*嵐妄想小説
*末ズ妄想・大宮妄想
*吸血鬼・ダーク・ファンタジー
*お話の全てはフィクションです。
第6章
「薔薇とチョコレートと白い薔薇の蕾」(4)
ニノとジュンは、遅れてパーティーにやって来ると、すぐに会場でジュンのオーナーと会った。オーナーは、30代に見える美しいフランス人女性だが、日本人とのハーフで日本語も上手かった。
日本人のジュンとは、日本語で会話するようだ。
秘密の会話には、都合が良いのだろう。
「ジュン、来てたの? 浅間さんに呼ばれたの?」
「ああ、呼んでもらったんだ。ニノ、この人がオーナーで恋人のアデルだよ」
「初めまして……」
「まあ、可愛い坊や。私は、浅間さんとは知り合いなの。縁があるのね」
ニノは、こういう女性が苦手だ。
言葉にも、態度にも出ていないが、刺すような敵意を感じる。
言葉の発音の端々には、隠しきれない悪意が見えた。
ジュンが言うような良い人には見えなかった。
「あの、ちょっと待っていて下さい。すぐ浅間さんを探してきます」
二人を置いて、ニノは、急いで会場を横切っていく。
会場の奥まった場所にいる浅間の姿は見えなかった。
(どこにいるんだろう……)
その時、後ろから大柄のフランス人の男に、突然抱きつかれた。
男は、気持ちの悪い笑い方で、ひどく酔っ払っていた。
「離してっ!」
助ける者は無く、体の軽いニノは抱き上げられると、グランドピアノの上に乗せられて、しつこくキスをされそうになる。
周りは、ドッと笑い、酔っ払いの余興のように眺めている。
ニノは、助けは期待できないのが分かって暴れるが、体重をかけられて逃げられない。
「離して! やめて!」
その時、男にグラスの酒が続けて何個も、グラスごとぶつけられた。
会場中が、驚きの声をあげて、そのグラスが飛んできた方向を見ると、美しいヒルダの連れた美少女が立っていた。
「Ne vous moquez pas des Japonais. ! Ce cochon.!」(日本人を馬鹿にするな! この豚野郎!)
言い終わる前に、少女の強烈な飛び蹴りが、ニノを襲っていた男の背中にヒットして男はそのまま男は床に沈んだ。
会場中が、さらにドッと笑い、眉を潜める者もあったが、大多数がこの美少女へ拍手喝采を送ったのだった。
乱れたドレスを直すと、呆然とするニノに、美少女が近づいて微笑んだ。
「私は茜よ。あなた、浅間の連れた子でしょう? 浅間のところへ行きましょう?」
浅間を呼び捨てにする人間を、ニノは初めて見て驚いた。
そこへ、騒ぎを知ったジュンが駆け寄ってきた。
「ニノ! 大丈夫?」
その姿を見て、彼女は冷たく言い放った。
「全く、役に立たないわね。そんなだから日本人て、馬鹿にされるのよ」
「キツイな、ところで君も浅間さんの知り合い?」
気にする事なく聞いてくるジュンを、無視してニノの手を引くと茜は歩き出した。
「待ってよ」
仕方なくジュンも後を追った。
**
騒ぎに気付き、浅間が助けに入ろうとしたところで、美少女が一瞬で、男を倒してしまった。
ヒルダは、手を叩いて、喜んでいる。
周りの客も、喜んで大盛り上がりだ。
「素敵でしょう? あの子は、美しくて、強くて、勇気もあるのよ?」
「さすが、薔薇の女王と付き合えるだけあるな。だが、人間じゃないか?」
「そうよ、あの子は人間のまま。……とても大切にしてるんですもの」
ヒルダが、少し悲しそうに言った。
「だから、あなたへ会いに来たのよ」
この言葉の意味は、浅間には分からなかった。
+裏話+
女吸血鬼と浅間さんは、相性最悪です。
どこか似ているからでしょう。
そして、この後の彼の人生も。
茜ちゃんは、この章で性格がハッキリ出ましたね。
美しく強く優しく純粋な人です。
彼女と出会って、
その後のニノちゃんにも影響します。
彼女は儚く消えますが、
出会った人たちの心に生き続ける事になります。
彼女の言葉と行動が、
皆の運命を変えて行きました。
美しく可愛らしく気高い薔薇の蕾。
吸血鬼に出会った為に、
人の人生をなくした少女です。