*嵐妄想小説

*お山妄想

*BL小説

*お話の全てはフィクションです。

 

 

(8)

 

空港で、慌ただしくミンと別れた。

 

空には、ミンの乗っているはずの飛行機が飛んでいく。

 

「みんな……お別れなのかな」

 

思わずため息が出た。

 

 

 

******

 

 

 

時間ギリギリまでミンと、櫻井さんを待ったけれど来なかった。

 

「智さん、ありがとう。ずっと僕の日本の兄ね」

 

「ああ。また日本来る時は、連絡しろよ?」

 

「はい。でも……櫻井さん来なかったね」

 

「そうだな。仕方ないよ」

 

「あ……待って」

 

ミンは、カバンからノートを出すと、何か書いている。

 

「はい、櫻井さんへ渡して」

 

「何? 手紙?」

 

「はい。智さんと会ってあげてねって書いた」

 

「ば、ばか! そんなこと書くなよ! は、恥ずかしいだろ」

 

「……わかった。このノート持っていく。櫻井さんへは渡さなくて良い」

 

「わわわ。ほ、他のこと書けよ! ほら、お礼とかさ///」

 

「櫻井さんへお礼は言った。電話だけど。難しいなあ。なんて書こうかな」

 

「困ったら、俺に電話しろ……とか」

 

「僕? 僕、帰国したら電話来ても……」

 

「違う! この俺だっ」

 

「ええ……。それって、ずるくない?」

 

「良いから! すぐ書け!」

 

ノートを書いてくれたミンは、笑顔で飛行機に向かって行った。

 

 

 

 

いつも、一緒にいたから。

 

姿が見えなくなってから、急に寂しくなった。

 

「……櫻井さん、もう来ないな」

 

飛行機を見送っても、しばらく動けなかった。

 

ミンもいなくなって。

 

櫻井さんも来ない。

 

……俺って、ひとりなんだな。

 

寂しいって、こんな気持ちなのか。

 

そう思った。

 

 

 

 

******

 

 

 

「……帰ろう」

 

トボトボ歩いていると、声がした。

 

 

 

「待って! ミン君のお兄さん!」

 

 

 

 

「……?」

 

この声。

 

まさか。

 

「大野さん! 待ってください!」

 

振り返るのと、櫻井さんが俺に追いつくのは同時だった。

 

 

 

 

「……櫻井さん?」

 

走ってきた彼は、顔が真っ赤でゼエゼエ言ってた。

 

俺の両肩に、彼の手が乗ってる。

 

「ご、ごめんなさい! 遅くなって! ミン君は?」

 

「……もう飛行機に乗って……」

 

そこまでしか言葉にならなかった。

 

 

 

「大野さん……?」

 

櫻井さんは、驚いた顔で。

 

「……ごめんなさい」

 

そう言うと、俺を抱きしめてくれた。

 

「櫻井さん……?」

 

ギュッと、さらにキツく抱きしめてくれる。

 

「……兄弟のような方と……お別れは寂しいですよね。遅れてごめんなさい。一人にしてしまって……」

 

「いや、俺は……」

 

「一人で泣かせてしまって、ごめんなさい」

 

「え……あの……」

 

「……俺、いつでもいます。ミンくんの代わりに、傍に居ますから。もう悲しまないで下さい」

 

「……」

 

 

 

……知らなかった。

 

俺、泣いてたみたい。

 

櫻井さんの温かさに、今度は違う涙が溢れた。

 

 

 

「……ありがと」

 

それだけ言うのが、やっとだったんだ。

 

 

 

天使が見つけてくれたような。

 

そんな気がする。

 

奇跡のような瞬間だった。