*嵐妄想小説(O)
*吸血鬼幻想
*KAT-TUN妄想(仁亀)
*お話の全てはフィクションです。
(3)
ナルセ(大野智)がいるとは知らずに、掃除屋(暗殺組織)で吸血鬼のジンが街を彷徨っていた。
古い友人のユウイチたちが慰めてくれたけれど、長い人生で初めての悲しい別れは、彼を打ちのめしていた。
何より、子供を殺した男が許せなかった。
殺したのは残酷さで有名な王(キング)と呼ばれるナルセで、のちに大野智と名乗る男だ。
吸血鬼は吸血鬼を憎んでしまう。
人が人を憎むように。
忘れられない悪縁は、不幸だけを呼び寄せる。
人は、それを知っていたが、吸血鬼はそのことを知らなかった。
***
目が覚めたカズヤは、ナルセがいないことに気が付くと、彼を探して外に出てしまった。
いつもなら、ホテルの部屋で待っていたのに。
別れを予感させる気持ちが、いつもと違う行動を取らせてしまう。
「ナルセ……どこ……?」
その子の美しい姿が人の目を惹き、すぐに通報されて、家に戻されてしまうことになった。
「大丈夫、お父さんとお母さんに連絡してあげるからね」
優しげな大人は、その家の本当は分からないから。
「ナルセに、会いたい」
「誰のこと?」
「ナルセっていうの」
大人たちに、子供の言葉は通じない。
***
「カズヤ……?」
ホテルに戻ったナルセは、子供を探したが、見つからない。
探して回るうちに、親切そうな暇そうな男に出会った。
噂付きで、人からよくそのネタで、小遣いを稼ぐタチの悪い男だった。
やたら綺麗な迷子を、助けたと自慢していた男の首は、その場でナルセが折って捨ててきた。
「余計なことを……」
人の善意とやらが、いつも男の邪魔をして来たから。
子供の家を目指して、ナルセは飛び出していった。
***
カズヤは、家に戻されるなり酒を飲む父親に怒鳴られて殴られて、たまらずに外へ逃げた。
「ナルセ……」
優しい彼が恋しくて、一人で駅を彷徨いていた。
駅には、たくさんの子供がいて、その中に紛れ込んだ。
少し離れて子供たちを見つめていたジンが、近くの駅員の男に尋ねた。
「あの子供たちは?」
「ああ、教会に集まってた子供たちだよ」
「教会の子供なの?」
「いや、日曜学校かな。何人かは兄弟もいるみたい」
駅員は忙しそうに去っていった。
亡くなった子供と同じくらいの子供たちだった。
「兄弟……」
可愛かった亡くなった子供の顔が浮かび、無惨な最後が思い出された。
その子供たちの中に、ずっと幼い子供がいて、一際目立っていた。
ナルセが着せた高級な服と、美しい容姿は天使みたいに可愛かった。
その子供が、他の子に名前を尋ねられて、答える声がした。
「カズヤ」
ジンは、その声を運命だと思った。
あの愛おしい子供の名前も、「カズヤ」だったから。
***
「は? カズヤ? ……知らないよ、また外で泣いてるんだろう」
ナルセがカズヤの家に行くと、酒を飲んで正気を無くした父親がそう言った。
「また……殴ったのか?」
「勝手にいなくなって、人の言いつけも守らない。いっそ死んでくれたら助かるのに」
言い終わってすぐに、男は体を捩じ切られて、殺された。
吸血鬼の本性の姿になったナルセは、執拗にその男の体を潰す。
湧き上がる怒りがおさまらなかった。
「どこに行ったんだ……カズヤ」
子供の姿は、どこにも無かった。
***
駅を探したけれど、カズヤはナルセを見つけられなかった。
仕方なく、あちこち探して歩く。
……その後ろ姿を、ジンが追っていた。