*嵐妄想小説

*BL小説

*お山妄想

*お話の全てはフィクションです。

 

 

(2)

 

 とんでもなくガラの悪い地域の小綺麗なクリーニング屋。

 

友達になった外国人のミンのバイト先だ。

 

俺も初めて行く場所で。

 

ちょっと緊張しつつ店に入った。

 

バイトを休めないっていうから、来られないミンの代打が俺なんだ。

 

 

 

 

 

「誰だ? ミンはどうした?」

 

「すみません、代理で来ました。学校関係の急用らしいです。今日だけ俺を代わりに働かせて下さい」

 

ちゃんと話して、丁寧に頭を下げた。

 

 

 

「……まあ、いい」

 

クリーニング屋の爺ちゃんは、すげえ頑固そう。

 

「受付のやり方は、そのノートに書いてある」

 

「……読めねえ」(汗)

 

ミンの国の言葉だから、全くわからない。

 

「……」

 

爺ちゃんは、黙って日本語のノートを貸してくれた。

 

かなり古い。色も褪せてる。

 

ミンが来るまで、人はいなかったのかもしれない。

 

……もしかしたら、受付なんていらないのに、困ってるミンを雇ってくれたのかも。

 

「分かんねえことは、聞けや」

 

「はい」

 

爺ちゃん、良い人じゃん。

 

 

 

 

「すみませーん」

 

「はい」

 

結構な数の客が来る。

 

どうやら、爺ちゃんの腕は有名なようだ。

 

ここの客は、ほとんど地元の奴らだと思ったけど。

 

意外と遠方から来るみたいだった。

 

このあたりの人間じゃないと、一目でわかる人が多かった。

 

 

 

 

「ミンが、遠くまでチラシを作って配ってるらしい。頼んでないのに」

 

そういえば。

 

暇な日は、爺さんに恩返しだとか言ってチラシ配りに行くとか言ってたっけ。

 

頑固そうな爺さんは、ミンの恩人らしい。

 

外国人は、色々働くのに資格等大変らしいけど、こっそり雇ってくれてるそうだから。

 

ミンも、良い子なんだよな。

 

 

「こんにちは」

 

その時、ガラガラっと店の玄関扉を開けて入って来たのが彼だった。

 

上品な男性で、一目でこの辺の人間じゃないって分かる。

 

出来上がったものを引き取りに来たんだ。

 

 

「すみません、お願いします」

 

「はい、カッターシャツ5枚とズボンですね」

 

「はい」

 

 

綺麗な瞳と唇が、印象的な人で。

 

微笑んだ顔は、最近見たことがないような綺麗な人だった。

 

「お待たせしました」

 

「ありがとうございます」

 

彼は、何か言いたげな顔で黙った。

 

「……何か?」

 

「あの……」

 

 

 

すると、彼が言った言葉に俺は驚いた。

 

「日本語、お上手ですね」

 

「え?」

 

ニコニコして悪気もなくいう彼。

 

「声も綺麗ですもんね」

 

「……」

 

そっか。この辺も多いし、ミンも外国人だったから。

 

俺も外国人だと思ってんのか。

 

っていうか。

 

見た目で、分かるんじゃねえのかなあ?

 

俺、さっきから日本語しか喋ってねえし。

 

まあ、良いかと思ってると、さらに話しかけてくる。

 

 

 

「日本には、いつから、いらっしゃるんですか?」

 

賢そうなのに、鈍いようだなー。

 

無視しても良いんだけど。

 

 

 

「俺、日本人だよ」

 

面倒だけど、思わず返事してしまった。