(10)〜(12)同時UP
⭐️注:お山編もあります。
*嵐妄想小説
*BL小説
*SFファンタジー
*大宮妄想
*お話の全てはフィクションです。
(12)
海のそばの一軒家のアトリエ。
「どうぞ、お茶でも淹れますから。好きに座ってください」
他人行儀な大野さんに、悲しかったけど。
「はい、ありがとうございます」
俺は、営業スマイルで椅子に座る。
アトリエは、変わらない。
窓からは海が見えて、風が気持ち良く入ってくる。
でも、記憶とは少しづつ違う。
部屋の隅に、あの、描きかけの絵が有った。
「……え? これは……」
その絵は、完成していた。
「その絵を見せようと思って、来てもらったんだ」
「大野さん……?」
その絵に描かれていたのは、俺だった。
絵の中に、スーツの仕事中の姿の俺がいた。
「ずっと、見てたんだ。やっと会えたね」
「どういうこと……?」
彼は、いたずらっ子みたいに笑う。
アトリエの机の引き出しから、彼が手紙を出した。
俺が出そうとして、出せなかった、事故を教える手紙。
「それ……」
「ずっと、会うのを我慢したんだ。運命を変えたくて。2021年なら、無事に会えるかもって」
「本当……? 俺のこと分かるの? 知ってるの?」
震えて、上手く声も出ない俺を、優しく抱きしめてくれた。
「ねえ、俺は君を信じたよ。だから、俺のこれから話す奇跡のことも、信じてくれる? ……ニノ」
「大野さん……っ!」
抱き合って、運命が変わった事を実感した。
「会いたかったよ……ずっと」
「俺も……もう会えないと思った……」
奇跡の理由を聞きたかったけど、そのまま口付けられて愛されて。
「まずは、愛させて。ずっとお預けだったからね」
「……俺も……いっぱい愛して欲しい……」
……あの日に消えた色が、戻って来た。
深い夜の帷(とばり)が、下りる。
目を瞑って想うのは、ただ貴方のこと。
どこからか……流れてくる音楽のように。
溢れてくるこの気持ち。
この気持ちも、音楽のよう。
また会えた貴方を、ただ想う。
ただ、愛して愛されて。
I wish you nothing but happiness.
「夜想曲(ノクターン)」<end>
続編「彼誰時(かわたれどき)」へ続く