嵐BL妄想

末ズ妄想です(純愛)

登場人物等全てフィクションです

(2000超文字数)

 

 

(7)

 

side 松本潤

 

ニノの部屋に飛び込んで、見えたのはベランダから飛ぼうとする姿だった。

 

「ニノ!」

 

夢遊病者のように、ベランダを乗り越えようとするニノを羽交い締めにして、引きずって部屋の中に入れると、ニノはもう意識が無かった。

何か、薬も飲んだらしく急いで病院に運んで、治療を受けて何とか助かった。

 

ニノは、目が覚めて俺の顔を見るなり、ごめんなさいと謝って泣くばかりで。

俺は、どうしていいか分からなかった。

 

なんでこんなことで、苦しまなきゃならないんだろうかと、死んだ男を恨んだ。

 

それでも、回復したニノを、俺の部屋に連れて帰った。

 

ニノは、迷惑かけたくないと言うけど、今更だろ? と強引に連れて帰って、また静かに暮らし始めた。

 

少しずつニノは、落ち着いて正常に戻っていった。

 

会社に戻るか、悩んでいるようだった。

 

また、おかしくなったら……思うと心配だった。

 

それに、俺だけを頼ってくれてるニノは、とても可愛かった。

 

あの人もこんな気持ちだったのかなと思って、自分も、改めて落ち着かなくちゃと思った。

 

あんな人のようには、なってはいけない。

 

何より、俺はニノが好きだった。

 

やっと、どうしてあの人が、嫌いだったか、わかった。

どうして、初めて会った時から、ニノが忘れられなかったのか。

 

俺こそ、今更だった。

 

 

 

 

(8)

 

side 二宮和也

 

潤君のおかげで、助かった。

 

きっと潤君が助けてくれなかったら、死んでた。

 

でも本当は、死んで許して貰いたかった。

 

 

 

会社も休んだままで、潤君と暮らしている。

潤君が、いるだけで安心する。

何にもいらないから、このまま暮らしたい。

潤君と一緒に眠る夜だけが、あの人を忘れる時間だった。

 

でも、声がする。

それは、俺を責める声。

 

忘れて幸せになんて、なっちゃいけない。

 

あの12月から動けない。

 

1月なんて、遠すぎる。

 

いつまでも、13月の闇の中から、出られない。

 

永遠に。

 

 

 

+++

 

 

「ニノ。ちょっと出かけないか?」

 

潤君が、日曜日の朝にそう言った。

 

もう、肌寒い秋の終わりになっていた。

 

「どこ行くの?」

 

「綺麗な教会。得意先の人が教えてくれたんだ」

 

「そうなんだ……」

 

教会って、行った事ないかも。

でも、どうして?

 

「俺が、懺悔したくて行くんだよ」

 

冗談ぽくそう言って笑う潤君は、とても綺麗だった。

 

 

……ああ、そうか。

やっと、気が付いた。

ー随分前から、潤君が好きだった。

 

俺こそ、懺悔しなきゃならないと思って……泣きたくなった。

 

 

 

 

 

 

(9)last

 

side ニ宮和也

 

教会は、車を飛ばして1時間かかる海の見える山の上だった。

 

紅葉が見えて、綺麗な海も見えて、素晴らしい景色だった。

 

「綺麗だね」

 

「ニノは、もっと綺麗だよ」

 

潤君が、おかしなことを言うから、顔が真っ赤になって恥ずかしい。

 

「ニノ、真っ赤じゃん。可愛い」

 

「か、可愛いわけないでしょ」

 

潤君が嬉しそうに笑って、俺の手を掴むと、教会に入って行く。

 

マリア様の像の前に、二人で立った。

マリア様の腕には、殺されたキリストが抱かれている。

 

「悲しそうなのに、幸せそう」

 

「そうだな」

 

潤君は、ゆっくり瞬きをすると、俺の手を両手で握って、真剣に見つめてきた。

 

「ニノ。聞いてくれる? あの人がどうして死んだか」

 

「え。それは……俺が……」

 

「俺、あの人にあの日、言ったんだよ。ニノの恋人は俺だって。あの人にニノを諦めて欲しくて」

 

「それは……俺のために言ってくれたんでしょ?」

 

「自分でもそう思ってた。でも違う。わかったんだ。俺はニノが好きだったんだ。……ずっと」

 

「え……あの……潤君?」

 

「だから、あの人が死んだからって、もう自分を責めないでほしい。俺が悪いんだ。どうしてもニノを渡したく無かったから」

 

「潤君は悪くない。悪いのは……」

 

「もう、忘れて前を向いて欲しい。そしてできれば、俺と一緒に生きていってもらえないかな? ……ダメ?」

 

「潤君……どうしよう。俺……」

 

体が震える。

この先のことなんて、考えたことは無かったから。

一緒に一生なんて。

 

「そんな資格は……」

 

「だから、ここで懺悔しに来たんだよ。きっと許される。大丈夫だから」

 

マリアに抱かれたキリストが、あの人に見えて、怖かった。

 

「本当に許してもらえるかな……」

 

「大丈夫だから。勇気を出して? もう明日を生きていこう? ね?」

 

「うん……ありがとう、潤君」

 

答えなら、わからない。

許されるかなんて分からない。

 

ーけれど。

 

ずっと。

ずっと恋をしていたから。

あなたの未来には、自分が隣にいるのが、夢でした。

 

 

抱きしめ合って、確かめ合った。

 

・・・この恋を。

 

 

 

 

 

 

悲哀と慈悲を表しているという、ピエタの像。

 

マリアに抱かれて、死んだキリストは何を思っているのか。

 

誰のために生きて、死んだのか。

 

誰のために生きるのか、誰のために死ぬのか、たずねられているよう。

 

 

 

その問いに。

 

……ただ、ずっと恋をしていたからと、他の言葉を持たない彼らは答えた。

 

 

 

<end>