夢を見た


父との時間があと僅か、と分かってる夢だった。


父と母と弟夫婦と私達家族。


みんなで父と過ごそうと集まった。


まず食料を買い物に行った。


私はずっと父の側に居たけれど、人ごみの中で少し離れてしまった。


それでも父を目で追っていた。


少し離れた場所の傾斜になっている通路で父が倒れた。

 

急いで駆け寄った。

母が必死で声を掛けてる。

近くの老夫婦は「大丈夫大丈夫」と言った。


私も父に声を掛けながら起こそうとする。

「パパお願い!起きて!」


父はゆっくりと目をあけ、

「おぉ、大丈夫や」と。


その後車で移動して、ビルの上から花火を見ることにした。

車を停めて、ベストスポットを探した。


何故か私達はこれが父との最後の時間になる、

と知っていた。

夫と弟が一番花火がよく見えるであろう場所を探してくれた。


私は父の体調が心配で、ずっと側にいた。

寒くなってきたので、膝にかけていた父のシャツを父の背中にかけた。

「大丈夫や、〇〇(私)が使い」

「それじゃ、一緒にかけよう」

そう言って2人で1つのシャツを羽織った。


だけどまだ寒い、どうしよう、

と思ったところで足元に毛布を見つけた。

父と一緒に毛布にくるまった。


そっと横になった父の頬に手をあて、

「パパ、今までありがとう。大好き。パパの子どもに生まれて良かった。幸せだったよ。ありがとう。」

と必死に伝えた。

今しかない、って思ったから。


それに対して父が何か言ったのかどうかは覚えていない。

老夫婦が近くで微笑んでいた。



父が立ち上がって歩き出した。

意外としっかりとした足どり。

そしてベンチに座り、娘たちが父を挟んで座った。

その光景が嬉しくて急いで写真を撮った。

弟の奥さんも加わり、私も父の前に座って撮ってもらった。


「花火あがらんな」

と父が言った瞬間

「こっちや!」

と弟。


右側の空に

バーン!

と大きな金色の花火が打ち上がった。


みんなでレジャーシートに座り、ご飯を食べる事にした。

父はお肉とお寿司…だったと思う。

美味しそうに食べていた。


母が

「2年前はパパの兄弟達と見に来たね」

と言うと

「そうやねん、やのにこの前聞いたら覚えてないって言うんやでー」

と笑っていた。


病に倒れてから一番元気だと感じる父の姿。

歩いて、喋って、食べている。


後ろで老夫婦がうなずきながら微笑んでいる。


もうすぐお別れなんて信じられない。

このまま元気で生きてくれるんじゃないか。


そう思ったところで目が覚めた。


…なにかとても大切な夢を見た気がする…。


父の夢だ! 


思い出した瞬間、スマホを手に取った。


父に連絡しなきゃと思ったからだ。


………。


違う。


父は先月末に息を引き取ったんだった。