*嵐妄想小説

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*大宮妄想(+翔くん)

*お話の全てはフィクションです。

 

*恋するアンドロイド・シーズン2「おもちゃの天使」

 





 

(6)

 

 消えたニノを探すために、櫻井さん達と新しい買い手の家へ行った。

 

 

「いきなり来て、家を捜索するなんて、俺を誰だと思ってるんだ!」

 

ニノの買い手は、そう言って激怒したが、櫻井さんの方が偉いらしい。

 

「では。警察に通報して法的に捜索及び告訴しますけれど? 宜しいでしょうか? 貴方を紹介した方の承諾もありますが?」

 

 

 

 

それを呆気に取られて見ていると、櫻井さんの部下らしい方が、そっと小さな声で教えてくれた。

 

「うちの会社は、各国の要人や武器を扱う機関と取引してますからね? 逆らえませんよ」

 

温和そうに見えた男性は、笑顔で楽しそうに言った。

 

(それは……怖いことじゃん。なんで、誇らしげに言うんだろ)

 

 

黙り込んだ男を押し退けて、慣れた風な研究所の人たちが家に入って行く。

 

櫻井さんはスマホで、GPSらしいものを見ながら、大きな家の中を早足で進む。

 

 

 

「櫻井さん……居場所がわかるんですか?」

 

「電源を落とそうと、多少壊れようとも、居場所を示すGPSが付けてあります。それがこの家をずっと指していたんですが。ただ……あなたに電話する少し前、消えてしまったんです」

 

「消えた……」

 

「完全に破壊されると、機能しませんから」

 

「破壊……」

 

「残念ながら、よくあるケースです。気に入らない場合、数億円を出して買おうが、壊すような買い手がいるんです」

 

それは……死んだってこと……?

 

驚きと恐怖が襲ってきて、体が震える。

 

 

 

「代金を払いたくないから、居なくなったという人も多いんです」

 

「じゃあ……ニノは……」

 

壊されたかもしれないってこと?

 

そうだよ、あんなに素直な従順な子。

 

主人に逆らう筈がない。

 

誰かの悪意を感じる。

 

いつだって、俺の言いなりで……可愛かった。

 

 

 

「探しましょう。まだ時間がそう経っていません。修理が間に合うかも知れませんから」

 

櫻井さんが、どんどん家の中を突き進む。

 

「あの子の記憶は、消えていないはずなんです。声を出して名前を呼んでください。再起動するかも知れません」

 

え? どういうこと?

 

 

「俺の声で……?」

 

「はい、あの子は会った瞬間から、あなたが好きですから」

 

「それは……どういう……?」

 

「そのままの意味です」

 

「え……?」

 

 

その時、奥の部屋から呼ぶ声がした。

 

「いました!」

 

返事もできないまま、走って部屋に入ると、めちゃくちゃに壊されたアンドロイドがいた。

 

 

 

「ニノ……!」

 

半分残った顔だけが、ニノだと分かったけれど、他は金属や皮膚らしい物が残っただけの塊だった。

 

 

 

「すぐに、研究所へ!」

 

櫻井さんたちが、バタバタとニノの体を回収して行くのを俺は見てるしか無かった。

 

それを見ながら、この家の主人はバツが悪そうに、言葉を吐き捨てた。

 

 

 

「人じゃないし……俺が買った機械をどうしようと勝手だろう?」

 

「良い加減にしろ!」

 

思わず怒鳴って殴ろうとする俺の手を、櫻井さんが掴んで止める。

 

 

「大丈夫です。必ず報いは受けさせますから。あなたの手は汚さないでください」

 

 

 

いつの間にか、家の中には警察官らしい人たちが、たくさん入って来ていた。

 

「私たちの会社は、国の財産でもあります。国の財産を壊した事になりますから。この件は重いですよ?」

 

男は項垂れたまま、目の前で警察に連れて行かれた。

 

 

 

「櫻井さん……ニノは……」

 

「回復させるつもりですが……」

 

それ以上は、櫻井さんは言わなかった。

 

 

 

可愛かった顔も、綺麗で柔らかかった体も、機械の塊になっていた。

 

ニノ、ごめん。

 

俺が返品なんかしたから。

 

 

 

俺が……お前から逃げたからだ。