この種類の手紙を1万通以上知っているけれど、同じ手紙は1通たりともない。
よく考えれば同じものがあるほうがおかしい。
定型文ではないのだ。
それぞれの感情、環境、関係性がそのひとの心を傾ける場所を決める。
感動させてやろう、上手いと思ってもらおうとして読む(又は書く)わけではない。
心を置いて綴る文章は、いかなる詩歌にも勝るということに気づいている。
ありがとう。
一万通以上のありがとうをありがとう。
どのありがとうにも前後のアナウンスのため全文に目を通す。
そのたびに、書いてくれてありがとうとおもうのだった。
山茶花のそとがはにゐて手紙書く 漕戸 もり
世界はすべて山茶花の外にある。
なまぬるい晩秋に、かの地の焦げた匂いを嗅ぐ。
