バイロイト音楽祭では、もう一つ「さまよえるオランダ人」も鑑賞しましたが、こちらは今ひとつ。新制作の舞台装置に感情移入しにくかったことがあるのでしょうか。
まあ、当方の予習不足も原因でしょうね。。

それよりもやはり、書いておかなければ、と思うのは、バイロイト祝祭劇場のこと!


ワグナーが、自作のオペラを鑑賞してもらうという、ただ一つの目的のために建てられた劇場。

バイロイトにスイスから呼び寄せられたワグナーが、まず提案されたのが、バイロイト市内の辺境伯オペラハウスを使っての上演。

しかし、このオーケストラピットが小さ過ぎて気に入らず、全て自分の思いのままに建てることを決意。




その原型は、ローマ時代の野外音楽堂のスタイルで、
座席の傾斜はそれに合わせて20度に。また、座席の配置は半円形に。

それまでのオペラハウスが馬蹄形で左右の桟敷席での逢い引きや社交が大きな目的であったのに対し、ワグナーはまったく新しい形を導入。



しかも、半円形に並ぶ椅子は、堅い木製で、
しかもしかも、すべての椅子がずらっと並び、通路がない!!
トイレに行ったり、出たり入ったりしようとすると、列の全員を立たせることになる!

もちろん、冷房なんて一切なし!
オペラ開始と同時に扉を閉め切ると、外気温34度に、舞台の熱気、観客の体温が加わって、
まるで拷問のような苦しさ!!

まだ、平土間の席なら我慢もできるけど、2階の桟敷席11人掛けなどにチケッティングされたら、
11人の体温と体臭で、気も狂わんばかり。。らしい。

でも、でもねー。
それでも、素敵なんですよねー。

ローマ時代の野外円形劇場を模しているので、舞台正面上は、空をイメージした淡いブルーに。
客席左右サイドの四角いデコボコの装飾は、美しいだけでなく、音響板としての優れた役割も持ち。

堅い木製椅子には、薄いながらもクッションが敷かれ、レセプションではザブトンの貸し出しもあり。(もちろん、持ち込みは禁止)

私たちは、34度に対応し、ドレスの下に、4枚の冷えピタを貼って汗を止め、何食わぬ涼しい顔で鑑賞すればいいんだから。。

そして、観客よりもいっそう過酷なのが、オケピのマエストロとオケの方々。

何しろ、地底から湧き上がってくるような、劇場と一体化した素晴らしい音の訳は、
舞台下に階段状に作られ、下に埋め込まれた、タコツボ状のオケピと、音を反響させてから外に出す反響板の存在のせいで、常に酸欠状態となった構造によるものだからです!!

ちょうど美しい白鳥が、水面下では足を一生懸命に掻いているような。

だから、観客から一切見えないオーケストラの人たちは、暑さの中でTシャツと短パンで演奏しているのだそう。

また、マエストロも同じく、演奏中はごく軽装で、演奏後、マエストロの正装に着替えて、舞台の挨拶に出てくるのだとか。



どおりで、ティーレマンさまも、ゆでだこのような真っ赤なお顔で喝采に答えていたのだわ。納得。


開演15分前から5分刻みに、正面バルコニーにてトランペットの音色でお知らせがあるあたりも、なかなか粋な、バイロイト祝祭劇場でした。

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