*嵐妄想小説
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*吸血鬼・ダークファンタジー
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*お話の全てはフィクションです。
第6章
「薔薇とチョコレートと白い薔薇の蕾」
(8)
パリを出る用意のために、出かけた浅間の留守中に、ホテルのニノあてに電話がくる。
ジュンの店のオーナーのアデルだった。
「ジュンが、いなくなったのよ。貴方は知らない? 昨日までは店で元気にしていたんだけど……」
「え? どうして?」
「分からないけど、昨日、あなたへ会いに行くと言って戻ってないの」
昨日は、1日中ホテルで休んでいたが、ジュンは来なかった。
しかし、狙われていると浅間と茜も言っていた。
彼がニノといたのを見た者が、拐ったかも知れない。
すぐに、探しに行きたかった。
けれど。
決して出てはいけないと、約束させられていた。
もう、浅間を裏切れない。
「ごめんなさい。僕には何もできない……」
そこまで話したところで、後ろから誰かに捕まった。
息を止めるように、口を塞がれて、意識が無くなっていく。
ドアや窓も閉まっていたが、この部屋の鍵を持つ支配人がニノを連れ去っていった。
この支配人の主人は、悪評高い、吸血鬼の男だった。
それは、アデルの仕事のパートナーでもある。
高級菓子店は表向きで、本業は薬で儲ける方法をアデルに教え、人が壊れていくのを見物するのが趣味の吸血鬼だ。
浅間とも、アデルは揉めた過去がある。
悪趣味な薬のパーティーを、浅間に潰されたことを根に持っていた。
そこから、薬の商売ができなかった。
浅間は、人間が不幸になることへ興味はなかったが、パーティーの参加者が、浅間に喧嘩を売ってしまった。
面倒くさくなったその男を、浅間が警察に突き出した事で、アデルは、パーティーも薬の買い付け先も失ってしまった。
幸い、アデルの身元はバレなかったが、困ることに変わりなかった。
誰より、アデル自身が、薬が無いと生きられなくなっていたからだ。
苦労して、薬の商売がうまくいきだした頃、浅間がパリに戻ってきた。
浅間の強さを誰より知っているはずの吸血鬼は、自分の手を下さずにアデルを唆す。
アデルがどうなろうと、浅間がどうなろうと、暇潰しの遊びになる。
吸血鬼が、薬でおかしくなった人間を遊びに使うのは、よく聞く話だった。
高級菓子店では得られない額の報酬で、アデルはジュンも恋人にして甘やかす事ができた。
しかし、最近、知り合った少年を気に入って、アデルにそっけなくなったジュンへ憎しみがわく。
実際は、薬でおかしくなって行くアデルに、愛想をつかし始めていただけだ。
そんな事には、気づかないフリをして、どうしようかと思っていると、その少年が浅間のものだと知った。
更に許せなかった。
自業自得という言葉を、アデルは知らなかった。
上手くいかなくなるのは、全部浅間のせいだと思う事にした。
――結局、自分を滅ぼすだけだとは、考えなかった。
******
ニノが攫われたことは、パリの吸血鬼にすぐ知れ渡り。
興味津々で皆が事の成り行きを見守っていた。
皆、長すぎる寿命に飽きていた。揉め事こそが、娯楽だ。
アデルの仕事のパートナーも、拐ったニノをアデルへ引き渡すと、連絡がつかなくなった。
浅間の報復の凄さは、有名だったからだ。
******
ニノが目を覚ますと、目の前にジュンが心配そうに見つめていた。
どこかのアパートの部屋らしかった。
「ニノ、ごめん。君まで巻き込んで……」
「どうなってるの?」
「アデルが、君を拐ったらしい。俺は、アデルに別れ話をしたら、ここに閉じ込められた」
「そうなんだ。でも浅間さんの知り合いなのに……」
「そうだよね。でもアデルは最近、薬のやりすぎでおかしいんだよ。だから別れようとしたんだけど」
「……ジュンは、どうするの? 別れてどうする気だったの?」
ニノが、心配そうに聞いた。ジュンは、考えながら答える。
「日本で、店を出したいんだ。まあ、すぐは無理でもね。自分でしっかりしようと思ってる」
「すごいね。でも急にどうして、変わったの?」
ニコッと笑って彼が言う。
「ニノに会ってね、思ったんだ。ちゃんとしようって。ニノみたいな子供に良くないって思われる事してる自分が、嫌だなあってね。」
きっかけは、そうかも知れないが、心のどこかでずっと思っていたのだろう。
ニノが、その心の奥のスイッチを押す手伝いをしたのだった。
「そう……じゃあ、早くここから出ないと……」
その時、アデルが息を切らしながら、扉を壊しそうな勢いで入って来た。
「アデル……どうしたの? 薬がきれたの?」
顔色も悪く、鬼のような形相だった。
不安から薬を大量にその体に注いだようだった。
ジュンを閉じ込め、ニノを連れてきた、たくさんいたはずの吸血鬼に借りた部下は、一人も残っていなかった。
「ジュン……。その子を殺して」
+裏話+
アデルのような人が、1番やばい。
本人は、その悪意も考えも、
外にバレていないと思ってる。
皆にバレてるのに、バレていないと思ってる
不○とか泥○してる人と同じ感じ。
このニノちゃんの勘は鋭かった。
だから、こんな人(アデル)は、
すぐ利用されて捨てられる。
相手の嘘が見抜けないから。
嘘つく人は嘘に弱い。
でも。
騙される人が悪いとは、私は思わない。
どうやって言い訳しても騙す人が悪い。
だから結局、吸血鬼が悪いんだもん。
そんなことを考えながら、
アデルを書いた思い出があります。
アデルは多い。
アデルを騙す人はもっと多い。
人って怖い。