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(7)〜(12)last 同時にUP

 

 

第12章(10)「楽園に咲く薔薇」

 

またバタバタと音がして、玄関からユウイチたちが、この家へ入って来た。

 

 

「ニノ!」

 

悲鳴のような声をあげて、ニノに縋ったのは、ユウイチに連れられた翔だった。

 

「カズ!」

 

潤も、ニノのそばに駆け寄る。

 

 

 

 

「翔ちゃん?」

 

大野がいるのも、気が付かない翔は、ニノを見て泣いている。

 

「ニノ! 死んじゃダメだよ!」

 

「カズ!」

 

潤もどうしていいか分からない。

 

その様子を大野は、静かに見ている。

 

浅間と違って、ニノに変化は無いように見えた。

 

(あの注射は? なんだったんだ?)

 

 

 

 

 

「逃げてったんだろ? 浅間を襲った男……誰なんだ?」

 

タツヤが大野に聞くが、返事はない。

 

浅間の様子を見て、ユウイチが難しい顔をする。

 

「……危ないぞ。もう保たない」

 

 

 

 

 

 

 

大野は、戻ってくると浅間を仰向けにして、声を掛ける。

 

「……どうして欲しい?」

 

浅間はゆっくり目を開けると、か細い声でいう。

 

「あの子を……頼む。あなたの血をやってくれ。今なら間に合うかもしれない」

 

「……ニノは、灰になりたいって言ってたぞ?」

 

「……あの子の望みは、違うだろう? ……わからないのか……早く……」

 

 

 

大野は分かったと言うと、翔と潤を押し退けて、ユウイチへ下がってろ指示する。

 

「……下がって。黙ってるんだ」

 

ユウイチの言葉に、二人は下がって見つめるけれど。

 

 

「え?」

 

 

大野は、眠るニノの首に噛み付いて、息が止まるまで血を吸い上げた。

 

それを見て、翔と潤は悲鳴をあげた。

 

「大野さん!?」

 

「カズ!」

 

大野に近づこうとする二人を、ユウイチとタツヤが抑えて止めた。

 

 

 

 

息が止まり。冷たくなった体を抱くと、大野は自分の指を牙で噛む。

 

その吹き出した血を、少しずつ口の中へ流し込む。

 

 

 

 

長い、長い時間、そうしていた。

 

浅間も意識がなくなり、ゆっくり呼吸をしているが虫の息だ。

 

「ニノ……」

 

そのまま、血の儀式は終わり、止まったままの呼吸は動かない。

 

 

 

「ダメか」

 

ユウイチがつぶやいた。

 

 

 

 

 

その時、目を開けた浅間が呼んだ。

 

 

「ニノ……おいで」

 

 

 

ドクンっと心臓の音がして、ニノが仰け反って目を開けた。

 

「ニノ?」

 

「カズ?」

 

血まみれで、起き上がったニノが、ゆっくり倒れた浅間のそばへ行く。

 

「ニノ……良かった」

 

浅間が微笑んで、倒れたままで、ニノを胸に抱く。

 

 

「……浅間さん……」

 

ぼんやりしたまま、ニノが浅間の声を待つ。

 

「ニノ……忘れないで」

 

ニノの頭が、ずるっと沈んで顔をあげると、浅間は音も無く灰になっていくところだった。

霧が消えるように、スルスルと灰に変わる。

 

「……やだ、浅間さん……!」

 

ニノがその体を掴もうとするが、もう灰だけだった。

 

息を呑んで、皆が見つめる中で、ニノが膝立ちで灰になった浅間を見つめたまま、固まっている。

 

 

 

 

「ニノ!」

 

誰より早く翔が、ニノを後ろから抱きしめた。

 

「嘘っ……なんで? ……助けてあげてって、言ったのに……!」

 

ニノは悲鳴をあげると、そのまま灰に変わった浅間へ縋って泣き崩れた。

 

その体を抱きしめたままの翔が、泣きながら謝っていた。

 

「ごめん! ごめんね! ニノ、いつもごめん!」

 

 

 

大野が、ただ見つめている。

 

 

 

ユウイチが、灰にならないニノを不思議そうに見ていう。

 

「あの子……人形じゃ、吸血鬼じゃないのか?」

 

「吸血鬼だよ。でも、もう浅間の人形じゃなくなった」

 

大野は、嬉しそうに言うと笑った。

 

 

 

「もう、俺のモノになったよ。いや、元から俺のだけど」

 

「は?」

 

「絶対に灰になんかに、してやらない」

 

 

クスクス楽しそうに笑う大野は、ユウイチとタツヤから見れば、薄恐ろしい。

人間に随分近くなったかと見えたが、どこまでも吸血鬼だ。

 

暗殺者のユウイチやタツヤの方が、ずっと人に近い感性を持っている。

大野は、本質は昔とたいして変わってないようだった。

 

 

 

「やっぱり……アンタって……残酷だよな」

 

タツヤがつぶやいた。

 

大野は、気にも止めずに、笑っている。

 

噂通りだと、ユウイチも思った。