*嵐妄想小説
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*大宮妄想(+翔くん)
*お話の全てはフィクションです。
*恋するアンドロイド・シーズン2「おもちゃの天使」
(7)
新しい買い手の男に、壊されてしまった可哀想なニノ。
ニノは、研究所の奥に行ってしまって、俺は一人応接室に残された。
「ニノ……可哀想だ……」
ニノから逃げた俺のせいだと思うと辛い。
可愛い顔と声が、思い出されて……。
俺には、何も出来ることが無いんだ。
ただ、窓の外を眺めて待っていた。
2時間もした頃、櫻井さんが部屋に入って来た。
「大野さん、お疲れでしょう? 大丈夫ですか?」
もっと疲れてるはずの人が、微笑んで言う。
「いいえ、大丈夫です。ニノは……」
「体は、すぐ直せます。問題は記憶です。残っているかは起動しないと分かりません。完全に壊れてるとなったら、新しい頭脳に変えますから」
「変えたら……」
「別人です。残念ですが。あの子は死んだ……と言う事になります」
「……」
言葉も出ない俺に、櫻井さんは話し出した。
「これは、ここの人間は誰も知りませんが……私はアンドロイドです」
「え?!」
「秘密ですよ? この世で1番人に近いのが、私です」
「誰が……? 作ったんですか?」
「私の伴侶のお母様です。彼女はもう亡くなりましたから、進化は自分自身でおこなって来ました。彼女がそう作ったんです」
「人にしか見えませんよ?」
櫻井さんは、嬉しそうに笑った。
「ええ、そう言われます。この私も昔、1度死にかけました。その時、声をかけ続けてくれたのが伴侶なんです」
「それは、人?」
「はい、彼は人ですが、私たちは愛し合って伴侶になりました」
「俺も……ニノが好きです」
そう言ったら、ぽろぽと涙がこぼれて止まらなくなった。
「分かっています、あの子もあなたを愛していますから」
「え……?」
「私の生んだ、最新作のアンドロイドがニノです。今までは、愛されて愛するようなシステムでした。でも変えたんです。アンドロイドから愛せるように」
櫻井さんは、ニコニコと誇らしげだけど、俺は、よく分からない。
「あなたが良い方なのは、すぐ分かりましたから、ニノを預けようと思って勧めたんです」
「でも、好きになったかなんて、分からないんじゃ……」
「ニノは、あなたになんて言ってました? 『愛してます』って言いましたか?」
「いいえ、好きだって、そればかり……」
「それが、証拠なんです。主人に『愛してる』と最初に言えば、それはマニュアル通りの返事でした」
「好きは……」
「あの子が貴方を選んだなら、好きだって言っているはずです。ここ日本は、愛してるって言わない事が多いでしょう?」
「そうかも……でも、そんなこと……」
ニノは、本当に俺が好き?
「初めて会った日を覚えていますか? 起動したら、あの子は恥ずかしそうにしたでしょう?」
覚えてる、恥ずかしそうな顔のニノは可愛かったから。
「あの子が、貴方を気に入ったら出る表情なんですよ」
櫻井さんは、穏やかにそう言って俺の手を、両手で握ってくれた。
「あの子を生き返らせてあげて下さい。貴方が」
俺は、また涙が溢れた。
なんて事なんだろう。
好きだって言ってくれた気持ちが、分かっていないのは俺だった。
アンドロイドの気持ちを信じていなかった。
いつまでも、機械だとオモチャだと、思い込んで。
「はい……必ず」
俺は、ニノを生き返らせる。
俺が、ちゃんと愛さなきゃ、生き返らないんだ。
ニノ、俺の声が届きますように。
神様に祈るのも、初めてだ。
そして、きっと、これ以外の願いなんて、一生ないと思った。
続く