*嵐妄想小説

*末ズ妄想

*BL小説

*Dom/Subユニバースパロ(風味)

*物語の全てはフィクションです。

*最近は末ズ少ないなあと思って。

 

 

 

 

⚠️違うCPで読みたい方は⬇️こちらで読めます。(各個人で名前を変更できます)

 

 

 

(1)

 

気持ちの良い風が吹く、青空の広がる下は、多勢の従業員の働くビルが並ぶ。

この数十年、確実な成果で大きくなったある企業だ。

 

そのビルから、離れた山手の屋敷。

先ほどのビルで働く人々の会社の社長の家だ。

 

静かな筈のその屋敷に、若い男の声が響いた。

 

 

 

 

「和也さま、申し訳ありません」

 

「言い訳は結構。すぐこの案件を片付けて来い」

 

「かしこまりました」

 

「すぐだと言ってるだろう!」

 

二宮和也という社長代理は、頭を下げる秘書へ書類をぶちまける。

 

大きな社長室の空間は、白い書類が舞い、羽根のようだ。

PC画像は目が疲れるからと、わざわざ紙にして届けさせたものを平然と捨てる。

 

美しい栗色の髪と艶やかな肌を持つ青年・和也。

細身の伸びやかな動きは上品だが、唇からこぼれる言葉は、ほとんど暴力だ。

20代もしくは、さらに若く見える社長代理で、この会社の社長のただ一人の息子。

 

彼は、「Dom」と皆に噂されるほど、激しい気性だった。

子供の頃から、気に入らない社員や使用人は、即刻クビにしてきた。

だが雇われている条件では、この家や会社ほどの報酬を与える場所はないと言われる高待遇に、誰もが言いなりだ。

特に父親が病に伏せてから、社長代理としての和也が、会社をさらに大きくした為、ますます怖いもの知らずになった。

 

さらに、和也は大企業の経営者との結婚が決まっている。

この結婚で、大きな2つの会社は、ひとつになる。

国内では、トップクラスの企業の1つになるだろうという噂だった。

 

 

「では……」

 

秘書は松本潤という男性で、眉目秀麗がぴったりな男性だ。

どんな暴言や指示にも、もちろん反抗などしない。

急いで全ての書類を拾うと、部屋を出て行った。

 

「……っ」

 

激しい気性を隠しもせず、和也は感情のまま一人になった部屋で、机の上のものを床へ払い落とした。

ガラガラとクリスタルの置物やパソコンが、床に落ちて転がる。

転がった薄いグラスをさらに足で蹴り、ドアにぶつかったそれは、粉々になった。

 

湧き上がる感情に、体が震えて止まらない。

和也は自分の体を抱きしめるようにして、絨毯へ倒れるように横になる。

 

「……薬」

 

感情の激しさに、体も頭も限界だった。

だが、それを抑える薬を取る気力も残っていない。

 

和也は、そのまま目を瞑り……気を失うように眠ってしまった。

 

 

 

(2)

 

 

「潤さん、災難だったわねえ。秘書とはいえこんな毎日、よく耐えているわ」

 

ドアの外まで聞こえた和也の怒鳴り声と、青い顔色で出てきた秘書の潤の様子に、この家の使用人の中年女性が同情を込めて言った。

 

 

 

「いいえ、私が至らないのですから、仕方ありません」

 

「そんな青い顔をして……無理しなさんな。何か落ち着くお茶でも、淹れてくるよ」

 

「ありがとうございます」

 

女性が、キッチンのある階下へ行ってしまうと、秘書用の部屋へ足早に戻る。

会社とこの屋敷を行き来しながらの仕事は、決まった休日は名前だけ。

ほとんど、住み込んでいるような有様だった。

 

潤は、後手に扉を閉めて、溜息をついた。

 

 

「……和也様は、もうすぐ結婚式だ。仕方ない」

 

そう独り言を言うと、急いで携帯を取る。

先ほどの案件を、早く片付けなければ。

 

社長の和也は、この数日、ずっとイライラして暴走気味だ。

神経質で、気性の激しい青年には、皆が手を焼いている。

秘書の自分だけは、しっかりしていなければならない。

 

青い顔で、苦しそうに眉間に皺を寄せた和也の顔が浮かんだ。

 

「あ……」

 

今頃、激しい感情を持て余しているのではと、和也の様子を見に戻ろうとすると、先ほどの女性がお茶のセットを持ってきた。

名のある食器は、丁寧に磨かれて光を放つ。

茶葉の香りと相まって美しい形に見えた。

 

「潤さん。このお茶は、神経に効くそうよ。お疲れだろうから飲んでみて」

 

優しい女性はそう言って、自分の仕事へ戻っていく。

美しい食器に淹れられた、香りの良いお茶。

飲まなくとも効能がありそうだった。

 

「ありがとうございます。いただきますね」

 

潤は、彼女を微笑んで見送ると、お茶のセットを持って和也の部屋へ向かった。

 

 

 

(3)

 

 

「これは……」

 

和也の部屋は、メチャクチャだった。

潤は、お茶のセットをテーブルへ置くと、倒れている和也を抱き起こした。

 

「和也様? 和也様?」

 

囁くように、声をかける。

大きな声では、彼を驚かせて、この状態を悪化させるかも知れない。

ゆっくり揺らすように、彼に声をかけながら起こす。

 

 

 

「潤……」

 

「和也様、大丈夫ですか?」

 

ゆっくり目を開けた和也は、瞬きすると涙をこぼし始めた。

その涙に、潤は目を大きく開くと、息を吐いた。

 

「申し訳ありません。気が付かなくて」

 

「……」

 

「寝室へお連れします、よろしいですか?」

 

「……」

 

黙って頷くだけの和也を軽く抱き上げると、潤は寝室へ向かった。

 

その後ろ姿を見送るのは、粉々になったグラスのカケラ。

 

窓からの光を浴びて、欠片たちが妖しく光った。

 

 

 

――――――

 

 

 

潤は、また気を失った和也をベッドに寝かせて、手早く寝巻きに着替えさせると毛布をかけて携帯をとった。

 

「……今日の社長の予定は、全てキャンセルで。では、また明日連絡します」

 

仕事の手配を全て、電話で済ませると声が聞こえた。

 

 

「潤……」

 

か細い声は、別人のようだ。

 

「和也様。もう大丈夫です。ゆっくりお休みなさいませ」

 

ベッドの和也を覗き込んで、潤が微笑んで言うが、和也は涙をこぼす。

 

「潤……」

 

「なんでしょう?」

 

「結婚式まで何日だ?」

 

「十日です」

 

「……」

 

「おめでたい事なのに、そのように泣かれてはいけませんよ?」

 

「潤は……良いのか? 結婚してしまっても」

 

「そのように、お考えでしたか? 私は変わりません。あなたが変わっても……変わらなくても」

 

 

 

潤の声が、低く太く変わる。

 

目付きは、鋭く、瞳は大きく光り始めた。

 

その彼の両手は、上品に羽のようにひらめく。

 

 

 

「私は、変わらずに……あなたのDomですから」

 

 

 

そう言って、羽のように動く手が、泣く和也の首を絞めるように動いた。

 

 

 

続く。

 

(潤君て、DomでもSubでも、似合うなあ。ニノちゃんはSubが好き♡)ニコニコキラキラ