嵐妄想小説です(BLではありません)

登場人物等全てフィクションです

 

 

(9)ー3<last>

 

 

いつまでも。

いつまでも。

泣いてるのは、赤い服と緑の服の小人。

 

抱き合ったまま、オイオイ泣くのだ。

 

 

「おい、声枯れちゃうぞ? ケガは無いのか?」

 

「無い……(しくしく)」

 

「お腹は? 空いてるだろ?」

 

「「お腹空いたっ」」

 

二人が、抱き合ったまま同時に叫んだ。

 

「ケーキ買って来た。チョコといちご。好きだったろ? 食べる?」

 

「「食べる」」

 

「翔ちゃんと半分こするから、切ってね♡」

 

「はいはい」

 

もう、笑ってるよ。

心配かけたくせに……全く。

いなくなったかと、思ってさ……寂しいなんて、思ったじゃん。

そんなこと、大人になってから1度もなかったのに。

恋人と別れた日だって、思った事も無いんだ、俺って。

面倒なことが、1つ終わったなあって思ってた。

 

 

 

落ち着いて、一緒にテーブルを囲んで、(二人はテーブルの上)ケーキを頬張る二人を眺める。

 

「美味しいねえ、翔ちゃん」

 

「相葉くん、良かったねえ」

 

何も無かったように、嬉しそうな二人。

 

「美味しいよ、食べる? 分けてあげるね?」

 

ニコニコ緑の服の子が、小さな体でケーキの皿を押してくる。

 

「どうぞ♡」

 

いや、俺が買ってきて、カットまでして用意したんですけど。

 

「……ありがとう」

 

一口頂いて。

 

「美味いな」

 

「「良かった」」

 

声まで揃えて、嬉しそうに手を叩いて喜ぶ二人。

 

ちょっとした罪悪感。

 

ごめん、俺って冷たかったよね。

 

同じ家で暮らしてるのに。

 

今、気が付いた。

 

俺は、小人の名前も覚えてない。

 

「名前はねえ、この子が翔ちゃん♡」

 

「それでネッ、この子が相葉くんなの♡」

 

「俺は……」

 

「「まつもとじゅんっ!」」

 

「ああ、知ってるか、言ったっけ?」

 

「「前に、電話で名乗ってた」」

 

「あ、そうか」

 

俺のする事、ずっと見てるもんな。

 

まいったよ。そうなんだ。

 

「「正解です!」」

 

「「おめでとう!」」

 

きゃあっ♬て喜んでる小人ふたり。

 

優しくならなきゃって、ちょっと思った夜だった。

 

 

 

――――――

 

 

ちょっと、早起きして3人一緒に、朝ごはん食べるようになった。

 

寝るのも一緒に寝るようになった。

 

小人たちは、いつもソファで仲良く寝てたんだけど。

 

「一緒に寝る?」

 

ふと思って聞いたんだ。

 

「「寝る〜♡」」

 

枕元に、タオルケットと毛布でベッドを作った。

はしゃいで、二人がそこに潜り込む。

 

「うわー気持ちいいねえ」

 

「うん、広くて落ちないねえ」

 

「えっ落ちてたの?」

 

「うん」

 

「……危ないから。これからは、なんでも言えよ?」

 

「じゃあ、もう1個ケーキ食べたい♡」

 

「寝る前だから、もうダメ」

 

「……はーい」

 

 

 

知らなかったことばかり。

少し考えれば、わかるはずなのに。

考えたことも無かった。

毎日、追われるように暮らしてたから。

 

 

小人に優しくすることは、健全な生活を取り戻す事でもある。

そして、季節が変わって行くのを、感じられるようになった。

今まで、自分では気がついて無かったから。

 

ニュースで。

 

誰かの声で。

 

季節が変わるのを知る生活だったんだなあ。

 

 

小人のいる部屋は、俺の日常になっていった。