかない。
だが、子供の心は純粋で、真っ白だったから。
その言葉は、彼への気持ちと一緒に、心に刻まれてしまった。
『おまえが、愛していいのは、俺だけだ』
***
「あっ……」
薔薇の花束を持った女性とすれ違った。
ナルセと出会った薔薇の庭を思い出す。
キョロキョロして、デートらしい男女に、カズヤが訊ねた。
「お花……バラのお庭……行きたいの」
可愛いたずね人は、二人を驚かせたが、案内してくれるという。
「お母さんが、そこで待ってるの?」
「ナルセが、待ってるの」
保護者がいるのだろうと、その二人はカズヤを連れて歩き出した。
「可愛い子ねえ」
「本当、こんな子供が欲しいなあ」
***
それから5分ほどでナルセがその場所を通ったが、カズヤを見つけることは出来なかった。
***
薔薇がたくさん咲く庭園。
有名らしい公園は、平日のせいか誰もいなかった。
連れて来てくれた二人に、お礼を言って別れたカズヤは、ナルセを探した。
たくさんの薔薇と血の匂い。
それがあれば、きっと会えるはず。
「ナルセ……どこ?」
……血の匂い……?
歩き回って、疲れて座り込んだ頃。
振り返ると、知らない男が立っていた。
背が高く、体格の良い、整った顔で、色っぽく笑う。
吸血鬼のジンだった。
「カズヤ、見つけた」
美しい声で言って、微笑んだ。
天の使いのように美しい姿だったが、恐ろしいオーラが彼を包んでいた。
ナルセの教えが、頭を過ぎる。
「やだ……」
逃げようと、後ずさる。
「さあ、おいで?」
大きな手が、捕まえにくる。
薔薇の花の中を逃げ回る。
散って飛ぶ花びらは、夢のように綺麗で。
悪夢のように、行手を阻む。
「……捕まえた」
男の声が、最後の記憶で。
ナルセの記憶は、ジンに消されてしまう。
ただ、その教えだけが、心の奥に刻まれたまま。
カズヤは、ジンのものになった。
『俺(ナルセ)以外を信じるな。
人も吸血鬼も、お前の敵だ。
おまえが信じていいのは、俺(ナルセ)だけ』
やっと、望む子供を手に入れて、美しい魔物は消えていった。
知らずに、復讐は果たされて。
ナルセは、自分のしたことの報復を受けてしまった。
*******
ナルセは、ずっと子供を探したが、見つからず。
諦められないまま、家の庭で一人遊ぶ子供を見つけた。
「カズー……」
そう呼ばれていた。
子供が一人きりの時に、近づいた。
「だあれ?」
「おまえ……カズヤって名前なの?」
「……? ……違うよ、カズナリだよ?」
その子供が、二宮和也だった。
笑った子供は、可愛くて、寂しい気持ちが癒された。
「俺と遊ぼう?」
「うん、いいよ」
運命がまた、大きく変わり、動き出した。
***
薔薇が、教える。
美しいと悲しいは、似ているんだと。
不幸や悲劇を見つめながら、花は同じように咲く。
咲いても、散っても、たとえ枯れても。
薔薇は、運命を変えられない。
薔薇のような吸血鬼たちは、自分達の罪深さに……気が付く事は無いから。
「薔薇の教え」<end>