*嵐妄想小説(O)
*BL小説
*ロバ丸妄想
*仁亀妄想
*吸血鬼幻想
*お話の全てはフィクションです。
(1)〜(4)last 同時にUP
「どうしたかな……」
心配したユウイチとタツヤが、ジンの洋館を訪れた。
洋館の庭は、ずいぶん荒れていて誰かが荒らしたようだった。
そっと、洋館に足を踏み入れると、呆然と座ったまま動かないジンがいた。
「ジン?」
「ユウイチ……あれは……」
ギョッとして、タツヤが指さした。
ジンの膝には、遠目にも死んでいると分かる子供がいた。
「おい、ジン……何があった?」
子供は、ボロボロだった。
野生の動物か……吸血鬼がメチャクチャにした死体のようだった。
「少し……目を離した隙を突かれた……。あいつだった……ナルセだ」
「ええ? ナルセって……アイツは、外国に行ったんじゃあ……」
「分かんねえけど……この子を殺して、俺の前に捨てやがった……」
***
姿の見えないカズヤを探して、庭に出ると残酷に殺した子供を、足元に捨てた男が立っていた。
有名な吸血鬼で、王と呼ばれる獰猛さと残酷さでは、類のない男。
『ナルセ』と呼ばれる吸血鬼は、のちの『大野智』だ。
「おまえ……!」
驚いたジンの声にも、平然としてその男は笑った。
「なんだ、おまえのだった? ごめんごめん。可愛かったから、つい」
そう言って今度は、子供を投げて寄越した。
「カズヤ!」
ジンが、子供を抱き上げて揺するが、二度と愛しい子供は、目を覚さなかった。
「また、探せば? 可愛い子だった。楽しかったよ」
悪魔のように笑って、ジンにナイフを投げて、一瞬で去って行った。
そのナイフの柄には、天使の姿があった。
「信じられない……カズヤ……目を開けて……?」
抱きしめると、子供の首が千切れて、落ちた。
「カズヤ……!」
いつまでも、ジンの号泣する声が、森に響いていた。
***
ジンから、なんとか子供の遺体を引き剥がして、埋葬してもジンは呆然としたままだった。
こんなにも、絶望してる男を放ってもおけずに、二人で毎日世話を焼きに行った。
絶望して死ぬのは、人間だけじゃない。
吸血鬼こそ、長い人生の絶望は、致命的だった。
「ジン……」
「カズヤが、あんな風に殺されるなら……助けるんじゃなかった……あんな可哀想な……」
「仕方ないよ。そういう運命だったんだ。あの子は寿命が無かったんだよ」
慰めは、慰めにもならない。
***
彼にかける言葉も無くなった頃、しばらくジンが居なくなって、突然戻ってきた。
夕闇の中で、ジンの着ているものには、薔薇の花びらがあちこち付いていた。
「ジン! 心配してたんだぞ?」
「ごめん。でも、もう大丈夫だ、カズヤが帰って来たから」
「え?」
その美しい姿は、一生忘れられない。
その狂った様も。
半ばジンの心は、壊れて歪んでしまっていた。
それが、完全に壊れる前の姿だった。
ジンの腕の中には、あの死んだ少年よりも、幼い男の子が眠っていた。
その子がのちの『亀梨和也』だった。
続く。
大野さん担ごめんね。
この話の裏には、大野さんも悲しいことがあって。
その心が歪んでいた。
だから歪んで狂ったジンくんに、引き寄せられてしまった。
因縁は続いていく。
まだ書いていない裏のお話です。
(『薔薇の教え』とは違うお話になります)