立派なタッセル。
墨汁に浸して書をしたためたい。
さてさて。
なんの脈絡もないけれど、
第六十七集中部日本歌集の中から今日も一首引いてみる。
身体が上下に裂かるる恐怖もてクリミア橋の爆破を見たり
栗木京子 第六十七集中部日本歌集より
裂くという行為を想像した時、左右より上下のほうが負荷が掛かるように感じる。
痛い。とてつもなく痛い。
あの争いからだ。地球のあちこちで紛争が起こり始めて、遠く日本でも光熱費やガソリンが値上がりし、生活に躊躇うような毎日が続いている。
夏。クリミア大橋の爆破後、こんなニュースが流れてきた。
クリミアとロシア結ぶ橋で爆発、2人死亡 プーチン大統領は「テロ」攻撃への報復を約束
大人の喧嘩は見苦しい。
橋というのは結んだり繋いだりする平和の象徴ではなかったか。
ふと東日本大震災を思う。
あの時も、身体が左右ではなく上下に裂ける心地がしたのだった。
言葉では言い表わせなかった感触が、栗木さんの歌を媒体にしてやっと腑に落ちた。
身体を何度裂ければわたしたちは平和に近づくのだろう。
身体から千切れるほどに手を振つて一本の木にもどる改札
漕戸 もり
森から林に林から木に。
最初からわたしたちは木だったのに。
寂しかったのに。


