嵐BL妄想

大宮妄想小説

登場人物等全てフィクションです

 

 

 

 

(10)

 

「審判を行う。死神 大野智」

 

女王のような姿の霊界の裁判官に見える人物が中央に立って告げた。

 

冥府の番人の青い龍も、智の隣で項垂れて聞く。

 

智たちが立つ場所は、洞窟のような暗く青い石の壁に囲まれた小さな神殿のようなところだ。

 

壁際に、冥府の小さな龍たちが並び立ち、手には青い炎の蝋燭の灯りを持っている。

 

智は、息を止めて判決を待った。

 

(俺……地獄行きかなあ……いや、消滅させられるかも……ニノにもう一度会いたかったなあ)

 

 

 

「合格」キラキラ

 

 

 

「は?」汗うさぎ

 

番人も、驚いて智と裁判官を交互に見る。

 

 

壁際の龍たちが、一斉ににっこりして、炎を振り回しておめでとうと、踊り出した。

 

「おめでとうっ!」

 

「おめでとうっ!」

 

智は、驚いてキョロキョロ見回す。

 

そこに、大きなベルの音が鳴り響き、風と共に大きな龍と……ニノが現れた。

 

 

「ええっ? ニノ?」

 

「智っ!」

 

ニノは、笑顔で真っ直ぐ智の胸に飛び込んだ。

 

 

「ニノ……? どうして?」

 

「合格だよ、智、俺たち結婚できるんだっ!」

 

「はあ?」

 

 

大きな龍が、ため息をついて笑う。

 

その姿が、スルスルと……ジョニーになった。

 

 

「ジョ……ジョニー? ええ?」

 

「うふふ智、良かったわね? さあ……記憶を戻して貰いなさいよ」

 

「記憶……?」

 

 

 

コツコツとヒールを鳴らして、ロングの細身のドレスの女性が近付いてきた。

 

審判を告げた女性だ。

 

 

「合格おめでとうっ! 良かったわねっ!」

 

「母さんありがとう!」

 

「えっ!?」

 

 

女性とニノが抱き合って、喜んでいる。

 

「ど、どういうこと……?」

 

 

ニノが、智の方を見て微笑んだ。

 

「俺が……智と結婚したいって頼んだんだよ」

 

「結婚……? でも……あれっ? 貴女って……」

 

 

その女性の顔は、ニノの亡くなった母親そっくりだった。

 

「そう、二宮和也の母親で、二宮の妻です。……魔族だけど♡」

 

「お義母さん……?」

 

「ごめん、智。俺……魔族なんだっ♡

 

「全っ然分かんないよ! ニノ!」

 

 

 

――――――

 

 

 

ベッドに寝たままのニノの父親が、枕元の写真を眺めている。

 

「うまく……いったのかなあ」

 

命の期限は、あと1日。

 

亡くした妻を思い出す。

 

「人間じゃなかったからねえ……きみ。今も仕事してるのかな」

 

ある日、目の前をやたらウロウロする美人の女の子。

 

可愛くて、天使のような……魔族の人。

 

 

 

顔に似合わず、口が悪くて、強引で。

 

『おまえ、気に入ったから。結婚しよう』

 

明るい声と笑顔。

 

『でも、申し訳ないけど、人間じゃないんだ』

 

なんでも無いように、そう言われた。

 

 

 

『幸せにしてあげるからね?』

 

その顔を思い出して、ふふっと一人で笑う。

 

「幸せだったよ。……てっきり君が迎えに来てくれると思ったのにな」

 

それだけが、残念だな……と目をまた閉じて、眠ったのだった。

 

 

続く