実家往復が続いて疲れもたまり、久しぶりに何も予定を入れてなかった昨日の日曜日。

出かけるのも辛くなり、そうそう、こういう時はkindleよねー、と、
読みたかった一冊をダウンロード。

島崎今日子 著「森瑤子の帽子」

集英社から『情事』が出た時には、心底びっくりし、
翻訳書のような文体、フィッツジェラルドみたいな虚栄と倦怠の世界観に心惹かれ、
憧れた作家、森瑤子。

イギリス人の夫、
天使のようなハーフの子供達、
軽井沢の別荘、
三崎の海の家、
六本木の夜のクラブ、、

ちょうど日本のバブルの時代を背景に、どんどん売れっ子作家になって、
金銭的にも物質的にも欲望を満たされ、洗練され、
コンプレックスだった外見の華やかさも手に入れて、、

それなのに、どんなに成功しても、どんなに島や車を買っても、満たされることのない魂。

恐ろしいほどの魂の闇の深さを、島崎今日子は関係者のインタビューによって解き明かしていく。残酷なまでに。

そしてアイコンのようであった、
真っ赤な口紅と華やかな帽子、
それは森瑤子にとって、いったい何であったのか??

著者の島崎今日子さんは、これまた残酷なまでに実像に迫ろうとした優れた評伝『安井かずみのいた時代』を著した、才能豊かな作家・ライター。集英社でもコスモポリタン全盛期にライターとして活躍していましたね。

安井かずみの本に比べて、森瑤子の方は、出てくる有名人が業界人的でマニアックで地味なため、
今ひとつミーハー的華やかさに欠けるのだけれど、

バブルの終焉とともに、実質たった15年の作家活動ののち癌のため天に召された、この稀代のストーリーテラーの輪郭を、鮮やかな筆で描き出して素晴らしい作品になっています。

半日あれば、さっくり読めるので、是非読んでみて!おススメです。


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