嵐妄想 大宮妄想 小説

亀ちゃんと大宮コンビの小人です。

お話の全てはフィクションです

(懐かしいお話・2800文字くらい)

 

 

 

 

 

 

side 亀梨和也

 

「えっ……無理だってば」

 

「でも、外に行きたいんだっ。ちょっとだけ」

 

「ちょっとも、いっぱいも一緒だってば」

 

「ほら、ケーキ買いに行ったじゃん、大丈夫だったもん」

 

「ケーキ? ああ、あの時は人も少ないし、暗い時間だったから」

 

「誰も、何も言わなかったでしょ?」

 

「言われなかったけど、たまに凝視されたもん」

 

みんな、気が付かないみたいだったけど、たまに、すっごい驚いた顔した人もいたな。

 

「今度も言わないよ、きっと」

 

朝も早くから、小人に起こされて。

俺のベッドの上を暴れ回る小人コンビだ。

 

外に行きたいみたいだけど、どうしようか。

 

青い服着た小人、「

黄色い服着た小人が、「カズ

 

この「智」が、しつこく食い下がって来るけど。

よく考えたら、この子達って、何処かに住んでたんだよね?

 

「ねえ……家に帰りたいとかなの?」

 

「俺らの家は、ここじゃん!」

 

「はあ、そうですか」汗うさぎ

 

俺の一人暮らしは、この小人を拾ってから、子供二人を抱えたシンパパ状態である。

この子らの服を作って、ご飯作って、お風呂入れて、遊び相手もしてたりする。

俺が会社行ってる間は、AI のアレクサンダーと遊んでるようだ。

まあ、可愛いし。なんだかんだ三人暮らしに慣れてきてた。

 

ただ、小人なんだな。

普通の人じゃ、信じてくれないよね。

俺も、自分でもこれが幻覚だったらどうしようって、最初思ったもん。

 

「じゃ、僕と智、お人形のフリするよっ」

 

「カズ、いい考えだなっ偉いぞっ」

 

「人形のふりなんて、無理でしょ?」

 

「できるできるっ♬」

 

「ふーん、……これならどうだっ!」

 

「「うわっキャハハはははっ! やめろっキャハハ!」」

 

二人を一緒に両手でくすぐった。

もう、キャアキャア笑って、転がってる。

コロコロ2匹の仔犬みたいだ。

 

「全然、無理じゃん?」(笑)

 

勝ち誇って言うと。

 

「不意打ちなんてっ、ひ、卑怯だぞーっ」(涙)

 

「なんでも、不意に起こるもんなの」(笑)

 

「えー……」

 

小人二人が、顔を見合わせてションボリ座る。

 

「智、行けないの?」(しゅん)

 

「行けないのかなーカズ」(しゅん)

 

「うっ…………」

 

二人が、俺ににじり寄ってくる。

 

ちっちゃい体で、俺の膝に乗ってくる。

 

更によじ登って来るんだな。

 

「ダメ?」x2

 

「どうしてもダメ?」x2

 

ひ、卑怯だぞ、可愛い顔で甘えて来るなんてっ。

 

 

 

 

「……どこ行きたいんだよ?」

 

二人は、ぱあっと明るく笑顔になった。

 

「どっか(何処か)!」

 

「外、外!」

 

「いや、そんな適当な……まあ、じゃあ俺が決めるからな?」

 

「「うんっ」」

 

くそ、負けてしまった。

 

俺は、可愛いに弱すぎる。

 

 

「「肩に乗りたーい♬」」

 

「ええ? 暴れんなよ?」

 

「「はーい」」

 

 

まあ、まだ朝も早いから。

 

そんなに人も多くないだろう、公園でも行こうか。

 

気が付かなかったけど、家ばかりじゃ可哀想だ。

 

この子らが、何歳か分かんないけど。

 

 

 

――――――

 

 

 

肩の左右に小人が分かれて乗って。

 

「「わーいっ♡」」

 

大喜びの二人の顔は、可愛かった。

 

近所の小さな公園の自販機で、ジュースを買って三人でベンチで飲む。

 

「俺、この炭酸きらい」

 

「お前が選んだんだろう?」

 

「智、交換してあげる」

 

「ありがと♡」

 

「……仲良いよね、ずっと一緒にいるの?」

 

「「うん、いっしょ」」

 

「小人って、番いみたいに暮らすの?」

 

「小人? 俺らか? そうだなあ、そうかも」

 

「分かんないの?」

 

すると、急に小人二人が叫んだ。

 

「あっ」

 

「あいつ、しぬぞ」

 

「えっ?!」

 

小さな公園から見える踏切の前に、人が立っていた。

 

「しぬって……」

 

「俺らは、わかるんだ、ほらアイツの足元の影、色が違うだろ?」

 

「どうしよう? 智」

 

「なんとかしないと……」

 

 

 

亡くなった友人たちの顔が浮かんだ。

 

 

 

急いで小人たちを抱いて、そっと、走って行って声を掛けた。

スーツ姿の20歳くらいの男の子だった。

顔色も悪い。

なのに、イライラしてるオーラだった。

 

「あの……具合悪いんですか?」

 

ドキドキする。

不審だよね、朝から俺みたいなの。

 

「……大丈夫です」

 

「そうですか、あの……」

 

「なんですか? 急いでるので……」

 

そう言って、去って行こうとする。

 

どうしよう、ここから、彼が飛び込むかも。

 

それとも、別のとこ?

 

すぐ目の前は、駅だ。

 

 

 

 

「「えいっっ」」

 

その時、小人たちが一斉に、彼に向かってジュースを投げた。

 

「うわあああ!」

 

「うわっ、大丈夫ですか?!」

 

彼のスーツの左右に、別々のジュースが、びっしょりかかってる。

 

彼に、小人は見えてないようで。

 

「アンタが、かけたんだろうっ?!」

 

「あ、そう……ですね、すみません、手が滑って……」

 

小人たちは、何も言わないで俺の腕の中から、肩に登っていく。

 

「滑って、こんなにかけるの?!」

 

「はあ、本当ですね、すみません」

 

「だから、嫌なんだ、昨日もさっ……!」

 

 

 

ヒステリックに、彼は大声で叫び出した。

 

 

 

 

色々あったようで、3分は色んな事を叫んでた。

 

それに、いちいち、相槌をうって適当に返すのは俺。

 

「それは……大変でしたね」

 

「いや……俺もさ、分かってて、でも……」

 

少し、空気が抜けてきたみたいだ。

 

はあ……と、ため息ついて、彼の勢いが落ちたところで。

 

「あの、着替えどうしますか? クリーニング代は払います、すみませんでした」

 

「いや……怒鳴ったりしてすみません。今日は、休みます。やめたって良いですよね」

 

そうそう。しぬ位ならね。

怒って腹が立って踏切に飛び込む程、追い詰められたんなら全部やめて良いんだよ。

なんとか、なるよ、若いんだもん。

 

亡くなった友人にも、言ってあげたかったよ。

 

パンパンに、膨らんだ風船のようだった彼は、最後は苦笑しながらも落ち着いてきた。

申し訳ないから、クリーニング代を渡そうとしたけど要らないって。

 

「良いんです、なんか変な話を聞かせて、ごめんなさい」

 

 

 

会社も人間関係も、大変だよね。

お金だって、必要だけど。

他にも色々あるだろうけど。

 

でも、嫌な事のためにしんじゃったら、勿体無いよ。

どうせ命をかけるなら、好きなことや大切な人の為に。

 

 

「気をつけてね、あんまり頑張らないで下さい」

 

「ふふ……変な励まし方だなあ、ありがとうございます」

 

 

悪い気持ちの空気がいっぱいだった彼は、空気が抜けてスッキリした顔で、引き返すように去っていった。

名前も知らないけれど。

目の前で、手遅れにならずに済んで良かったな。

そう思ってたら、小人たちが喋り出した。

 

 

「ジュース、無くなっちゃったあ」うさぎ泣

 

「俺、今度は違うの飲みたいなあ」うさぎキラキラ

 

「……勝手に投げといて」汗うさぎ

 

まあ、良いよ。

君らも、良い事したんだね。

 

「今度は、お花がいっぱいあるとこ行こうよ♡」

 

「滑り台とか、あるとこが良いなあ♡」

 

「ダメっ! 今日は、もう時間ないのっ、やばっ……俺もこれから会社じゃん!」

 

「時間も分かんないの? 馬鹿だなあ♬」笑ううさぎ

 

「はああっ?」ムカムカ

 

「やっぱり、俺らがいないとダメだなあ♡ なあ、カズ?」キラキラ

 

「そうだね、智♡」ニコニコキラキラ

 

もう、なんなの?

 

 

 

「帰るぞ!」

 

「「はーい」」

 

 

不思議な小人が、俺のことも助けてくれてるのかなって、ちょっと思った月曜の朝だった。