映画「忍びの国」を観てきました。

原作の和田竜さんのことは「のぼうの城」で知っていました。

それも小説が店頭に並んだ時に見た、オノ・ナツメさんが描かれた単行本の表紙の印象と人気ぶりを覚えていて、映画化したときも(さすがに映画館に行く余裕はなかったけども)レンタルされるとすぐに借りて観ました。

実写を見てもやっぱり、あの表紙のイラストが一番記憶にありますね。なんだかおしゃれだったなあ。

とまあ、「のぼうの城」の話はこのあたりにしておいて。

私は「忍びの国」の原作を読んでからの映画鑑賞でしたので、あのラストは知っていたし、逆に「できることならあんなラストにはならないでほしい」と願いながら観ていたと言ってもいいかもしれないです。

でもまあ、中村監督がインタビューのいろんなところで答えているように、あのラストが一番の肝なわけで。やっぱりさけられないよな、とは思って覚悟はしていました。

あまり初っ端からネタばれしてしまうのは申し訳ないので、この話は後回しにして。

公式サイトや情報番組などによると、舞台挨拶が大阪と東京、北海道でもあったそうなのですが。

ちょっと待ってください。

この映画の天正伊賀の乱は、どこで起きた史実でしたっけ?

伊賀というだけあって、伊賀市、つまりは三重県ですよね?
大阪ではないですよね。
いらっしゃらないのかしら?

そう思っている三重県民はきっと、大勢いるのではと思っているのですが。
いかがでしょうか…。

かくいうわたくしも、三重県民でして。伊賀市出身ではないので、さすがにそこまで声を大にして言える立場ではないのですが。やっぱりどうにも腑に落ちないです。

そもそも私が学生時代に歴史の授業で、地元三重県で実際にあった「天正伊賀の乱」を習ったという覚えがあまりございません。もしかしたら私が覚えてないだけの話で、ちゃんと教科書にのっていたのかもしれないけど。「忍びの国」の原作を読んだときの驚きのほうが大きかったくらいですし。現代の教科書ではどのくらい取り上げられているのでしょうか。

そんな中途半端な立場にもかかわらず…。

原作を読んですぐに、「舞台は伊勢も含まれているわけだし、ヒット祈願とかで出演者が伊勢神宮に来てくれないかしら」とも思いました。

それが、ふたを開けてみれば浅草寺でのヒット祈願…。

なんだろう、この虚しさは。きっと伊賀市出身のかたは私以上にそんな気持ちでいっぱいなのではないかと想像され。

あまりしつこく言いたくはないので(もうすでにしつこいかもしれませんね、ごめんなさい)
このへんにしておいて。

ここからはネタばれありですので、嫌な人はこの先は読まないでくだされ。

7月についに公開になって、劇場に足を運びました。

原作を読み終えてからしばらく経ってからの鑑賞でしたので、明確に、どのシーンが追加されたかカットされたかは観ている最中はすぐにはわからなかったのですが、日置大膳を演じた伊勢谷さんなどがインタビューで答えている通り、ある大事なシーンがスポッと抜け落ちていました。

大野さん演じる無門の妻お国と、伊賀者の避難所となっていた平楽寺に、日置大膳がやってくるシーンです。

そこでは槍を持ったお国と日置大膳が対峙しているなか、無門がかけつけます。

伊賀一の忍びだという無門の本当の姿を目にしたお国が、無門に惚れ直すというとても素敵なシーンなのですが。どうやら撮影はされていたそうなんですが、あえて監督はカットしたらしいです。

なんともったいない。

そこで、私は当初あまり期待していなかったコミカライズ版を手にしました。

漫画はもう2009年から出版されていて、計5巻。

映画の無門ではなく、下山平兵衛と同じくらいの体格でちょっとつり目な無門が描かれていて、またこれもとてつもなくかっこいい。

たまにデフォルメされて、かわいく描かれた無門(作画の坂ノ睦さん曰くスタッフからムーミンと呼ばれていた)も見られます。

そして時折、まるで映画がこうなるとわかって描いたんじゃないかというくらい、実写の映像と印象が重なる構図もあったりしてより楽しめました。

映画ではカットされていたシーンももちろん描かれていて、とても満足できた作品で、日本の漫画家はほんとうにすごいことをしているなと感じました。

とくに私が好きなひとコマは、大事なラストのシーンで、お国を抱きかかえた無門の表情(目元はあえて描かず頬をつたう涙と哀しみにゆがむ口元のみ)です。

なんとも色っぽく、感情をあらわにする無門の悲痛さが垣間見えて素敵です。

ほかにも語りたいことは山ほどありますが、語彙力のない駄文にこれ以上お付き合いいただくのは申し訳ないので、このあたりでお開きに。

余談としては、個人的に…。

ともすれば、伊賀、または忍びはすべて虎狼の輩。人でなしの集まりと捉えられてしまう内容を、最後には、この物語は現代の日本人すべてに問われている課題でもある、というふうにおさめてくれたことに、感謝したいです。