嵐BL妄想

大宮妄想小説(ON)

登場人物等全てフィクションです

 

 


(9)

 

霊界は遠くて近い場所だ。

 

ただ、すぐ傍なのに見えないし、感じないだけで。

 

いつだって、死者の魂は、その辺を彷徨っている。

 

死者を迎えに来るのが死神で。

 

彷徨える魂を救いに来るのは、また別の者たちだった。

 

 

 

霊界に戻ると、何もかも分かっている冥府の番人が、智を案内する。

 

冥府の番人も、智を見ると、ため息をついた。

 

「なかなか帰って来ないんだから……一人迎えに行くだけで」

 

青い龍のような魔物がそう言って智を見る。

 

「すみません……失敗して」

 

「失敗は即効で報告しなけりゃ、ややこしいんだから。隠そうとするからだ」

 

全て分かっているらしい番人は、その先はもう黙り込んだ。

 

死神にもなれなかった自殺した魂は、贖罪のために、更に地獄に送られるかもしれない。

 

 

 

――――――

 

 

 

二宮和也(ニノ)の父親が、目を覚ますとそこは病院だった。

 

意識が戻らなくなった為に、病院に搬送されたようだ。

 

 

「二宮さん……大丈夫ですか?」

 

「はい……あの、和也……息子は?」

 

「息子さん……?」

 

看護婦が、困ったように首を傾げる。

 

その様子に、秘書の男が慌てて、間から返事をした。

 

「社長……大丈夫ですよ、和也くんは家で、お待ちになっています」

 

「そうか……」

 

 

そう言って父親は、また意識が失くなった。

 

秘書は、ホッとしてため息をついた。

 

「混乱してらっしゃるんだ……もう亡くなっているんです、息子の和也くんは」

 

 

 

妻と息子は、ずいぶん前に事故で一緒に亡くなった。

 

たまに息子の話をする社長に、周囲は特別に気を使い、あえて教えなかった。

 

会社経営は社長の甥が引き継いで問題もなかったし、社長の心が癒えるまではと、皆が思っていたところで病になってしまった。

 

皆、社長の幻覚だと思い込んでいるから、ニノの存在は誰も知らなかった。

 

社長がニノのために用意した物たち全て、妄想だとしても構わないという、皆の思いやりだった。

 

 

 

――――――

 

 

 

静かな部屋で、ジョニーとニノが向かい合って立っている。

 

その部屋は、窓から陽が射している筈なのに、青く薄暗い。

 

「ニノ……貴方は、ニノだけどニノじゃ無いのよ」

 

「どう言う意味?」

 

「約束よ、貴方は約束してニノになったの」

 

ジョニーが、そう言うと姿がドンドン変わり、龍のような魔物になった。

 

 

 

「ジョニー……なんだ。オカマじゃなく怪獣だったんだねっ♡

 

まあっ(怒)怪獣なんて失礼な……って、ちょっと違うでしょ? あら、貴方その口の悪さは……」

 

ニノが、一度目を閉じて、顔を上げた。

 

 

「ああ、ジョニー世話になったな。戻ろうか冥府に。最後の審判だ」

 

 

別人のように、大人っぽい表情で色っぽく彼は微笑んだ。

 

 

 

続く