*嵐妄想小説

*BL小説

*吸血鬼・ダークファンタジー

*末ズ妄想・大宮妄想

*お話の全てはフィクションです。

 

 

第6章

「薔薇とチョコレートと白い薔薇の蕾」

 

 

(6)

 

純粋で、恐ろしいまでの執着。

 

そんな大野にも似た、女吸血鬼を愛した茜。

 

彼女の光る目は、あの日の大野を思い出させた。

 

大野の手から里見に攫われたニノを、自分が大野であるかのように怒る。

 

 

 

「でも、大丈夫。ちゃんと新しい人が、出来たみたいだし。もう寂しく無いはずだよ?」

 

そう。

 

寂しい吸血鬼の大野のそばには、今はあの人(翔)がいるから。

 

自分は必要ないのだと、自分に言い聞かせる。

 

 

 

だが茜は立ち上がって、さらに怒り出した。

 

「あなた、悔しくないの? あなたの大事な人でしょう?!」

 

「え。でも、浅間さんと殺し合いになって、大野さんが死ぬより、ずっと良いよ」

 

茜は、苦しそうな顔をして座り直した。

 

 

 

 

「……あなたって、苦労したのね。大野っていうのね、その人。ヒルダが言ってた。あなたから別の血の匂いがするって」

 

「? そうなの? でも浅間さんの血しか貰ってないよ?」

 

彼女は、しばらく考えて、こう言った。

 

「あなた、大野とは何年の付き合いなの?」

 

「3歳から……10年以上かな」

 

「あら、私も10年以上よ? 私も血は飲んでるのよ? あなたも知らないうちに、血を貰ってると思うわ。それがもう身体中にいるのよ」

 

「そうなのかな……」

 

「きっとそうよ、他の吸血鬼に盗られないように、匂いを付けるんですって。でも、浅間は余程だったのね。それとも性格が悪いからかしら? 盗みたがるのがたまにいるらしいわ」

 

彼女は、もう心はほとんど吸血鬼のようだった。

 

吸血鬼らしくないニノと、人間のまま心は吸血鬼になったような少女。

 

 

 

 

少女は、この後も、ニノにしか言えない色々な話をした。

 

何より、彼女はヒルダと運命を共にしたいと願っているようだ。

 

 

 

「私の気持ちは、勘違いだって言われるの。血を吸われるとその相手を好きになるだけだって。ひどいと思わない?」

 

「血を吸われると……。でも好きに違いは無いと思うよ」

 

大野のことを思った。

浅間のモノになっても、大野のことは変わらずに好きだからだ。

 

「そうよね? 勝手に好きにしといて、難癖付けるなんてひどいわ」

 

「でも、洗礼のあとは、普通は記憶もなくなるんだって。感情も無くなるって言ってたよ」

 

彼女は、ニノに詰め寄ると真剣に言った。

 

「そう、だから私は、貴方のようになりたくて。みんな、あなたのような人形じゃない家族を、欲しがって追いかけてるのよ」

 

彼女は、さらに瞬きもせずに、迫るように話す。

 

「だからヒルダ以外の吸血鬼はダメよ? 捕まらないようにね? 最後は殺されるだけだと思うわ。吸血鬼は、自分の勝手に盗んで、上手くいかなかったら殺してしまう。ちゃんと、浅間のそばにいるのよ?」

 

ニノは、少し考えて、思い切って言ってみる。

 

「あの……僕のようだったら、すぐ死ぬかもしれないよ? 吸血鬼なのにすぐ倒れるし」

 

「そうなの? それで、あなたは大丈夫? でも良いのよ、だってヒルダはもうすぐ死ぬんだから」

 

ニッコリ笑って、少女は簡単に言う。

 

「一緒に死ねたら、それで本望なんだから、寿命はいらないの」

 

「そんな……」

 

「ヒルダがいない世界で生きてなんていたくないのよ。いらないの」

 

大野の言ったことと、少女は同じことを言う。

 

再会して、気が狂ったような大野の、言った声が聞こえて来る。

 

大野に首を絞められながら、確かに聞こえた。

 

 

 

「うん、わかってるよ。だから俺に『殺してもらいに帰ってきた』んだろ?」

 

「ニノは俺だけしか、いらないんだもん。俺のいない世界で生きてたくないよね?」

 

「ニノ、早くこうしてあげたかった。遅くなってごめんな」

 

 

 

 

茜の言う言葉はそのまま大野と同じ意味で。

 

きっと同じ気持ちなんだろう。

 

……それなら、それに答えてあげなかった自分は酷いんじゃ無いだろうか。

 

 

 

 

「僕、やっぱり殺されてあげたほうが、良かったかも」

 

「あら、そうじゃないわ。あなたが殺されたら、浅間が今度は可哀想じゃないの」

 

これから、死ぬ運命を望んでいるとは思えない明るい顔で、彼女はニノを励ますのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

+裏話+

 

久しぶりに、この第6章を読み返して冷や汗が。

そう言えば、こんなお話だったなあ。

 

書いた当時は、そんなに残酷に思ってなくて。

でも、皆が残酷な運命の話だなあって。

 

茜ちゃんとニノちゃん。

吸血鬼に攫われて愛されて。

その吸血鬼を愛して生きていく。

 

この章ではニノちゃんと出会った、

潤くんに似た彼が人生を変えていきます。

 

まだ、この後も長く続くとは

考えていなかったですね。

 

この次の章くらいから

「やばいかも」って感じました。

終わる気配がなくなっていくなあって。

 

浅間さんに愛される

ニノちゃんのお話を書くつもりが。

(愛されはしてるんですけれど^^;)

はっきり吸血鬼と人のお話が深くなっていく。

吸血鬼の残酷さ・不思議さと

人の違いを描き始めて。

 

読み返したり、昔のファイルを覗くと。

不思議に第1章からちゃんと、

伏線が無意識に張られていて。

「ああ、出会った時から決まってたのかも」

自分が描いてるんですが、

運命的なものを感じました。

そして、膨らんだ話に似合った登場人物が増えて。

(この先も増えていく)

当時もpixivで投稿しながら不思議な気持ちでした。

 

初稿当時。

これは、誰に向かって書いてるんだろう?

迷子になっちゃ困るなあって思ってました。

最初は、BLに書くつもりは、

あまりなかったんです。

だから、そう言うシーンも、

最初はほぼ書きませんでした。

 

自分と違う世界・自分と違う種類の人。

そんな人と寄り添っていく為には?

がテーマの一つに。

この世は人間だけのものじゃ

ありませんもんね。

 

長く苦しんでいる人々の求めた答えを

探しているのは

相葉君。

 

みんなの運命を変えて幸せへ

進もうとするのが

翔くん。

 

運命に飲み込まれて流されながら、

負けないのがニノちゃん。

 

そんなニノちゃんの全てを受け止めていく覚悟の

心優しい潤君。

 

大野さんは、この嵐のような運命の中心です。

 

 

 

思わぬ心の深い場所から、

色々外へ出てきた。

 

そんな気持ちで書いているシリーズです。

今は完結編も止まっていますが、

そのうち同時進行も考えています。

(他を先に終わらせようかなとか迷います^^;)

 

妄想のお話には向かないシリーズですが。

ここからも頑張って書きたいと思います。

(掲載するのに結構修正加筆して時間がかかって)

 

幸せなラスト・シーンを考えていますから。

早くその場面を描きたいです。

 

いつも読んで下さってありがとうございます♡