初富士
首がのびるほど見上げる
日が経つごとに明らかになる被害状況。
いったいどこまで肥大してゆくのだろう。
正月だから久しぶりの帰省というひとや、観光地だけに一期一会や訳ありの旅びとなどもいるだろう。
公にならない個人的事情に思いを馳せると、胸元にひときわ強く冷たい風が吹きつける心地がする。
急遽予定が繰り上がり、東京に向かうことになった。
往路の浜松あたりのPAでホットコーヒーを買うとき、レジ待ちの列に気づかず、横入りするようなかたちになって買い物を済ませると、並んでいた後方からそれを咎める声が聞こえてきた。
反省するけれど、もう遅い。
あなたの前に割り込んだわたしが、被災者に心を痛めているだなんて、想像もつかないでしょう。
祈ろう。
振りかざす正義とおなじつめたさに耳たぶの穴閉じてしまへり
漕戸 もり



