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*お話の全てはフィクションです。

 

 

(4)仔猫とミルク

 

 

ある日、仔猫が人間に変身した。

 

すごいイケメンで、色っぽく笑うし、自分よりも背も高い。

 

もうもう……全部が、信じられないし。

 

何もかも、気に入らない。

 

…………仔猫の主人のニノは、機嫌が悪かった。

 

 

 

 

「ニノ、俺が料理してやろうか?」

 

今も、嬉しそうに元仔猫だった男は、キッチンにいる。

 

「なんで、猫が料理できるの?」

 

「したことないけど。簡単そうだった、さっきテレビで見たよ」

 

「テレビ……。もしかしてなんとかクッキングとかいう番組?」

 

「うん、3分て言ってたよ?」

 

「それは……無理だから。何が作りたいの?」

 

 

 

そうなの? と、男は嬉しそうに笑う。

 

「ニノの好きなもの」

 

恋人なら満点の返事をする男。

 

仔猫のご飯なら、何度も作ったけど。

 

仔猫に(元仔猫の男)作ってあげようかと言われるなんて。

 

 

 

今日は、頭が痛くて、大学も行かなかった。

 

(泣きすぎたし、ショックもあったし)

 

いつもなら、留守番の男は、そのせいか嬉しそうだ。

 

 

 

「ねえ、何なら外で食べようよ」

 

「どこ? ……ってお店とか、行ったことあるの?」

 

「うん。遊んだ人が、いつでもおいでって言ってた」

 

「遊んだ……」

 

一気に機嫌がさらに悪くなったニノを、仔猫だったまーは、気にすることもない。

 

 

 

 

 

ニノが予想した通りの美人が、オーナーのお店。

 

素敵なお酒や料理がいっぱいだ。

 

客も、美人にイケメンで、垢抜けた人が多い。

 

 

 

「あら、まー君。やっと来たわね?」

 

オーナーの彼女が、まーに駆け寄ってきた。

 

「うん、何か美味しいもの食べたいな」

 

「良いわよ。たくさん食べてって? あら、可愛い男の子を連れてるのね?」

 

可愛い……そう言われて、ニノは気分が悪かった。

 

子供っぽいと思ってるんだろっと、心の中で文句を言う。

 

 

 

「ああ、俺の大切な人」

 

「まあ、惚気るの? 貴方らしいわねえ」

 

美人オーナーは、ニノに微笑むと、店の奥に消えた。

 

まーは、ニノにメニューを嬉しそうに、見せてくる。

 

「ねえ。ニノは何が好き?」

 

「全部キライ……」

 

「えっ? でも、ほら好きそうじゃない? このハンバーグとか?」

 

「もう、嫌いっ。帰るっ。まーは、ここでゆっくり食べてよ」

 

「ええ?」

 

ニノは、子供のように膨れた顔で、店を出て行った。

 

「待って! ニノ!」

 

 

 

 

 

 

まーの声にも、振り返らずに家へ帰って、ベッドに潜り込む。

 

(キライ、嫌い……っ!)

 

色々、考えてしまう。

 

遊ぶって?。

 

あんな美人と?。

 

ついこの間まで、可愛い仔猫だったのに。

 

 

 

……自分だけの仔猫だったのに。

 

 

 

「まーのバカっ!」

 

「何がバカ? ねえ、教えて?」

 

いきなりガバッと、布団を剥がされて、引き摺り出される。

 

「うわわわ……」

 

「ほら、おいで? ニノって猫みたいっ……」

 

まーがそう言って、ニノを抱き上げる。

 

「お……お……ろして! 嫌い!」

 

「嘘つき。俺が好きでしょ?」

 

嬉しそうに笑って、抱きしめる。

 

子供を宥めるような優しい声と表情に、ニノはちょっと恥ずかしくなった。

 

 

 

(こっちが……子供みたいじゃん……)

 

「ふふふ……顔、真っ赤じゃん? 可愛い」

 

「ち……違うもんっ……は、離してってば!」

 

「はいはい。ちょっと待っておいで?」

 

「へ……?」

 

まーは、ニノを優しくベッドに座らせると、キッチンに行ってしまう。

 

 

 

「……どうかしたの?」

 

戻って来たまーは、ホットミルクを二つ持って来た。

 

「はい、ミルク。好きでしょ?」

 

カップを受け取って、ドキドキする。

 

 

 

「まーが……作ってくれたの……?」

 

「うん、これは、いつもしてたからね。一緒に飲みたかったんだ」

 

「……ありがと」

 

ふふって笑って、まーもニノの隣に座って、一緒にミルクを飲み始めた。

 

 

 

猫舌だから、ニノは、なかなか飲めない。

 

ふうふうしてると、まーが笑う。

 

「猫舌だよね。ニノって猫だね」

 

「まーは、なんで猫舌じゃないの?」

 

「ふふ……今は、人間だからねえ」

 

「……変なの」

 

まーは、何が嬉しいのか、また笑ってカップを置くと、そっと肩を抱いてくれて囁いた。

 

 

 

「……俺とあの美人とは、何もないから。俺はニノのだからね?」

 

「えっ? ……」

 

「安心した? 顔、嬉しそうだよ?」

 

「なっ……違うもん!」

 

「ニノの機嫌が、治って良かった」

 

「…………」

 

 

 

恥ずかしすぎて、カップを置いて、他所を向こうとする可愛い仔猫を、色っぽい雄猫が抱きしめた。

 

「ニノ、可愛い。大好き」

 

「ち……違うってばっ///」

 

 

 

 

 

……しばらく、ミルクは飲めそうに無いようだ。

 

 

 

 

「仔猫にミルク」<end>

仔猫だった彼・まーX仔猫のような主人・ニノ